僕に今夜☆会いに来て
テレポートでトールフォード家の領地に脱出したレイディアたちは、
城の庭で、星空の下、ささやかな祝勝会を開きます。
アリエル :今日は僕のおごりさ。好きなだけ飲んでくれ。
ディース :いや、お前金払ってないだろ。
リコリス :クーンさんが大変なのに、騒いでていいのかなー?
カトレア :1週間もすれば、元通り動けるようになりますよ。
リコリス :え〜、1週間も〜!?
ランラン :フィーナが一緒だから、嬉しいんじゃないか?
リコリス :……あ! そうだよね〜♪
ディース :だよなっ! つーかさ、やっぱ宿屋はキルシュが継ぐわけ?
レイディア:お前、年に一度くらいは空気読めよ。
ディース :え? 俺?
トゥエリ :まったくデス。
ミケー :あんたこそ、今頃寮で泣いてる子がいるんじゃない?
トゥエリ :えっ、私デスか!? そんなことないデスよ!
レイディア:ふーん……そうなんだー。
トゥエリ :ご、誤解デスってば!!
レミィ :どこに行っても、やることが変わってないです。
ローディス:いいことじゃないかい?
ディース :おーい、1人でそんなとこいないで、こっち来いよー!
エタニカ :ほっといて。エタニカ、お風呂、しばらく入ってないから。
レイディア:気にするんなら入れよ!
エタニカ :やだ。
アリエル :今日は僕が洗ってあげるよ。隅々までね。
エタニカ :げ……。
ローディス:……前言撤回。正すべきところは正さないとね……。
レミィ :それより、ディースはこの後予定あるですか?
ディース :あ? ねーけど。
レミィ :ちょっとだけ、後で私の部屋に来てほしいです。
ディース :いいぜ?
アリエル :ああ……先に謝っておくよ。悪いね。
レイディア:……あ、そうだったの?
レミィ :そうかもしれないだけです。
ディース :なに、なに? 何がそうなわけ?
リコリス :うわぁー! カップル誕生だー!
ディース :マジマジ!? どこ、どこ!? 誰と誰!?
レイディア:はぁ……。(嘆息)
ランラン :お前とレミィだ。
ディース :んなわけねぇって。
レミィ :そんなわけないですっ!! ←蹴り
ランラン :ぶぐぉっ!!
リコリス :ああっ!!
ストリィ :これは大変だ……どれどれ?
ランラン :こ、股間を……まさぐるな……。
レミィ :そっ、そんなとこ蹴ってないですっ!!
ディース :今日はシマパンか……なかなかマニアックな……。
レミィ :みっ、見たですねっ……。
レイディア:見られたくないんなら、スカートはくなよ!
レミィ :ズボンは足にまとわりついて不自由です。
レイディア:だったら、その技やめなさいよ……。
ディース : ←レイディアの肩に手を置きながら、左右に首を振る。
レイディア:気安く触ってんじゃねぇ、このど変態!!! ←蹴り
ディース :おっと。当たるわけねー!
レイディア:待ちなさいこの色情狂!!
フィーエル:あう、ディースさん、しきじょうきょう。
ディース :ちげーよ! 変な言葉教えてんじゃねぇ!
ウィット :本当によろしかったのですか?
アリエル :レイディアを助けるところまでは、お父様の意向だったんだけどね。
ウィット :しかし、この人数はあまりに……。
アリエル :ああ、たっぷり絞られたさ。……今度こそ、逃げられそうにない。
ウィット :……あ、相手は決まっているのですか!?
アリエル :そりゃ、許婚くらいはいるさ。
ウィット :そ、そんなこと一言も…………。
アリエル :君に話せば、さらってくれるのかい?
ウィット :……そ、それは……。
アリエル :ははっ。男にさらわれるほど怠けちゃいないさ。
ウィット :かっ、からかわないで下さい!
アリエル :悪かったね。……いつかはこうなる運命だったんだ。
ウィット :しかし、平民を見捨てなかったばかりに、このような……。
アリエル :仕方ないさ。貴族の娘こそ、政略の駒にすぎない。
ウィット :それはそうで…………いえ、すみません……。
アリエル :いいんだ。覚悟はしてたんだけど、踏ん切りがつかなくてね。
ウィット :よろしかったのですか?
アリエル :あーあ、逃げたいなぁ。
フアナ :……逃げれば?
アリエル :うわっ!? いたのかい!
ウィット :気付かなかった……。
アリエル :逃げるなんて、簡単に言ってくれるね。
フアナ :……簡単。レイディアみたいに……強くなればいい……。
アリエル :あの子は特別さ。
フアナ :……レミィだって……がんばってる。
アリエル :無茶を言わないでおくれよ。
フアナ :……それなら……受け入れて、一生ウジウジ嘆いてるといい……。
アリエル :仕方ないさ。せめて、女の子だけは好きに愛させてもらうよ。
ウィット :……女性にしか興味がないのでは……なかったのですか?
