ああっ! お嬢様っ!?








G   M:さて、お見舞いと称して、何人も部屋を訪ねて来るわけですが。

レイディア:立つのしんどいけど、顔くらい見せないと悪いわね。

フアナ  :……そんなだから……コアなファンがつく……。

レイディア:でも、それって、最低限の礼儀だと思うし。

フアナ  :講義に出るのは……最低限の礼儀……じゃないの?

レイディア:うん。(きっぱり) 私に出てほしかったら、もっと面白いこと言わなきゃ。

フアナ  :……仕方ないから……治ってから……返せばいい……。

レイディア:一理あるわね。

フアナ  :……体で。

レイディア:それは絶対嫌。

フアナ  :……いいじゃん……減るもんじゃなし……。

レイディア:あんたって、おやじくさいよね。

フアナ  :……治ったら……窓際で裸踊り……。

レイディア:……ご主人様ぁ……どうか哀れな雌豚にお慈悲をぅ……。

G   M:お見舞いに来た人は、どうしますか?

フアナ  :……入り口で伝言だけ聞いて……やんわり追い返す……。

G   M:最初から気を遣うのもいて、4階はリコリスがメッセージを
      寄せ書き風にまとめて来てたりします。3階のローディスも
      同じことをやっていますが、いまひとつ統制が利きません。
      4階の寄せ書きは昼に、3階の寄せ書きは夜になってから届きます。
      ちなみに、3階の寄せ書き、かなりの割合で1階2階の男が
      混ざってるんですよね。数ヶ月前までは、絶対に考えられなかったことです。

フアナ  :(これが、わたしが憧れたレイディアの力……。)

レイディア:ありがたく読ませてもらうっす!

G   M:『早く元気になってね!』系統が大半。
      『できることがあったら言ってください』とか
      『言ってくれたらお料理作ります』とか
      『何かあったらすぐ行きます』系統も多数。
      他にも、心温まるメッセージが多数。
      匿名で『好きです』というのもあります。

レイディア:……あ、ありがたいっす……。

G   M:そして、ローディスが持ってきた羊皮紙の下に、もう1枚重なってますね。
      共通語のラブレターですが、誤字脱字が非常に多いです。

レイディア:当然、読ませてもらうわ。

フアナ  :……横から……読む……。

G   M:(ころころ)達成値19なので、楽勝ですね。フアナはわかります。
      基準がシーフ技能だったので、レイディアにはわかりませんが。
      どうやら、普通の文章に偽装した暗号のようです。
      解読を試みる場合は、シーフ技能+知力ボーナスで判定を。

フアナ  :……(ころころ)17……。

G   M:誤字を正しく置き換えたものを逆から並べるだけという、簡単な暗号です。
      『緊急、大切な話、平常を装って、5階空き部屋へ、アリエルより』
      だそうです。レイディアに言いますか?

フアナ  :……言わない……行く……。

レイディア:どうかしたの?

フアナ  :……別に……。






G   M:5階空き部屋というのは、誰かの私室→共同の物置の歴史を経て、
      現在はアリエルが私用に使っている部屋です。
      5階のアリエルの私室とはまた別に、
      女の子を連れ込むスペースと化しているという情報が、
      栄光の四人の情報網に載せられていました。
      一口に空き部屋といっても多数ありますが、
      アリエルの使う空き部屋の位置も記憶しています。

フアナ  :……意味も無く……こんなことするような奴、じゃないから……。

G   M:空き部屋の扉の前に着きました。

フアナ  :……入る。

G   M:魔法の鍵はかかっておらず、簡単に開きます。
      扉を開けた向こうにはアリエルがいます。

アリエル :いらっしゃい。さ、入って。

G   M:アリエルの発言は、どういうわけかエルフ語です。

フアナ  :……わたしも、エルフ語で……入る……。

G   M:以後、特に断りのない限り、2人の会話はエルフ語でなされます。

アリエル :続きは、ベッドの中で……いいだろう?

