大遭遇








G   M:再びレイディア組。
      イングィーの応急手当は完了しました。もちろん、縛ったままで。
      懐から通話の護符は発見済みです。
      トラ猫が、イングィーの顔を見て、何か言いたそうにしています。

レイディア:ディスペル・マジック! (ころころ)22!

G   M:ポリモルフは解除されました。
      トラ猫は、裸のダークエルフの少年になります。

ディース :おっ、丸出しとは景気がいいねぇ。

フィーエル:あうー。

イングィー:ぼ、坊ちゃん!?

トゥエリ :とりあえず、服着てください。私の服ならなんとか着られますからネ。

ピニーズ :イングィー、一緒に罪を償おう。

イングィー:坊ちゃんまでこいつらに!?

ピニーズ :僕が自分からついていったんだ。お父さんを止めてもらうために。

イングィー:……まさか、裏切ったんすか!?

ピニーズ :イングィー、お父さんの居場所を教えて。

イングィー:教えられるわけがないっす。

レイディア:へぇ。いい度胸してるじゃないの。

イングィー:……。

レイディア:喋ってくれたら、あんたの目や歯に不義理しなくて済むんだけど?

イングィー:……。

ディース :こいつ、黙秘しやがったぞ。

レイディア:まあいいわ。ギアスで吐かせりゃいいから。

ピニーズ :だめだよ。ギアスはもうかかってるから、効かないんだ。

イングィー:……。

レイディア:それ、どういうこと?

ピニーズ :お父さんの部下は、幹部以外は、裏切らないようにギアスをかけられる。
      幹部は、ギアスはかけられないけど、
      居場所を掴むために、体に宝石を埋め込まれる。
      僕は一応幹部ってことになってるから、
      お父さんのクエストしかかけられてないんだ。
      体が大きくなる途中だから、宝石もまだ。
      イングィーは、最初は幹部じゃなかったから、ギアスがかかったままなんだ。

トゥエリ :面倒といえば面倒デスね。

レイディア:ディスペル・オーダー+ギアス+センス・ライでいけるっしょ。

ディース :ま、問題はねーわな。






しかし、ディスペル・オーダー、ギアス、センス・ライの消費精神力は合計9点。
これらを全て使うとレイディアの精神力は残り5点になり、
魔法がほとんど使えなくなってしまいます。
魔法使いが実質1人しかいない現段階では、かなり危険な賭けといえるでしょう。






レイディア:ていうか、その宝石の目的って、ロケーションでしょ?
      なんで魔法使いじゃない上に、
      マジックアイテムもろくに持ってない奴が追跡してきたわけ?

ピニーズ :お父さんの右腕の、ソリッシュが魔法使いなんだけど。

トゥエリ :事故があったんじゃないデスかね?

フィーエル:あうー。

レイディア:まあ、そう考えるのが妥当ね。それを知ってて、こいつを捨て石にした、と。

イングィー:……待てや。誰が捨て石だ。

ディース :お前だよ、お前。

レイディア:そのソリッシュって奴、右腕ってことは、相当強いんでしょ?

ピニーズ :うん。

レイディア:それが動かせない状況って、そいつ絶対殺されちゃってるし。

トゥエリ :それをわかって動かしたとなると、捨て石デスね。

イングィー:……。

レイディア:他にも、普段と変わったことあったでしょ?

イングィー:……!

G   M:イングィー以外は知りませんが、確かにありました。
      サイルからの通話の護符による数度に渡る増員要請を、
      マシェンスが断ってるんですよね。
      幹部のイングィーは、何度か会話を聞いています。
      通常、要請した側は増員で仕事が楽になり、
      増員された側は分け前が増えます。
      そして、分け前を減らしてまで増員するということは、
      全体の実入りが相当大きいということです。
      結局は双方にとって得なので、増員要請の発出を渋るかどうかはともかく、
      現実に到達した増員要請を断るケースは稀です。
      今回、別の用事もないのに増員を断った背景として、
      マシェンスが何か企んでいたのではないかと思い至ることができます。
      実際、企んでいたんですが。

レイディア:……へぇ。顔色が変わったわね。

ピニーズ :イングィー、話してよ! 知ってるんでしょ!?

