明日の君と会うために








G   M:ルコの口から告げられたのは、マリアの名前でした。
      もちろん、心当たりはありませんが。

フアナ  :……。

G   M:ルコは、レイディアに羊皮紙を丸めた束を投げてよこします。

レイディア:普通に開けるけど。

G   M:いつかの、チェスドッジボールの棋譜ですね。
      参加者の名前と割り振られた駒の種類から始まって、決着に至るまでの。
      マリアというのは、女性側の、最強の駒であるクイーンの役です。
      棋譜を見ても、物凄く強いようですね。

ルコ   :棋譜に名前が載ってるけど、誰も知らないって。

レイディア:どういうこと?

ルコ   :アリエルも記憶にないって言ってた。

レイディア:アリエルが一度会った女の子のことを忘れるとか、ありえないわね。

ディース :アリエルなのにあり得ねーってか。くししし。

ルコ   :そのマリアについてだけ、何もかも覚えてないって。

レイディア:何か思い出せない?

G   M:不可能です。ただ、当日の記憶はありますが、
      そのマリアとやらに関する部分だけ、ぽっかりと抜けていますね。
      寮生枠ではないので、誰かが外部からつれて来たのは確かなのですが……。

フアナ  :……そのマリアの部分だけ……記憶がない……。

レイディア:……私もよ……。

フィーエル:あ、あう……。

トゥエリ :確かに、妙デスね。

カトレア :どういうことでしょう?

ルコ   :アリエルは、記憶操作の魔法かなにかがからんでるんじゃないかって。

フアナ  :……そんな魔法……あったんだ……。

レイディア:古代魔法の実験か何か?

ルコ   :学院は関与してないみたい。トールフォードがセンス・ライで調べたって。

フアナ  :……最有力候補……消えた……。

レイディア:存在そのものがやばいんなら、ディスインテグレートでいいわよね。

フアナ  :……わたしたち……消されてないのにね……。

レイディア:私らの記憶に残ったら何かまずいことがある、と。

フアナ  :……それに、対象が……広範囲すぎる……。

G   M:記憶操作されてない部分だけは、通常の記憶術で思い出せるんですよね。
      その中で今役に立つ情報は1件だけなんですが。
      (ころころ)フアナは思い出します。
      ミゴリの使いの首の1つが、その名前を口走っていました。
      あと、ミゴリ自身も、記憶を消されたかとかどうとか。

フアナ  :……ミゴリの使いも……言ってたね……。

レイディア:ってことは、記憶操作はミゴリの仕業じゃないの?

フアナ  :……たぶん……。

カトレア :むしろ、我が神なら忘れさせずに煽るんじゃないですかねー。

レイディア:なら、ミゴリに聞いたらわかるってことよね。

ディース :つーか、ミゴリの使いに煽られてたってことじゃね?

カトレア :では、ディビネーションで。

G   M:ミゴリの反応はありません。

カトレア :ダメみたいですねー。参ったなー。

レイディア:何か他に手がかりはないの!?

G   M:コール・ゴッドを使ってくれたという見ず知らずのヴェーナー信者
      についても、もしかしたら記憶から消えたそのマリアではないのか、
      という疑念は生じます。そうだとすると、辻褄は合いますので。
      決して思い出すことはできませんが、もしかすると、
      マリアという女性と既知の間柄だったのではないだろうか、
      という推論は可能です。

フアナ  :……ヴェーナー信者……?

レイディア:……マリア、か……。

ルコ   :学院の名簿にも載ってないのよ。

トゥエリ :とすると、学院外で知り合ったということでしょうカ?

カトレア :んー、ヴェーナー信者と仲間になれるとは思えないんですけどねー。

レイディア:カトレアが隠し通してたとか、たまたま利害が一致したとか……。

トゥエリ :筋は通りますネ。

ルコ   :時間があったら、もっと調べられたかもしれないんだけど……。

フアナ  :……わたし……気がつかなかった……。

レイディア:助かったわ。ありがとね。

ルコ   :べ、別にあんたたちのためじゃないんだからねっ!

G   M:というわけで、世界の破滅を防ぐか、マリアについて調べるか、ですが。

レイディア:どっちも大切な気はするんだけど……。

ルコ   :私は、レイディアにどこまでもついてくわ。

レイディア:ありがと。

ルコ   :べ、別に、助けてもらった恩があるとか、そんなんじゃないんだからねっ!

フアナ  :……いじりがい、ありそう……。(にやり)

トゥエリ :私は、言わずもがなデス。

フィーエル:あうっ!

カトレア :んー、マリアという人のことは、あまりおすすめできませんねー。

ディース :何でだよ?

カトレア :コール・ゴッドを使ったとすると、もう破滅してますから。

フィーエル:あうー。生き返れない……。

フアナ  :……終了……。

カトレア :思い出すと、辛いだけかもしれませんよ?

トゥエリ :確かに、その通りデスね。

ディース :でもよ、助けてくれた奴の想いまで忘れるのって、もっと辛くね?

カトレア :…………そうですね。

ディース :じゃ、決まりな。

フアナ  :……リーダー……決断を……。

レイディア:そうね……近所迷惑だけど、崖の上から叫ぶわ。






レイディア:……絶対に思い出してやるわ!!! 何があっても!!!






レイディア:待ってなさい、マリア!!!






かくして、レイディアたちはマリアを探す旅に出たのでした。





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