FORTUNE MARTERIAL








G   M:時間はさかのぼり、ミゴリ降臨直後。
      オーファン王都ファンの学院寮の一室で、
      エタニカはマーファの声を聞きます。
      「オランに、極めて強大な、自然ならざる存在あり」とのことです。

エタニカ :無理にエタニカがいかないでもいいよね?

G   M:低位のプリーストにここまで具体的な啓示がなされるのは、珍しいことです。

エタニカ :何があったんだろ。占いでもしてみよ。

G   M:20分後、導師のブリュワーが、1人の男を伴って寮を訪れます。
      男は商人風で、うさんくさい雰囲気をまとっています。
      もちろん、導師同伴なので寮へはフリーパスです。
      ブリュワーはフィーエルの部屋を家捜しし、
      服などの私物をごっそりと持ち出します。
      突然の導師の来訪と理由も告げられない家捜しで、寮は騒然となりますが、
      学生たちはとりあえず遠巻きに眺めるしかできません。
      そして、ブリュワーが服を持って部屋から出たところで、
      学院で伝言を聞いたコーウェルが慌てて駆けつけます。

コーウェル:ステュワード師、これは一体!?

ブリュワー:それが、あのフィーエル氏のご子息が、異国でお亡くなりになったようで。

G   M:それを聞いて、物影から盗み聞きしていた学生たちが騒然となります。

ストリィ :それは聞き捨てならないねぇ。

ルコ   :アリエルに知らせなきゃ!

リコリス :リリー、集合かけて! みんなは耳ふさいで!!

リリー  :叫ぶ。(ころころ)11。全員、1階に集合!!!!!!!!!!!

G   M:11人分の大声で、寮にいた全員に集合がかけられました。

ジャクロス:な、なんですかこれは……。

コーウェル:す、凄い声だ……。

ブリュワー:耳を塞いでもなお、耳が痛いですな。

コーウェル:一大事、というわけですか……。

ブリュワー:ジャクロスさん、こちらがトールフォード師です。

ジャクロス:お初にお目にかかります。フィーエルの使いのジャクロスと申します。

コーウェル:!! 私がコーウェル・トールフォードです。どのようなご用件でしょう?

ジャクロス:その節はお世話になりましたと、主から言付かっております。

コーウェル:いえ、こちらがお世話になってばかりで申し訳ない。

ランラン :……トールフォードって、あれと同じ名前じゃないか!?

ストリィ :あららら。知らなかったのかい? 親戚らしいよ。

G   M:そして、無差別に招集をかけられた学生たちが、次々に集まってきます。

アリエル :…………なぜ導師が2人もいるんだい?(しかも、アレまでいるじゃないか。)

ウィット :お、落ち着いてください。

アリエル :失礼だなあ。僕はいつも通りだよ。

ルコ   :だから、フィーエルが死んだみたいなんだってば!

アリエル :ははははは。悪い冗談だ。

キルシュ :仕事サボって来たら、えらいことになってるかしら。

ジャクロス:実は、イェーガー様にお願い致したいことがございまして。

レミィ  :っ!!!?

アリエル :蘇生のコネくらい、トールフォードで充分じゃないかい?

ジャクロス:申し訳ございません。色々と事情がございまして……。

コーウェル:本家とこちらでは色々と違うのだ。確かに、繋ぎくらいは私でも何とか。

ジャクロス:いえ、こちらに別荘があるらしいのですが、位置だけ教えていただきたく。

コーウェル:それでよろしいのですか?

ジャクロス:はい。ファンでお目にかかったことがなく、位置がわからないだけですので。

アリエル :領地が遠いからねぇ。どういう繋がりかは知らないけど。

コーウェル:魔術師見習いのアリエル、案内して差し上げなさい。

アリエル :いいけど、別荘とはいえ、僕が軽装で行ったらカドとか立たない?

コーウェル:これは導師としての命令で……ん? ……いや、それもそうか……。

レミィ  :私が案内するです。

アリエル :(計算通りだ。)助かるよ。それが一番いいだろうね。

コーウェル:おお、いたのか。頼むよ。

ジャクロス:お願いします。

レミィ  :任せろです。

コーウェル:では、私はこれで。学院にいますので、必要ができたら呼んでください。

ジャクロス:ありがとうございます。お忙しいところ申し訳ありませんでした。

G   M:コーウェルが寮を出た、少し後。
      多くの学生に後れて、手にカードを持ったエタニカが降りてきます。

エタニカ :もう。占いくらい静かにさせて。……何かあったの?