イングィー:……ボスの居場所の心当たりが、ある。

レイディア:! それを素直に話したら、無傷で解放してあげるけど?

イングィー:信じられるか。

オドソフ :この人たちは信じられるぞ。

イングィー:は? 何言ってんだ?

レイディア:じゃ、情報を小出しにすればいいわ。私らは、あんた連れて進むから。

イングィー:結局、身の安全は保証されてねーじゃねぇかよ。

レイディア:不満なら、そこの馬にロープで引きずってもらってもいいんだけど?

イングィー:拷問が怖くてこんな商売やってられっか。

レイディア:じゃ、5分後にもう1回だけ聞くから、よく考えるといいわ。

トゥエリ :(耳打ちで)あの人、本当にやりますヨ。

ピニーズ :この人たち、ダークエルフの僕を殺さなかったんだ。
      それも、お父さんの子供だって知ってるのに。
      イングィーも、この人たちを信じてあげてよ!

イングィー:……。

G   M:そして、5分が経過します。

レイディア:私らがボスのところにたどり着いたら、あんたを無傷で解放するわ。
      ……さて、この場で質問するのはこれで最後よ。
      まず、方向だけ教えてもらえるかしら?

イングィー:……東。

レイディア:ありがと。約束は守るからね。
      縛ったまま連れてくわよ。ちょっと遅くなるのは仕方ないわ。

G   M:徒歩で、裏街道を東ですか?

レイディア:1人だけ馬使うわけにいかないでしょ。まあ、連れてくけど。

G   M:では、レイディアたちは、道に戻って、
      繋がれていたイングィーの馬を外し、徒歩で東へと進みます。
      では、レンジャー技能で判定を。(ころころ)レイディア10、
      トゥエリ15(6ゾロ)、ディース4、フィーエル6、オドソフ12。
      レイディアたちは、さっきまで自分たちがいた湖から、
      丘を迂回して進んだことになります。で、その丘の上なんですが、
      カトレアとフアナとマリアが、ちょうどこちらに背を向けて上っています。
      距離は、10mかそこらですね。
      視界の端でしたが、トゥエリだけが気付きました。

トゥエリ :こっそり全員に伝えますヨ。

レイディア:位置関係からして、私らを狙ってると考えるのが普通ね。

トゥエリ :しかも、おそらくは、わざわざ引き返してきたんでしょうネ。

レイディア:念のためにカウンター・マジックだけかけて、話し合うわよ。

トゥエリ :それがいいデスね。

レイディア:カウンター・マジック!
      (ころころ)フィーエルのだけ1ゾロ。あとはかかったわ。






G   M:カトレアたちが息を潜めて丘を登る最中。
      背後で聞き慣れた声が響きます。振り向きますか?

カトレア :ミゴリは絶対です。リプレイス・サウンドなどに惑わされてはいけません。

マリア  :この声は!!!

フアナ  :!? 振り向く!

G   M:フアナとマリアが振り向いた瞬間、
      レイディアのカウンター・マジックが完成しました。
      レイディアの側には、見知らぬ髭面の男。
      彼は、ロープで縛った眼帯の男を連れています。
      その人相は、野盗団幹部のイングィーと一致。
      そして、レイディアの右腕には包帯。血が滲んでいます。

マリア  :レイディア! レイディアぁっ!

フアナ  :……カトレア……。

カトレア :いやー、参ったなー。そっちから来るなんて。

レイディア:自衛のためにカンタマ使ったけど、不意打ちする気はないから。

フアナ  :……カトレア……話し合い……。

カトレア :そのダークエルフと眼帯の男を引き渡してください。譲歩は一切ありません。

レイディア:この2人は協力的よ。上手く情報を引き出せば、目的は果たせるわ。

カトレア :その2人を引き渡してください。譲歩は一切ありません。

レイディア:……仕方ないわ。あんたが負けたら、私の言うこと聞きなさいよね!!

カトレア :望むところです。

G   M:そして、決戦は幕を開けます。





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