G   M:明らかに1人用でないサイズのベッドに誘われるわけですが。

フアナ  :……変なことしたら……両手、切り落とす……。

アリエル :それは怖いなあ。大丈夫、僕を信じて。

フアナ  :……お前ほど信じられない人間は、いない……。

アリエル :心外だなあ。いいよ、入って。

フアナ  :……一緒に入ったら……半殺し……。

アリエル :ベッドには入らず、キスをするように、顔だけ近付けるよ。

フアナ  :……唾液つけたら、唇そぎ落とす……。

アリエル :シーツをかぶって、外からはキスしてるようにみえるようにしようか。

フアナ  :……?

アリエル :そのまま聞いて。査察部が動いてる。

フアナ  :!!!?

アリエル :続き、聞きたくなったかい?

フアナ  :……警戒しすぎ……カウンター・センスは、常にかけてる……。

アリエル :遠見の水晶球を使わないで、同じ効果を出す方法だってあるのさ。

フアナ  :……どうやるの……?

アリエル :ナイショ。

フアナ  :……けち……。

アリエル :続き、聞きたくなったかい?

フアナ  :……入っていい……変なことは、しないで……。

アリエル :入るよ。

G   M:アリエルもベッドに入り、顔をそむけたフアナの後ろに位置します。
      シーツで顔を隠しているため、口の動きは見えません。

アリエル :……自然の営みなら、していいかい?

フアナ  :……全身……切り刻まれたいなら……。

アリエル :覚悟を見せろってことかい?

フアナ  :……したら……マジで首ちょんぱ……ってこと……。

アリエル :ははっ。君は攻略不能キャラかい?

フアナ  :……攻略しようとしたら……殺されるキャラ……。

アリエル :ははは。情報に対価って必要だよね。

フアナ  :……体は、売らない……。

アリエル :僕の仲間が命懸けで手に入れた情報なんだけどな。

フアナ  :…………。

アリエル :寮に入った頃は、一緒にお風呂入った仲じゃないか。

フアナ  :……お前が……勝手に入ってきた……。

アリエル :君のこと、助けたいんだけどな。

フアナ  :……なら、ロハで教えて……。

アリエル :1回だけだからさ。減るもんじゃなし。

フアナ  :……絶対、嫌……。

アリエル :どこまでならいい?

フアナ  :……意外と……交渉、下手だね……。

アリエル :ははっ。僕の誘惑が効かないのって、何人かしかいないからね。

フアナ  :……なるほど……最悪……。

アリエル :無防備なレイディアを狙わない僕をほめておくれよ。

フアナ  :……それが普通……一晩、この体勢のままで、話聞く……。

アリエル :生殺しは勘弁してくれないかな?

フアナ  :……抱いて密着して……体、動かさない……。

アリエル :それでいいよ。まず、『抱いて』って言ってみて。

フアナ  :……体温無くしたら……抱いてあげる……。

アリエル :おっと、そうきたか。……脱がないと暑くなるよ?

フアナ  :……絶対脱がない……。

アリエル :残念だなあ。

フアナ  :……変なとこ触ったり、唾液つけたら殺す……。

アリエル :つれないなぁ。……いいよ、恋人同士を装いながら聞いて。

フアナ  :……不本意だけど……演技なら……。

アリエル :ああ……甘美な誘惑に、舌が痺れてとろけそうだよ。

フアナ  :……ちょん切られたかったら……召し上がれ……。

アリエル :ははは。怖いなぁ。……だめ?

フアナ  :だめ。

アリエル :残念だなぁ。

フアナ  :……有用な情報だったら……ボーナスも考える……。

アリエル :それは楽しみだね……さて、情報源は秘密。確かな筋の情報だ。

フアナ  :……導師の、コーウェル?

アリエル :秘密さ。査察部の目的は2つ。1つは、カトレアとかいう神官の素性調査。
      もう1つは、オランの邪神騒ぎとの関わりの調査。

フアナ  :……命じたの……誰……?