アリエル :男が嫌いなだけさ。女の子なら怒られないしね。
フアナ :……どうするの?
アリエル :君がキスしてくれたら、明日からがんばる。
フアナ :さよなら。
アリエル :待っておくれよ! 抱かせてくれる約束だったろう!?
フアナ :してないっ!!
アリエル :待っておくれー!
ウィット :行っちゃいましたね……いいかげんに、出てきたらどうですか?
ミケー :なんだ。いつからバレてたのかねぇ。
ウィット :誰が見てもわかりますよ。そのような偽装……。
ミケー :いやぁ、青春してるねぇ。
ウィット :身分の差というものは、良かったり悪かったり、悪かったりですよね。
ミケー :そんなん、たいしたことないって。レミィの親なんて、元狩人だよ?
ウィット :知っていますが、私はあんなに強くなれません。
ミケー :強くなりたかったら、鍛えてあげるけどぅ? ←胸元から酒瓶を取り出す
ウィット :ちょ……どこから出してるんですかっ!?
ミケー :えー、あたしの口から言わせる気かい?
ウィット :れ、れ、レイトン女史は、旦那さんいるでしょう!?
ミケー :いーの! あたしをほっといた罰だーっ!
アリエル :……はぁ、はぁ……楽しそうなこと……してるじゃないか?
ウィット :ち、ちが……!!
ミケー :はははは。からかって遊んでるだけだよ!
アリエル :僕とは遊んでくれないのかい?
ミケー :いいけど……フアナはどうしたんだい?
アリエル :逃げられた。あの耳をはむはむしたかったのにぃ……。
ミケー :うんうん。エルフ耳はむはむ、おいしそうだよねぇ。
ウィット :レイトン女史、相当酔ってますね。
ミケー :酔ってないって言ってるんだけど!
アリエル :これは、お酒を取り上げないとね。この辺りに隠してないかい?
ミケー :どこ触ってんだい、まったく。 ←でも、止めない
アリエル :……見つからないな……こっちかな?
ウィット :い、いい加減にしてくださいっ!!
G M:参加者たちは夜中まで騒いだ挙句、割り当てられた部屋に運ばれました。
アルコールは病気じゃなくて毒扱いなので、レイディアたちは……
(ころころ)誰も酔いつぶれてませんね。
レイディアたちは、割り当てられた部屋にいたところを、
アリエルの部屋に呼び集められます。
部屋には、アリエルだけでなく、ルコの姿もありますね。
レイディア:何よ、こんな時間に……。
フアナ :……逃げろ、って?
アリエル :話が早くて助かるよ。ここは僕に任せて、逃げてくれ。
ディース :なんでまた逃げなきゃいけねぇんだよ。
フィーエル:あ、あうー。
アリエル :時間をかけて国の上層部に手を回されると、ここではかくまいきれないのさ。
レイディア:ルコを連れて逃げろってわけね。……ルコのことは、知ってたの?
アリエル :最初は全く。 ←お手上げ、というポーズ
トゥエリ :しかし、今知った上で逃がすというのは、まずくないデスか?
レイディア:さっき、レミィがぶち切れてたわよ。
アリエル :知らなかったことにすればいいのさ。
レイディア:そんな、むちゃくちゃな……。
アリエル :非公式に捕まりでもしない限り、そうそう尋問されやしないさ。
トゥエリ :ここにいたら、非公式に捕まることなんて、そうそうないでしょうしネ。
レイディア:……大体わかるけどさ、何で突き出さなかったわけ?
アリエル :情けないことに、すっかり情が移っちゃってね。
レイディア:……な、情けなさすぎる……。
フアナ :…………。←脱力
レイディア:はぁ……。アリエルと離れちゃうけど、ルコはいいの?
ルコ :うん。
ディース :それ、アリエルからレイディアに乗り換えるってこと?
アリエル :あまりいじめないでやってくれ。彼女も大変だったのさ。
レイディア:で、ロマールまで送ればいいの?
アリエル :いや、彼女もちょっと深入りしすぎてしまってね。
ルコ :ばれたけど、アリエルのこと殺したくなくて、色々喋っちゃって……。
レイディア:……か、帰れないの!?
アリエル :彼女は、戦災孤児なんだ。戦場で拾われて、売られた。
カトレア :よし、復讐しましょう!
レイディア:よくないから! 復讐しないでいいから!
トゥエリ :失敗したから、帰る場所が無いんデスね。
ディース :くししししし。失敗してやんの。
アリエル :ああ。帰っても、どんな目に遭わされることか……。
フアナ :……スパイなんて……そんなもん……。
ルコ :最初は自分の命なんてどうでもよかった。でも、今は生きてたいの!
