遥かに大きい、麗しの








ディース :……全部、思い出した……つーか、一文字も合ってねーじゃねぇか……。

レイディア:! 気がついたのね!! なんか夢でも見てたの!?

G   M:そこは、月明かりが差し込む一室のベッドの上。
      椅子に座っていたレイディアが、目に涙を浮かべながら安堵しています。

ディース :……あー、よく寝たー。

レイディア:そうね。よく寝てたわね。

ディース :俺の看病? みんなは?

レイディア:エルフに誘われてる。フアナの故郷だし。……今は2人きりよ。

ディース :……そっか。わりーな。

レイディア:気にしないで。私の意志だから。

ディース :体があんま動かねーな。骨でもやられてんのかな?

レイディア:死んでたのよ、馬鹿。

ディース :……やっぱそっか。ドラゴン相手にハンデはきついよなー。

レイディア:それより、聞いてほしいことがあるの。

ディース :……それって、他のみんなに言えねーこと?

レイディア:どうだろ? いつか言わないといけないこと、かな?

ディース :だったらみんなの前で言おうぜ。隠し事なんていらねーよ。
      だって俺ら、家族みたいなもんだからなっ。

レイディア:そう……。

ディース :そんなことより、ドラゴン、誰が仕留めた?

レイディア:フィーエルに守られながら私が近付いて、パラライズで麻痺させた。
      トドメはフアナのダガーよ。

ディース :あーっ! また主役取られちまったなー!

レイディア:安静にしてなさい。……あんた、そんなにしゃべってなんともないわけ?

ディース :何が??

レイディア:オルフはもっと、なんていうか、今まで死んでましたって感じだったけど。

ディース :ああ、俺、変なんだよ。小さい頃に住んでた村が疫病にやられてさ。
      村ごと全滅したのに、俺1人だけ普通に生きてたんだよな。
      んで、子供ができなくて困ってた商家に養子にもらわれてさ。
      小さかったから、その前のことはほとんど忘れかけてたけど……。
      一応、今の親に、学院入る前に養子だって教えてもらったけどさ。

レイディア:……そんなの……聞いてないけど……。

ディース :隠してたつもりはねーよ。俺、呪歌はレクイエムだけだろ?
      空の親にも届けばいいなって、そう思って覚えた。
      本当の親が死んでるのは、小さい頃からなんとなくわかってたから。
      俺、うちの親と全然似てねーし。くししし。

レイディア:……まさか……。

ディース :うん?

レイディア:あんた、もしかして、一人っ子で長男!?

ディース :そうだけど?

レイディア:商人の長男がこんな所でなにやってんのよ!?

ディース :え? 冒険だけど。

レイディア:親不孝にもほどがあるわ!

ディース :ああ、そのことか。大丈夫だって。好きに生きろって言われてるし。

レイディア:本当は戻ってきてもらいたいに決まってるでしょ!

ディース :もし、俺が戻ったら……。

レイディア:……。

ディース :特攻隊長がいなくなるだろ。マリアは治癒魔法効かねーし、
      フィーエルやトゥエリはお前に言われてから動くし……。
      もしまたドラゴンが出たら、今度こそ俺が撃墜してやるよ!

レイディア:……そうね。ディースは必要よ。……帰るって言っても放さないんだから!

ディース :おっ。リーダーは話がわかるねぇ。

レイディア:……まさか、話、通じてない……?

ディース :なんのこと?

レイディア:……あいつらがこの建物にいないのは確認済みよ。
      今のうちに言うわ。1回しか言わないからよく聞いとくのよ。

ディース :お、おう。

???  :失礼します。お夜食をお持ちいたしましたー。

G   M:と、ドアがノックされるわけですが。

ディース :うおっ!?

レイディア:……頼んでないんですけどぉ?

???  :宿からのサービスになりますー。

レイディア:……ちっ。余計な真似をっ……。

ディース :俺、手動かねーんだけど。

レイディア:私が食べさせてあげるからね。

ディース :お、おう。……お前、熱ある?

レイディア:え? 何で?

ディース :暗くてよく見えねーけど、顔、赤くね? なんか、普段と違うような……。

レイディア:……女の子はね、自分の気持ちと向き合っただけで、変われるのよ。

ディース :は?