シエナ  :それがさ、あのフィーエルが死んだって……。

ローディス:蘇生の手配も、もうやってるみたいだ。

アリエル :でも、無駄足だろ。レイディアがついてりゃ、蘇生くらいはわけないさ。

ジャクロス:レイディアさん、というのは?

ミケー  :フィーエルの保護者だよ、保護者。

ジャクロス:ほ、保護者、ですか?

レミィ  :交換条件ということで、レイディアについて知ってることは全て話すです。

ジャクロス:いやはや、参りましたね。

アリエル :この前、ロマールでドラゴンより大きい鳥を倒したらしいよ。

G   M:ジャクロスは、セージ技能で判定を。

ジャクロス:(ころころ)14。

G   M:ドラゴンより大きい鳥といえば、モンスターレベル12の
      ロックのことでしょう。もっとも、噂の真偽についてはわかりませんが。

ジャクロス:それを、シェルマ様……いえ、フィーエル様が倒したと?

クァルミル:様だってよ。(笑)

アリエル :信頼できる筋の情報だ。それも、無傷で倒したらしいね。

ジャクロス:……ロックを……無傷で……?

G   M:クリップルの存在を知らない人間には、
      魔法使いが10メートルの距離まで接近しての
      パラライズしか手段が思い浮かびません。
      スリープ・クラウドで眠らせたところで、すぐに起きてきますし。
      あるいは、戦士が肉弾戦で倒してしまって、
      後から回復したため噂に尾ひれがついたか。
      もっとも、死人を出さずに勝てるだけでも相当な腕なんですが。

ジャクロス:……。

ミケー  :(感慨深げに)私のおっぱいばっか見てた子供が、大きくなったねぇ。

マッコイ :あいつ、そんなことしてたんすか……。

アリエル :ロックを無傷で倒してしまうような勇者様がいたとして、
      それを殺すとしたら、伝説のエルダードラゴンでもなきゃ無理だろう?

レミィ  :……そもそも、どこで死んだですか?

ジャクロス:……先ほど来たオランからの連絡によると、
      隊商の護衛でオランに着いた日にチャ・ザ神殿で精神力を補充したのを
      最後に足取りが途絶え、どこの宿にも泊まってないようなんです。
      夕方に着いたのに。そして、その翌日、今日のことなんですが、
      死亡したら即座にわかるマジックアイテムで死亡が確認されたわけです。

ブリュワー:さっきロケーションで彼の装身具を探知したら、
      ここから東南東だった。間違いない。

クロウ  :彼に指輪とかあげちゃったりしたの? うわー。

ジャクロス:ちょうど堕ちた都市の方向ではあるんですが、
      パダの宿屋に泊まった形跡もないそうです。
      学院でテレポートを受けた形跡も無いですし。

レミィ  :パダの宿帳まで……情報早すぎです。

ローディス:急ぎの用で、宿に泊まらずに街を出たのかも。

レミィ  :オランから1日圏内に、エルダードラゴン級の危険があるですか?

キルシュ :せいぜい、野外ならどこにでも出るワイバーンがいいとこかしら。

レミィ  :ワイバーンなんか、ロックより全然弱いです。

アリエル :レイディアあたりがテレポートを使えるのなら、一本につながるよね。

レミィ  :あの7人が、堕ちた都市に行ったことがあるとも思えないですが。

エタニカ :フィーエルが死んだのって、30分ちょっと前?

ジャクロス:……そうですが……そこまで詳しく言いましたっけ?

エタニカ :その時間、マーファの声が聞こえた。
      「オランに、極めて強大な、自然ならざる存在あり」って。

ローディス:ばらしちゃうのかい……。

エタニカ :仕方ない。エタニカ、面倒なのは嫌いだけど。

アリエル :……それを急いで退治しに行ってやられたのなら、筋は通るね。

レミィ  :うさんくさい話ですが。

ジャクロス:……それ、オランのどの辺りかはわかりますか?