レイディア:なるほどね。
ルコ :私1人じゃ、逃げ切れないから。アリエルにこれ以上迷惑かけられないし。
レイディア:なるほど。貴族のアリエルは、1人で置いといても安全だしね。
トゥエリ :しかし、元とはいえ、ロマールのスパイの逃亡の手助けをするのは……。
フィーエル:あうー、難しい、問題。
レイディア:ていうか、私のこと、嫌いじゃなかったの?
ルコ :アリエルのこと、盗られると思ったから……。
レイディア:盗らないからっ!!! 盗ろうともしてないからっ!!!
アリエル :そこまで想われていたなんて、光栄だね。
ルコ :私と一緒のときにレイディアの話ばっかするからでしょ!
アリエル :おいしそうだったから、つい。
レイディア:つい、じゃねぇよこの色ボケ女!!
ルコ :アリエルのこと一番好きなのは、私だけどね。
アリエル :僕はいつでも、ルコが一番さ。
ディース :……で、俺らは、国境を越えたバカップルに巻き込まれたわけ?
フアナ :……そうみたい……。
アリエル :そういう事情があるから、彼女を連れて行ってやってくれないか?
ルコ :なんでもするから、一緒に連れてって!
フアナ :……センス・ライ……(ころころ)成功。
ルコ :今更、嘘なんかつくわけないでしょ。
G M:嘘はついていません。
ルコ :意図はわかった。いまあんたたちに話したことは、全部本当よ。
G M:今までの発言の内容も、本当です。
フアナ :……全部、本当……。
アリエル :お願いだ。しばらくの間でいい。ルコを、守ってやってくれ。
レイディア:……私はいいけど。
トゥエリ :なら、私も。
フィーエル:あう!
ディース :今スパイじゃねーなら、いいんじゃね? かわいいし。
カトレア :是非入信を!!!
フアナ :……嫌……。
ディース :なんだよ、空気読めよ……。
レイディア:お前が言うなよ。
トゥエリ :しかし、フアナの考え方の方がある意味まともデスよ。
レイディア:う、うーん……。
アリエル :お願いだ。……お願いです。お願いします!!!
G M:アリエルは、床に頭をつけます。
アリエルのこんな姿は、見たことないですね。
ルコ :私からもお願いっ!!!
フアナ :……で?
アリエル :何でも言うこと聞くから!
フアナ :ギアスかけていい?
アリエル :いい!!
レイディア:なんか、デジャヴが……。
フアナ :ギアス。(ころころ)6ゾロ! 『女性の肌に触れるな。』
アリエル :抵抗……しないよ……。
レイディア:………………そ、そっ、そこまで本気、だったの!!!?
アリエル :ルコとは、それだけじゃないから……。
フアナ :……あと、ルコには……あとで1つお願いを……。
ルコ :うん。
レイディア:これって、私がお酒禁止されるみたいなもんよね?
トゥエリ :禁止されなくても、ちょっとは控えましょうヨ。
フアナ :……1年で……フォルテスの魔力に、追いついて……。
追いついたら、解除する……。
アリエル :そんなのでいいのかい?
トゥエリ :そんなのっていうか、無理デスよ!!
レイディア:寮で1人だけ、私が冒険に出てから全く成長してないもんね。
フアナ :……婚約者の前で魔法ぶっ放したら……破談……。
ディース :怖ぇよ!
フィーエル:あ、あうー。
アリエル :それをすれば、家を出なければいけない。
フアナ :……出れば?
レイディア:フォルテス並みの魔力があったら、どこでも生きていけるでしょ。
アリエル :……そうだね。頑張るよ。
レイディア:お別れ、もう済ませてるの?
アリエル :ああ。それはもうたっぷりと。
レイディア:はいはい。聞いた私が馬鹿だったわ。
フィーエル:あう、馬鹿。
レイディア:……。
アリエル :次に会うときは、君を両腕で抱きしめるよ。
ルコ :次に会うときまで、何があっても生き残るから!
フアナ :……ちなみに……肌に触れなきゃ……大丈夫……。
アリエル :!!!
レイディア:待てや! 今一瞬、なんか凄くスケベな顔になったんだけど!!!
ディース :何をどうする気なのか、気になるぜ……。
フィーエル:あう!
アリエル :話は変わるけれど、もし洗っていない衣類があれば、こちらで預かるよ。
レイディア:絶対変わってないでしょ!!
フィーエル:あう!
アリエル :……男は遠慮させてもらうよ。
レイディア:あと、今脱がないでいいから!
アリエル :恥ずかしかったら、隣の部屋で脱いできていいよ。
レイディア:脱がないからっ!!
フィーエル:あ、あうー……。
レイディア:何期待してんだよ!!?
カトレア :ははは。愉快な人たちですねー。
レイディア:もういいわ。とっとと行くわよ。……よろしくね。
ルコ :ありがと!!!
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