スクールデイズ
アリエル :自分の前のスケルトン・ウォリアーを破壊するんだ。不意打ちに気をつけて。
グラース :悪あがきはせんよ。しかし、腕を上げたものだ……。
G M:抵抗しなくなった竜牙兵は、全て簡単に破壊されます。
ルコ :指輪も含めて、全部武装解除するわ。
G M:抵抗しません。指輪も全て外します。魔晶石が大量に入った袋もありますね。
フィーナ :クーンさんが……クーンさんが……。
ディース :……あー、これマジで死んでんな。
エタニカ :私には治せない。
リコリス :ふ、ふぇぇぇぇん!!
ディース :心配すんな。カトレアに頼んで生き返らせるから。
フィーナ :……慣れないものですよね、人が死ぬっていうのは……。
ルコ :終わったわよ。出てきなさい!
レイディア:出るわ。フィーエル、お願い。
フィーエル:あう!
G M:フィーエルに肩を抱かれて、レイディアが部屋から出てきます。
周囲のただならぬ様子を見るに、クーンは死んでるようですね。
フィーエル:嘘だ……。
レイディア:…………学生殺すとか、正気なの!!?
グラース :今更、言い訳はせんよ。
レイディア:フォルテスの命令ね!?
G M:戦闘も終わったので、フアナも登場していいでしょう。
解放されたフアナがテレポートで駆けつけたところ、
3階廊下には、竜牙兵の残骸と、魔法が乱れ飛んだ跡、そして、
数名の学生が倒れています。クーンは死んでいるようです。
フアナ :……やっぱり……。
アリエル :お帰り。
ミケー :テレポートかい……。
フアナ :……おじいちゃん、どうして……そんなことするの……?
アリエル :フアナは悪くないさ。中で戦ってたの、盗賊ギルドの暗殺者だろ?
レミィ :そう考えれば筋は通るですが、まさか……。
フアナ :そんなっ!!!?
ディース :逃がしちまった。あんな強い奴、学院にゃいねーよ。
レイディア:……盗賊ギルドにまで手を回してるの!?
グラース :命乞いではないが、全て話そう。
そこにおる、ルコにスパイ容疑がかかっておっての。
ルコ :…………。
レミィ :……スパイ……ルコがですか?
リコリス :……。
ディース :くししし。なんでスパイが学生なんかやってるんだよ。
グラース :スパイといわれて納得されるようなスパイが、果たして役に立つかな?
アリエル :……へぇ。で?
グラース :知ってか知らずか、貴族のご令嬢と懇意のよう。
問い詰めればうやむやのまま高飛びされるかもしれぬ。
嫌疑にすぎぬ段階で、貴族の令嬢を協力者呼ばわりすることもできぬ。
おいそれとは手出しできず、実害もなさそうで、放ったまま。
日が経つにつれ、嫌疑が濃くなってきておった。
ディース :で、結局、どこのスパイなわけ?
レイディア:馬鹿。黙って聞きなさい。
グラース :ロマールじゃ。
フィーエル:あ、あうあうあうー。
レイディア:…………。
レミィ :……それ……しゃれになってないです……。
アリエル :……ルコ……本当なのかい?
ルコ :………………。
フアナ :……リマンドで……トゥエリとカトレアを……(ころころ)成功。
G M:トゥエリとカトレアが呼び寄せられます。
トゥエリ :わっ!?
カトレア :んー。迷惑な魔法ですねー。
G M:光景を見て、状況は大体わかりますね。
トゥエリにとっては寝耳に水なんてもんじゃないですが。
トゥエリ :あわわ……。
レイディア:あんたらは、状況つかむまで黙ってなさいね。
グラース :直々に調べる必要があった。
ルコがスパイなのか、そうでないのか。
そうであったとして、アリエルが協力者なのか、被害者なのか。
思案していたところに、学生の噂を耳にした。
レイディア:で、変装して寮に出向いてきた、と。
レミィ :こういう競技は、相手の実力がわかるですから。
グラース :ちょうど、同じことを考える者がおった。
別の筋からルコに嫌疑を抱いた密偵じゃ。
リコリス :おとうさんだ!!!
ディース :俺、そんな凄いの拾っちゃってたわけ?
レイディア:馬鹿に見えるから拾わされたんじゃない?
