終末のやり過ごし方








G   M:リザレクションは(ころころ)5ゾロ、と。
      ベスは、固いベッドの上で目を覚まします。
      目に入るのは、白く高い天井。どういうわけか、体は動かせません。

ベス   :……ここは?

G   M:やがて、かつて自らがこの建物で過ごしていたことを思い出します。
      ここは、アノス王都ファーズにある、ファリス大神殿の診療所のようです。
      同時に、邪神が降臨したことや、
      自分が魔神の剣に貫かれて死んだことも思い出します。

ベス   :……。

???  :テイラー司祭、お加減はいかがでしょうか?

G   M:目が覚めた直後、ベスは、部屋の入り口付近で何者かの声を聞きます。
      復活直後で首が動かせないので顔は見られません。

ベス   :……あれから、何日経ちました?

???  :テイラー司祭がお亡くなりになった日でございます。

ベス   :……やはり、私は一度死んだのですね。

???  :法王にご神託が下されたそうです。テイラー司祭を復活させよと。

ベス   :……法王が……おお……ファリスよ…………。

???  :……これは個人としてお尋ねしたいのですが、何があったのです?

ベス   :法王に直接お伝えします。王城に伝えなさい。

???  :それには及びません。

ベス   :なぜですか!?

???  :法王は既にこちらに向かっておいでです。この部屋に。

ベス   :なりません!!! 法王ともあろうお方がそのようなこと!!

???  :前例がないだけで、法には反しません。司教も全員ご同席なさいます。

ベス   :…………なんという……こと、でしょう……。

G   M:ベスはベッドから起き上がろうとしますが、動けません。
      これから、法王と司教たちの訪問を受け、
      ミゴリとイブリバウゼンのことを報告することになるのでしょう。






G   M:一方、戦場から1匹で逃げ出したエート。
      世界の危機を伝えるべく、王都オランに向けてひたすら走ります。






実は、レイディアたちが全滅した場合、世界にとって重要な役割を果たすのが
このエートである予定でした。レイディアたちが時間を稼げずに全滅していれば、
車輪騎士団はミゴリのメテオ・ストライクで全滅するでしょう。
レベルの高いロベール奇跡的に生き延びたとしても、馬を失えばまともに逃げられません。
そして、レイディアたちがベスと共闘すれば、かなりの確率で彼女が後衛に回ります。
となると、接敵したイブリバウゼンに後衛からバニッシュを唱えて
(実際唱えようとしていました)、逆上したイブリバウゼンに
ディスインテグレートを唱えられれば、もう復活できません。
また、ゴースト化してもミゴリの弱点であるディスペルが使えないベスは、
普通に死んだだけでも、ミゴリのゴースト化の恰好の的です。
セーブ・ソウルは接触魔法ですので、こうなっても復活できません。
(アノス法王のレファルドが啓示を受けてからベスを復活させて事態の詳細を
把握するまで、かなりのタイムラグは避けられません。)

そして、もし仮に連絡役が全滅してしまうと、ミゴリがゴーストの大群を
引き連れて進軍を始めるまで、誰も気付きません。
賢者の学院がすんでのところでマジックアイテムで察知して王城に伝え、
オラン国王カイアルタードが全土から車輪騎士団を招集しても、
遠方の騎士が間に合わず、ゴーストの大群に押されて
防衛線を次々に突破されるという事態に陥ります。
普通の敵なら王都近辺の騎士だけで充分殲滅できるのですが、
ゴーストには憑依の能力があるため、簡単には倒せません。
(そして、ミゴリが肉体的に消耗していなければ、
無限に飛んでくるメテオ・ストライクまで加わります。)

そうなってしまうと、ミゴリとゴーストは比較的容易にオラン郊外まで進軍。
バレンやマナ・ライのメテオ・ストライクを嫌ったミゴリは進軍を停止
(神は世界の全てを把握できるため、ディスペル・マジックによる不意打ちは
まず不可能です。)。そして、ミゴリは使い捨てのゴーストだけをそのまま進軍させて、
オラン市街が戦場に。戒厳令が敷かれる中、
学院からマジックアイテムの貸与を受けたオランの冒険者たちがゴーストを退治するも、
次から次に現れるゴーストにやがては憑依され、押されてゆきます。
そのようにして王都が陥落寸前となれば、
法王がファリスの啓示を受ける可能性は充分にあります。
(法王に報告可能な者がいれば、その報告前にファリスの啓示が下される、
という舞台裏です。そして、聖王国アノスにも情報収集能力はありますから……。)