チェーザ :エッタ、そのカードで占ってみて。お母さんがあの人なんでしょ!?

エタニカ :エタニカ、面倒なのは嫌い。

ジャクロス:すみません。占いをしている時間はちょっと……。

アリエル :リコリス、あれできる?

リコリス :うんっ!

アリエル :仕方ないなあ。今日だけ解禁ということで。

ローディス:それ、怖いから、できたらやめてもらいたいんだけど……。

チェーザ :うっわあーっ!! 学院最強の魔術がここに……!

ブリュワー:魔術ではないが、試す価値はあるかもしれません。

ジャクロス:……そ、そんなに当たるんですか?

チェーザ :当たりますよ! 貴族お抱えの占い師の一人娘なんですから!

アリエル :別に、抱えちゃいないと思うけどさ。

エタニカ :エタニカは、やるって言ってない。

アリエル :暇そうだから、今から一緒にお風呂入るかい?

G   M:アリエルは、エタニカの腰に手を回します。

ルコ   :ちょっと、アリエル!!

エタニカ :(お風呂、大嫌い。)……やる! でも、お代は1万。

ジャクロス:高いっ!!!

ブリュワー:それが、高いほうがよく当たるともっぱらの評判でして。

ジャクロス:払いますよ。この宝石で1万にはなるはずです。

エタニカ :……まあ、いいかな。

G   M:シエナが持ってきたハンマーと台を使い、
      エタニカが受け取ったばかりの宝石を粉々に砕きます。

ジャクロス:な、な、な、何をっ!?

アリエル :いいから見てなよ。

エタニカ :……占いたいことを、簡潔に。

ジャクロス:は、はい。フィーエル様がお亡くなりになった場所と、原因を。

エタニカ :いっぺんに1つしか占えない。

ジャクロス:では、フィーエル様がお亡くなりになった場所を。

G   M:技能レベル+知力ボーナス+基準値ボーナスが8。
      占う内容は「フィーエルの、死んだ、場所」で、+3。
      目標値13で、目標値を上回れば上回るほど、多くの情報が得られます。

アリエル :外れてもそう困らない。リコリスは温存だ。

リコリス :わかったよー!

G   M:エタニカがカード(木札)を切り、思い思いに並べてゆきます。
      やがて、おもむろに数枚を表にします。
      占いは(ころころ)出目5で、合計13。
      占いでの出目はGM以外にはわかりませんが、ぎりぎりの成功です。
      示された1枚目のカードは『運命の輪』。
      エタニカは、このカードが車輪のことであるとの直感を得ます。
      すなわち、車輪騎士団を擁するオランを指すと考えます。

エタニカ :『運命の輪』。車輪……オラン。

G   M:裏返された二十数枚のカードの中からピンポイントでそれが
      出たわけですから、傍で見ている者からしても一定の信憑性はありますね。

ジャクロス:……まだどの程度信用していいかわかりませんが……。

エタニカ :信じる信じないは自由。

チェーザ :次はもっと詳しく占えますよ!

ジャクロス:では、お願いします。この宝石でいいですか?

G   M:ジャクロスは、1万ガメル相当の宝石をエタニカに渡します。

エタニカ :何を占う?

ジャクロス:フィーエル様がお亡くなりになった原因を。

アリエル :それが一番知りたい情報かい?

ジャクロス:はい。蘇生方法は一応わかっていますので。

アリエル :(頬にキスしながら)リコリス、がんばって。

リコリス :くすぐったいよぅー。今なめたでしょー?

ルコ   :ちょっと、アリエル!!

G   M:エタニカは先ほどと同様に宝石を粉々に砕き、木札を切ります。
      基準値は先ほどと同じく8。
      占う内容は「フィーエルの、死んだ、原因」で、+3。
      目標値は合計13。

リコリス :おしえておとうさんっ!

G   M:さらに、リコリスのイントゥイションにより、
      リコリスが直感を使って場面に応じたカードを選び出します。

リコリス :これとこれとこれとこれっ!