ディース :うっせぇ! 馬鹿って言う奴が馬鹿なんだよ!
フィーエル:あ、あうー。
アリエル :なるほど。確かに筋は通っているね。
レミィ :父親参観を装えば、不審に思われないと思ったですか。
レイディア:いや、むしろ、娘にばれないと思ってたんじゃない?
グラース :あの競技で、ルコの実力はわかった。
間違いなく、猫を被ったスパイじゃろうと。
わしと密偵は、お互いの視線の先に気付いた。
向こうとしても、密偵の潜伏先の管理者に話を通したい。
こちらとしても、独力で凄腕の密偵を捕えられる自信はない。
レイディア:……それで筋が通るのは、犬?
フィーエル:あうー、犬?
レミィ :国に使える密偵のことです。
ウィット :ふむ。味方同士でないなら、話を通して相手の顔を立てる必要もないな。
グラース :さらに策を練っているところに、オランの邪神騒ぎじゃ。
密偵から、レイディアの仲間の邪神信仰の疑いに関する情報と、
レイディアたちの実力に関する情報がもたらされた。
その情報を得たフォルテス師は、
いかなる手段を使ってもレイディアを派閥に引き入れることとし、
この寮につながりの深い、自らの派閥の導師に一任した。
魔術の素晴らしさを解するレイディアであれば、
説得にも応じるであろうと自信を持っておられたが……。
レミィ :そんな大物とコネあったですか!?
レイディア:新歓のとき、一緒に飲んだ……。
ディース :呼ばれてもねーのに、導師の飲み会行ったんだな……。
グラース :魔術に対する心酔の言葉が滔々と流れ出す才女であったと。
ローディス:また酔っ払っておっさんの機嫌取ったのかい!?
レイディア:言ったような言ってないような……。
グラース :今回フォルテス師の命を受けたレンも、立場上強く否定できんかった。
レイディア:……あー……。
レミィ :普段ぷらぷらしてるのに導師やってられるのは、奴の派閥だからです。
グラース :わしは、交渉が決裂すれば、教え子たちと戦ってみたい気持ちもあった。
レイディア:あんた、頭おかしいんじゃない?
アリエル :導師ともなると、世間からズレているのが多いからね。
グラース :しかし、ロマールの密偵も同時に相手にするのは分が悪い。
何より、フアナのテレポートで逃げられては元も子もない。
そこに、例の密偵から助け舟が出された。
フアナ :………………。
レイディア:フアナを足止めするから、ルコを連れ去ることを黙認しろ、って?
アリエル :!!!
ルコ :……。
グラース :おぬしらが考えておるほど深刻な事態でもない。
たまたまフアナが聴取されることになり、盗賊ギルドの許可を得たうえで、
その時間を教えた、というだけの話じゃ。
ランラン :だからって、学生を売るのかよ!?
グラース :それは違うぞ、リクラン。スパイを取り締まるのは、犬の領分じゃて。
フアナ :……わたし、足止め……されてた?
G M:いえ、普通の聴取でしたね。引き伸ばしも全くありません。
フアナ :(だったら、こっちもカトレアのこと黙ってたし、おあいこかな?)
レイディア:盗賊ギルド丸ごと敵に回す、っていうのだけは避けられたのね。
グラース :わしがシースルーとブレード・ネットでレイディアの護衛を
足止めしたところで、暗闇に乗じてルコを拉致する手筈じゃった。
ブレード・ネットと不意打ちと暗闇を組み合わせれば、
倒せぬ相手ではなかろう。
ディース :そりゃ、部屋の外からそんなんされたらやばいって。
ローディス:あわてて部屋から出たら、レイディアが危ないしね。
レイディア:……足引っ張ってごめん。
フィーエル:あうー。気にしないで。
ディース :でも、あの野郎、完全に殺る気だったぞ?
リコリス :お父さんはそんなことしないもんっ!!!
グラース :リコリスよ。密偵というのは、綺麗な仕事ではないのだ。
リコリス :違うもん!! お父さんは違うもん!!!
アリエル :ああ、その人は別の誰かだったんだろうね。
リコリスのお父さんはそんなことしない。だろ?
リコリス :……うん。
レイディア:(あのときの台詞は、リコリスのこと心配して……。)
グラース :万一死者が出れば、こちらで復活させる約束じゃった。
フィーナ :そんな綺麗事を!!