そして、ジハドを発動したファリス法王に率いられ、
神の声と領内のファリス信者の救済と隣国オランの援助という大義名分を持った
アノス軍が越境して……ということも起こりえます。
オランの有力諸侯からみれば、領土的野心があるとしか思われないでしょうが……。



実際には、ベスはイブリバウゼンの攻撃で死んだものの、アンデッド化せず。
ロベールも幸運にもミゴリから早馬付きで逃げおおせ、
比較的早めにオラン・アノス両首脳に事態が伝わりました
(ちなみに、オラン国王の事態把握が一番早いケースは、
決戦前にカトレアがベスのフォース・イクスプロージョン等で早期に捕縛され、
レイディアたちがオランの牢破りを余儀なくされるケースです。
そうなると、王城から連絡を受けた魔術師ギルドにより、
カウンター・センスすら意味を持たないほどの、
異常にしつこい監視を受けることになります)。



さて、話を戻しましょう。
連絡役のベスとロベールが無事に役目を果たせた
(しかも、ロベールの馬が奇跡的に石化しなかった)となると、
エートが道中で無駄に死ぬリスクだけが残ります。






G   M:本来であれば、足しになる人物に出会える確率は6分の2だったのですが、
      ロベールが高速で逃走したので、足しになる人物に出会える
      確率は6分の1です。(ころころ)6分の1の確率を引き当てました。
      オランに向けて茂みを失踪していたエートは、茂みから飛び出したところで、
      道を歩いていた人間にぶつかってしまいます。

オドソフ :おや……この猫は……。

エート  :にゃー!

G   M:魔術師崩れのオドソフは、エートがフィーエルの使い魔であることを
      知っています。そして、十キロ以上の距離を疾走してきたエートの足は、
      既にボロボロです。

オドソフ :これは酷い。手当てをしなければ。

エート  :にゃー! にゃー!

オドソフ :今、どこにいる? 助けが必要か?

G   M:使い魔と主人は精神が繋がっている筈ですが、エートは騒ぐだけです。

オドソフ :使い魔が制御できないのか。意識不明……まずいな。

エート  :にゃー!

オドソフ :この足は……かなり遠くだな。今から助けに行って間に合うだろうか。

エート  :にゃー! にゃー!

G   M:エートは、オドソフのズボンの裾をくわえて、引っ張ります。

オドソフ :そっちに行くなということか?

エート  :にゃー!

オドソフ :だが、そういうわけにもいくまい。

エート  :にゃー! にゃー! にゃー!

オドソフ :自分には助けられないのか?

エート  :にゃー。

G   M:エートの泣き声は、今までと違って肯定の響きを持っています。

オドソフ :言葉がわかるのか!?

エート  :にゃー。

オドソフ :ということは、わざと逃がしたのか。

エート  :にゃー。

オドソフ :助けは必要か?

エート  :……。

オドソフ :では、何をすればいい?

G   M:エートは、抱かれていたオドソフの腕から飛び出し、
      オランへと向かう道を走り出します。
      そして、すぐに止まって後ろを見ました。

オドソフ :……そっちに行けということか?

エート  :にゃー。にゃー。

オドソフ :よし。お前も連れて行ってやるぞ。

G   M:エートを抱いて、オドソフはオランへと走り出します。






G   M:レミィによってイェーガーの別荘へと案内されたジャクロスは、
      メイドの持っていた通話の護符により、
      レミィの父であるイェーガー家の当主と連絡を取ります。
      そして、そこそこの有力貴族であるイェーガー家のコネで、
      マイリー神殿のジェニ最高司祭に復活の奇跡を頼めることになりました。
      実は、ジェニを含めマイリー神殿の数名にも漠然とした啓示が下されており、
      マイリー神殿の上層部は騒然としていました。
      然るべき筋からの蘇生依頼でなければ、大金を積もうとも、
      多忙を理由に突っぱねられていたところです。
      そして、儀式を行う暇がないので、
      ジェニは儀式無しでリザレクションを唱えます。
      拡大して達成値を上昇させ、基準値は15。出目5以上で成功です。
      (ころころ)出目8。
      通常ならば生き返る筈ですが、フィーエルはなぜか生き返りませんでした。
      通例、蘇生の失敗は、それだけ神に気に入られているという捉え方も
      できるので、それも仕方なしとして処理されます。
      別に復活の奇跡が行える司祭がいれば寄進を積んで再挑戦もできますが、
      もちろん、そんな高レベルの司祭はそうそういるものではありませんし。

ジェニ  :……これは…………?

ジャクロス:そ、そんな……。





第20話前編・第2節 へ
第20話コーヒーブレイク へ

トップページへ