アリエル :情報提供者より上なのは確かだね。カーウェス最高導師か、
      フォルテス次席導師。大穴で、ラヴェルナという可能性もある。

フアナ  :……そんな、大物が……なんで、そんな話に……。

アリエル :レイディアたちの魔法の腕が、露見したみたいなんだよ。

フアナ  :……いまさら?

アリエル :アニスから報告が上がったらしい。

フアナ  :……アニスが!? ……マイリー神官なのに……?

アリエル :アニスは、元は流れのシーフで、今は学院の監視員さ。

フアナ  :……そんな、馬鹿な……。

アリエル :これは貴族組しか知らないことさ。栄光の四人だって例外じゃない。
      秘中の秘だから、自力で気付くのは不可能さ。
      そもそも、いくら見習いとはいえ、飛び地を放任するのはまずくないかい?

フアナ  :……その割には、この寮……無法地帯……。

アリエル :よほど上席の導師じゃないと、うちの家の圧力は怖いと思うよ。

フアナ  :……導師のトールフォードの……力?

アリエル :違うよ。うちはちょっと特殊な貴族だからね。

フアナ  :……領地は……豊かじゃないけど……。

アリエル :ははは。よく知ってるね。さすがは盗賊ギルド。

フアナ  :……アニスの報告先は……不明?

アリエル :そうなんだよ。大物すぎて手が回らない。

フアナ  :……こっちからかぎまわっただけで……まずい相手……。

アリエル :そういうこと。

フアナ  :……話を戻す……魔法の腕が、オランの邪神と、どうつながるの?

アリエル :レイディアたちと人数構成が似てる連中が。ロックやドラゴンを倒した件は、
      うちにも伝わってた。そこに、今日のライトニング・バインドだっけ?
      電撃の網の。それで竜殺しとイコールだって確定したわけさ。
      そこまで可能なら、邪神を倒せたとしても、不思議じゃないだろう?

フアナ  :……。

アリエル :返事はいいよ。センス・ライを使ってる疑いはあるだろうし。
      邪神騒ぎを聞きつけたオランの学院は、原因を調査した。
      そして、それに深く関わっているとみられる人物リストの中に、
      東方の大商人の面影があるのがいるわけさ。
      もちろん、あれがこちらの学院に行ったという宣伝はしてないだろうけど、
      盗賊ギルドにかかればすぐ調べられる。

フアナ  :……カウンター・センスは……魔法以外には効かない……。

アリエル :そういうことさ。

フアナ  :……なるほど……。

アリエル :そこで、オランの学院からファンの学院に照会が入るわけさ。

フアナ  :……邪神騒ぎの原因を……究明しろって?

アリエル :照会内容はわからない。向こうの高導師だかなんだかが、
      カーウェスに宛てて、マナ・ライ最高導師の親書を持ってきたことまでしか……。

フアナ  :…………と、とんでもないことに……。

アリエル :さあ、最高導師の親書には、何が書いてるんだろうね?

フアナ  :……で、でも、査察部の機密保持力は……そこよりは緩い、と。

アリエル :査察部を甘く見ない方がいい。センス・ライは防ぎようがないからね。

フアナ  :……黙秘も、ギアスで封じられる……。

アリエル :6レベル以上の導師が査察部に絡めば、そういうことになるね。

フアナ  :……カトレアは……何の関係が……?

アリエル :立ち寄った先で、センス・イービルに引っかかったのが目撃されてる。

フアナ  :……そのくらいなら、誰でも……。

アリエル :そうでもないんだ。オーファンは、君たちを召し抱えるつもりかもしれない。

フアナ  :……?

アリエル :世界を滅ぼしかねない邪神騒ぎを生き抜いたのは確かだからね。
      下手をすれば、一国潰す力くらいあるかもしれないだろう?
      少なくとも、手元にあるうちに思想や実力を調べない手はないさ。もちろん、宗派もね。

フアナ  :……じゃあ……査察部は今……。

アリエル :今? 必死で君らの過去を洗いなおしているんじゃないかな?

フアナ  :……なんで、すぐ連行されないの?