???  :すみませーん。開けてくださーい。

レイディア:はーーーい。今開けまぁーっす。

G   M:レイディアが扉を開けると、トレイに2人分の食事を載せた女性が
      立っています。絶世の美女。フアナすら相手にならないレベルです。
      しかも、凄いプロポーションですね。服がちょっと地味でボロくて残念ですが。
      それでも、男の5〜6人は楽にたぶらかせそうです。
      レイディアは、ディースを運んで来たフアナとマリアを宿から見送る際に、
      彼女が宿の1階にいるのを見た記憶があります。

レイディア:あいつらの差し金……じゃないか。宿の人だったの? ごくろうさま。

G   M:女性はレイディアをにらみつけ、食事を持ったまま部屋に入り、
      トレイを机に置きます。

レイディア:(ふん。いい度胸してるわね……。)

ディース :うほっ、いい女!

G   M:さて、女性がディースに向かって口を開きます。言語は西方語。
      訛りから判断するなら、この辺の住人である可能性が高いと思います。

女性   :……ディースさん、好きですっ!!! 結婚してください!!
      この村で、末永く一緒に暮らしましょう!

ディース :……あ、ありがとな。

レイディア:なに鼻の下伸ばしてんのよっ!

ディース :いや、こりゃすげーよ。奇跡だ。俺も今日ばかりは神を信じるね。

レイディア:くっ……魔法使いのがいいに決まってるでしょ。老けないしっ。

ディース :魔法使い? いや、この美貌と胸の前では全てが霞むぜ。

レイディア:……今は負けてるかもしれないけどねっ、私だっで、いづかっ……。(涙)

ディース :ちょっと待てよ。何でお前が泣くんだよ!?

女性   :お返事を聞かせてください!!

ディース :わりぃ。今日は帰ってくれ。こいつ、ちょっと調子悪いみたいでさ。

女性   :……ディースさんのこと、もっと知りたかったのに……。
      太もものほくろのことだけじゃなくて、もっともっと……。

ディース :えっ!!?

レイディア:うん? そんなものあった?

G   M:シーフ技能の記憶術……を使うまでも無く覚えています。注視していたので。
      確かにありました。正面から見て右側だったので、
      ディースからみると左太ももですね。
      股の付近にそれがあったことを記憶しています。
      なお、女性は残念そうに去っていきました。

レイディア:(小声でブツブツと)ほくろのことを知っているのは寮の女子全員。
      ここにいるのはフアナとマリアと私。
      この女と同時にいたのはフアナとマリアと私。
      したがって、フアナが変身したわけではない。
      また、そもそもマリアは変身できない。
      ここで、他に考えられる可能性は……フアナがこの女を買収? 
      ……いや、今の告白は真剣だった。絶対に演技じゃない。
      では、仮に着替えの際などに……いや、人の気配はなかった。
      そして、そもそも簡単に見える位置ではない…………ということは???

ディース :レイディア、大丈夫か?

レイディア:(小声でブツブツと)しかし、当時、
      もとい彼らがことに及んだであろう時間、
      私は彼に対する感情に気付いていなかった。
      また、ディースと私の間はそういった関係ではなかった。
      したがって、彼が誰と恋愛関係に陥ろうと自由である。以上。

ディース :おーい、レイディアー?

レイディア:……大丈夫よ。でも、これからは1人の女の子だけを見て。

ディース :誰を? つーかさ、あの子、誰?

レイディア:…………ふーん。誰かも知らない村娘とそういうことするわけね。

ディース :え? そういうことって何?

レイディア:この状況であくまでシラをきるわけね。へぇ……。
      不本意だけど、これは、あの女の分よっ。殴る。全力攻撃クリティカル−1!

ディース :ちょっ……やめ……まだスピードに対応できな……。

G   M:100%命中します。防御行動が取れないので、自動的に防御1ゾロ扱い。
      ダメージは全て素通しです。

レイディア:(ころころ)9は拳じゃクリティカルしないか。合計6点。

G   M:では、右ストレートが顔面に入り、ディースはダウンします。
      生命力は復活前から全快しているので、残り16点もありますが。

レイディア:やっちゃった?

G   M:やっちゃいました。寝てるだけですが。

レイディア:仕方の無い男ね。まあ、惚れちゃったものは仕方ないか。
      私、これから、もっともっとかわいくなるからねっ!!





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