空を飛ぶ、3つめの方法。
G M:その頃、フライトで飛行中のフアナとマリア。
イングィーが地図で見ただけの位置の情報をまた聞きで得ただけなので、
最短距離で飛ぶよりも、ほんの少しだけ時間がかかりました。
そして、出発してから1時間20分ほど飛んだ地点で、
行く手に黒煙が上っているのが見えます。
位置的には、ちょうど目指している緊急基地のあたりですね。
煮炊きの煙というよりは、火事か何かで、
燃えちゃいけないものが燃えてるような、そんな煙の量と質です。
マリア :なんじゃ?
フアナ :……まさか、車輪騎士団……!?
マリア :我も聞いたことがあるぞ。戦車とやらを使う強い騎士団じゃな。
フアナ :……計算外……早すぎる……。
G M:どうしますか?
フアナ :……高度を上げて、偵察……。
マリア :そうじゃな。まずは事態を把握せねばならぬ。
G M:そのまま高度を上げると、崖から煙が上がっているのが見えます。
それ以上のことは、遠すぎてわかりません。
フアナ :……下から鳥に見えるように、上空を横切る……。
マリア :我も続くぞ。
G M:少し進んだ時点で、カウンター・センスが発動。
探知されています。探知内容は、
フアナが7レベルであることと、7レベルの技能全て。
マリアが10レベルであることと、10レベルの技能全て。
フアナがエルフの女性、マリアが魔法生物であること。
あとは、2人の現在位置。ただし、姿や顔は探知されていないようです。
フアナ :止まって!
マリア :む? どうしたのじゃ?
G M:1ラウンドの間情報が探知され、その後、探知の効果は消えます。
なお、さっきより近づいたので、崖が居住用に彫られている洞窟で、
煙はそこの窓から出ていることがわかりました。
フアナ :……どんな奴?
G M:探知者は、車輪騎士団の鎧を着て、純白のマントを羽織った男。
装備が重い鎧ですし、発動体らしきものも見当たりません。
フアナ :……騎士? ……偉そう?
G M:セージ技能で判定を。
フアナ :……15……。
G M:胸に金色の何かがついていました。
通常の鎧の意匠とは異なり、バッジかペンダントだったと思われます。
それが何を意味するのかはわかりません。
フアナ :……指揮官……まさか……将軍!?
マリア :……将軍?
フアナ :……探知されてた。……多分、車輪騎士団に……。
マリア :探知か!? 今されたのか?
フアナ :……うん。フィールド型で、あの崖が中心。位置とか強さを……。
マリア :むぅ……敵か味方かが問題じゃのう。
フアナ :……わかんない……。
マリア :ふむ。結局のところ、あの煙は何なのじゃ?
フアナ :……演習で屋内は燃やさない……危ないから……。
マリア :すると、やはり実戦か。相手は……。
フアナ :……うん。あと、ここにいたら、騎士が接触してくるかも。
マリア :レイディアがおれば、交渉もできるのじゃが。
フアナ :……カトレアのところに、置いてきたから……。
マリア :仕方ないのう。して、どうする?
フアナ :……接触は、避ける。……上空から偵察して、内情を……。
マリア :わかったぞ。
ロベールは、あるマジックアイテムを使って敵を探知していました。
そこに、探知を無効化するフアナのカウンター・センスが割り込んでしまったわけです。
そのマジックアイテムは、4つの人形を使い、
それに囲まれた者の位置や強さを探知する能力を持っていました。
もちろん、マジックアイテムそのものが完全に無力化してしまったわけではありませんが、
探知能力を再び発揮するには、4つの人形を一度回収することが必要になります。
G M:続いて、ロベール側。第8戦略ラウンド終了直後。
かなりの高度を高速で飛行する物体が2つ、探知圏内に侵入します。
2つは近くに並んで、崖の洞窟の方向に飛んでいました。
速度から計算するに、古代語魔法のフライトでしょう。
探知圏内に侵入直後、ほぼ同時に急停止。
その後、カウンター・センスにより、探知の効力が消えます。
反応の1つは、エルフの女性で7レベル。ソーサラーとシーフが7レベル。
もう1つは、無生物で10レベル。
ロベール :じゅっ、じゅ、10レベルだぁ!!!?
ベス :どうした?
G M:周囲の騎士や民兵たちも、突然叫んだロベールを怪訝そうに覗いています。
ロベール :(無生物、10レベル、飛行能力に魔法!!?)
G M:(ころころ)セージ技能の判定は16。心当たりがありません。
ロベール :(位置関係から考えて、2つが味方同士である確率がほぼ100%。
しかし、無生物であれは……あり得ない…………憑依……いや……。)
G M:なお、止まったのは無生物の方が先でした。
ロベール :(……ひとまず、無生物というのが間違っていないという前提で考えよう。
同種のレーダー付きの自律型無生物か、あるいは、命令で止めただけか。
エルフが賊の救援とは考え難い。また、こちらの救援目的であれば、
探知を予期していなかったとしても、探知されて急停止はおかしい。
叔父のよこした援軍であればなおさらだ。
したがって、両軍に関係ない第三者?
とはいえ、砦方向に直進していたので、賊と無関係とは考え難い。
残る可能性は……冒険者か? 動機は、依頼か私怨か……。)
G M:なお、ジェネラル技能により、基本的に、
8レベルまでの魔法の効果は知っています。
仮に7レベルの古代語魔法使いならば、消費精神力3でフライトは可能です。
カウンター・センスをかけ直した場合、消費精神力は2です。
仮に5レベルの古代語魔法使いならば、消費精神力は4と3です。
また、カウンター・センスを使っても1ラウンドの間は探知されるので、
探知の妨害よりは、探知の感知のために使われることが多いことも
知っています。
ロベール :(かけ直される可能性は比較的低いか。
それより、首領に逃げられると、今までの苦労が無駄になってしまう。
冒険者に手柄を横取りされるのもまずい。)
ベス :さっきから何を黙っている。説明してもらおうか。
ロベール :探知が遮断された。カウンター・センスだ。
ベス :……? 簡潔に話してもらおうか。
ロベール :魔法に妨害されて敵の位置がわからなくなったので、
テイラー司祭に、アレを回収してきてもらいたい。
ベス :……なぜ私が?
ロベール :テイラー司祭しかアレの位置を知らないからだ。
ベス :お前も知っているだろうが。
ロベール :将軍は持ち場を離れられないんだよ。
ベス :指揮なら、私も取れるが?
ロベール :(くっ!)探知を妨害したのは、飛来したエルフと、邪悪な無生物だ。
ベス :邪悪!? そんなものいなかっただろう!?
ロベール :空を飛んで来たんだ。エルフと一緒にいるのが邪悪だ。
ベス :ほう。
ロベール :探知を恐れているから、襲ってくる可能性もある。
ベス :成敗してよいのだな?
ロベール :そうだ。騎士隊D及びE、司祭様を護衛してさしあげろ。
ベス :その程度のこと、1人でできる。
ロベール :敵は強大な邪悪です。正義をなすためには、味方は多い方がいい。
ベス :……了承した。ついて来なさい。
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