アリエル :潔白だったらこれから中枢に居座りかねない人間を、強制連行するかい?

フアナ  :……納得……。

アリエル :レイディアが快復次第、平和裏に、調査のお願いをされるんじゃないかな?

フアナ  :……。

アリエル :例のカトレアが潔白なら問題ないだろう。
      君らが邪神を復活させるメリットは皆無だからね。

フアナ  :……。

アリエル :もしそうでないなら……レイディアが動けるようになる前に街を出るといい。
      『君たちは査察が入る予定を知らない』からね。

フアナ  :……忠告……ありがとう……。

アリエル :僕の凄さに惚れ直したかい?

フアナ  :……今度、キスしてあげる……ルコの目の前で……。

アリエル :うっ! ……今がいいんだけどなぁ。お願い、聞いてもらえるかな?

フアナ  :(脱出前に、便宜を図ってもらう必要はあるかもね。けど……。)

G   M:(ここで邪魔が入らないと本気でまずいので……。)
      そのとき、部屋を力強く何度もノックする音が聞こえます。

ルコ   :アリエル!! 誰連れ込んでるのよ!!? もう夜でしょう!!

アリエル :げっ!!

フアナ  :……助かった……。

アリエル :今開けるから。さあ、今のうちに服着て。

フアナ  :……最初から……脱いでないし……。

アリエル :しまった。つい癖で……。

フアナ  :(だめだこいつ。)

G   M:部屋に入って来たルコは、アリエルと一緒にいるフアナの姿を認めます。
      が、見られてとてもまずいことをしていた痕跡がないからか、
      フアナの方はルコにそこまで追求されることもありません。
      ルコは無言でアリエルを抱きしめるだけ。
      2人を残し、フアナは部屋を出ることができます。

フアナ  :……エス……。

G   M:さて、もう夜ですが、どこに向かいますか?

フアナ  :……レイディアの、部屋……。






G   M:さて、フアナは部屋に戻りました。今の情報を、レイディアに伝えますか?

フアナ  :……とりあえず……普通に帰る……。

G   M:では、レイディアの部屋に帰ります。

レイディア:おかえり。

フアナ  :……2人で……ゲームしよ……。

レイディア:……それって、拒否権ないのよね。どんなゲーム?

フアナ  :……人に知られたくない告白を……羊皮紙に書いて相手に渡すゲーム……。

レイディア:……証拠を残す気ね。まあいいわ。微妙に筆跡変えて書いてやるんだから。

フアナ  :……わたしも……教えるから……。

レイディア:? まあいいわ。損しないし。

G   M:そこで書くわけですね。

フアナ  :……うん。

G   M:1行で収まる範囲で、書く情報を伝えてください。

フアナ  :『レイディアの快復を待って、査察部が動く。カトレアの素性と邪神の件で。』

レイディア:………………あははははははは!!!

フアナ  :……そんなに……笑わないで……。

レイディア:他の誰かにもう知られてて、私に教えたのは口止めってわけね。

フアナ  :……アリエルに……抱かれそうになった……。

レイディア:ふん。いい気味ね。

フアナ  :……身の振り方……考えとかないと……。

レイディア:次は私の番ね。正直に書くわ。筆跡は変えるけど。

フアナ  :……笑われたら……笑い返す……。






G   M:怪しまれないようにそういうやり取りを繰り返すうちに、
      他の学生たちが寝る時間になります。

フアナ  :……これ以上仲間に接触したら……不自然かも。自分の部屋で寝る。






G   M:一方その頃。トゥエリの部屋の前。

リリー  :トゥエリさん、大丈夫かな?

リリー  :でもお見舞い行くような仲じゃないよね。急に行ったら迷惑だよね。

リリー  :でも、部屋の外に立ってて、出てきたら偶然会ったりとかは、いいよね。

リリー  :お手洗い行くときとか、出てくるよね。

リリー  :なかなか出てこないな……。

G   M:リリーは、トゥエリが部屋にいると勘違いしていました。





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