ディース :いや。殺る気なら、遠くからシースルーとブリザードで廊下は全滅だったぜ。
グラース :手加減ではない。貴族の令嬢を殺すわけにはいかぬでな。
アリエル :前に出て、捕まるのは避けたかった。彼には済まないことをしたね。
レイディア:でも、ルコが部屋の中にいるのが前提なわけ?
グラース :フォルテス師の、遠見の水晶球じゃ。
ディース :今更かよ!
レイディア:いや、最初は、ギルティアを1人で差し向けるほど油断してたわ。
グラース :してやられたわ……フィーナ1人に。まさかこれほどとは!!
フィーナ :……ここで倒れている人や……みんなの力です!!
グラース :フィーナは利用されていただけじゃとワシが保証しよう。
フォルテス師に掛け合って、ぜひとも導師に……。
フィーナ :嫌です!!
グラース :もったいないのう……。…………これから、出国か?
レイディア:あんたらのせいで居場所なくなっちゃったんじゃないのよ!!
グラース :邪神の信者と関われば、いずれこうなっておったじゃろ?
カトレア :……。
レイディア:わかってた。わかってたわよ……そんなこと。
グラース :ルコはどうする?
レイディア:失脚の腹いせに、さらってくわ。
グラース :ロマールのスパイをかくまうとな?
レイディア:センス・ライでスパイかどうか調べるわ。
グラース :おぬしは、そうやって生きていくのじゃな。惜しいのう……。
レイディア:私は私の好きにやるわよ!!!
フアナ :……盗賊ギルドに……いづらくなったし……。
ディース :そっか。あの筋肉のおっさん、一応同僚だもんな。くししし。
トゥエリ :笑い事じゃないような気がするんデスが。
カトレア :ですねー。
フアナ :……ギルドには……後で話通すから……。
グラース :ルコとカトレアを差し出すだけで、将来は約束されるのじゃぞ?
レイディア:死んでも嫌。
グラース :よく言った。それでこそレイディアじゃ。
レイディア:綺麗にまとめてんじゃないわよ、この人殺し!!
ディース :まったくだぜ。
カトレア :あー、この人ですか? リザレクション(ころころ)20+6。
G M:クーンが蘇生し、鼓動が戻ってきますね。
彼の手首を握っていたフィーナが、びっくりして手を取り落としました。
フィーナ :い、生き返った!?
クーン :(?……フィーナ?……ここは、天国か?)
グラース :ありがとう、カトレア。
カトレア :どういたしまして。
エタニカ :(こいつが邪神信者……ほんとに?)
グラース :さて、ここまで大規模にやらかすと、フォルテス師は怒るぞ?
アリエル :恋人がスパイだのなんだのと因縁をつけられてると、出頭しづらいね。
グラース :……出頭? 残してきた連中の心配か?
安心せい。寮の存続はともかく、身の安全はワシが保証しよう。
故郷に引きこもりたくば、安心して引きこもっておれ。
スパイと邪神信仰だけは、ワシが揉み消すことはできぬが……。
アリエル :今までのことについては、感謝してるよ。
レミィ :そうやって、学生に肩入れしすぎるから出世できないのです。
フィーエル:あう。いい人?
グラース :シェルマよ。わが子の成長というのは、嬉しいものなのじゃ。
フィーエル:あうー。誰か、隠し子?
ミケー :たとえだよ。たとえ。
ディース :くししし。わが子殺した奴がなに言ってんだよ。
グラース :自己を正当化する気はないが、これも試練じゃて。
レイディア:ふん。あんたは失敗の責任取らされて、幽閉でもされてるといいわ。
グラース :安心せい。伊達にフォルテス師の右腕と言われておらんわ。
レミィ :誰がそんなこと言ったですか。
アリエル :ははは。聞いたことないね。
グラース :……さて、犬は群れで動くと聞くが。
レイディア:そうね。そろそろ行きましょうか。
グラース :……もう、わしらには止められん。おぬしらが望む道を行け!
レイディア:言われなくてもそうするわ……死なないでね。
グラース :かっかっかっ。ワシを誰だと思っておる。
レイディア:ほとぼりが冷めたら、また一緒に飲みましょ。
レンに色々謝っといて。あと、ありがとって。
グラース :うむ。
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