G   M:イントゥイションの判定は(ころころ)成功。
      エタニカの占いの基準値にさらに+4されます。
      基準値12で目標値が13なので、36分の35の確率で当たるという、
      世にも恐ろしい占いが完成します。
      占いは(ころころ)出目4で、合計16。
      成功したかどうかは、GM以外にはわかりません。
      占いのタイプがタロット占いなので、カードから4つの単語が示されます。
      『審判』『悪魔』『死神』が近い位置で重なり、離れた位置に『吊るされた男』。
      エタニカの直感により、『審判』は神、『悪魔は』デーモン、『死神』は死の雲、
      『吊るされた男』は殺されたフィーエルと判断されます。
      また、『審判』と『悪魔』が近い位置にあるため、
      邪神を指す可能性が高いと判断されます。

エタニカ :神か悪魔、もっというなら邪神が、死の雲で、フィーエルを殺した。

G   M:明らかに不吉そうなカードがこぞって出てきました。
      また、ロックを無傷で倒した冒険者が死亡する状況についても、神、
      デーモン、あるいは邪神といった存在によるデス・クラウドと一致します。
      真偽は確かではありませんが、非常にそれらしい占いの結果です。

アリエル :筋は通るね。エタニカの啓示とも一致する。

ジャクロス:す、凄い……。

チェーザ :言ったとおりでしょ?

ジャクロス:本当に当たりますね、これ!

レミィ  :あんまりやってると、イェーガーさんって人いなくなるですよ?

ブリュワー:まあまあ。そう言わずに、待ってやってくれないか?

ジャクロス:それなら、あと1回だけお願いしていいですか?

エタニカ :1回だけなら。

リコリス :私は打ち止めだよー。

アリエル :成功率が下がってしまったね。

シエナ  :もっと高価なものを使えば、確率は上がりますよ。

ジャクロス:いくらですかっ!?

エタニカ :10万。

G   M:ここまでくると、さすがに学院の1年の学費より高くなります。
      青ざめる学生や、必死に止める学生まで現れはじめますね。

ジャクロス:やりましょう。このフレアストーンならば!

G   M:ジャクロスが取り出したのは、内側から光を放つ不思議な宝石です。
      知識の深い学生ならば、遥か東方で算出される
      非常に高価な宝石だとわかるでしょう。

エタニカ :割る。自分のじゃないし。

G   M:エタニカは遠慮なくフレアストーンを粉々にしていきます。

エタニカ :何を占う?

ジャクロス:私が今から何をすべきか。

エタニカ :1日先になるごとに難しくなるけど、今日、今からでいい?

ジャクロス:はい。お願いします。

エタニカ :名前は?

ジャクロス:私はジャクロスといいます。

G   M:エタニカはカードを切り始めます。
      占う内容は「ジャクロスが、すべき、こと」で、+3。
      基準値はさらに上がって9で、目標値は13。
      当たる確率は、それでも36分の33です。
      占いの出目は(ころころ)出目3で失敗ですが、誰にもわかりません。
      エタニカに示されたカードは、『皇帝』『魔術師』『女教皇』が近い位置で
      重なり、『女教皇』は3つの中心。そして、『正義』が離れた位置にあります。
      エタニカの直感により、『皇帝』はオーファンの建国王リジャール、
      『魔術師』と『女教皇』はその建国を助けたカーウェスとジェニ、
      『正義』は正すこと、つまり、フィーエルを復活させることと判断します。
      また、『女教皇』が3者の中心にあることから、
      ジェニの重要性が導き出されます。
      つまり、オーファンでジェニの力により、
      フィーエルを復活させよという結論が導き出されます。

G   M:かなりレアなカードの組み合わせですから、やはり信憑性は高いです。

エタニカ :オーファンで、マイリーのジェニ最高司祭の力で、
      フィーエルを復活させるべし。

ジャクロス:おおお!

レミィ  :気は済んだですか?

ジャクロス:充分です。お待たせして申し訳ありません。お礼はいかほどご入用でしょう?

エタニカ :エタニカ、お金いらない。破片もらえたらそれでいい。

ジャクロス:助かります。ありがとうございました。

レミィ  :(ディースなら、きっと大丈夫です……。)

G   M:ジャクロスはレミィに伴われ、寮を出ました。
      今後、イェーガー家のツテで復活の準備を整えることになるでしょう。
      そして、用事を終えたブリュワーも学院へと帰っていきます。





第20話前編・第1節 へ
第20話後編・第1節 へ

トップページへ