青空の見える丘で








結局、上司の変貌を目撃した衛視の手下たちにより、事の顛末が報告されます。
調べてみたところ、路地裏の死体は衛視に間違いないということで、
宿の宿泊者たちにかけられていた嫌疑が晴れます。
一行は、翌日の朝に出発することになりました。






G   M:皆さんは宿の主人に見送られ、宿を出ます。
      もちろん、約束の報酬も支払われました。

少女   :では、私はこれで。

カトレア :神のご加護を。

G   M:少女は振り向かず去っていきます。

ディース :おっ、憎いねー。夕べも帰って来なかったしな。

フアナ  :……野暮なこと……言わないの……。

G   M:少女の姿が見えなくなりました。

カトレア :行ってしまいましたね。では、こちらも済ませましょうか。来てください。

G   M:町外れ。町と隊商の馬車を一望できる丘に、カトレアは向かいます。

レイディア:全ての使い魔をルーシュンさんの回りに配置。先に帰ってもらうわ。

G   M:ルーシュンは、隊商と合流します。幹部の商人と話しこんでいますね。
      さて、こちらの配置は、カトレアを、レイディア、フアナ、マリアが囲み、
      その後ろにフィーエル、ディース、トゥエリです。
      他に人影がないのを確認して、カトレアが口を開きます。

カトレア :もうわかってるでしょうけど、僕はミゴリを奉じる暗黒司祭です。

フアナ  :……あ、そう。

トゥエリ :その神を信仰することは、犯罪デスよ。

カトレア :わかってます。

トゥエリ :だからこそ、信者が少なくて神殿もないフェネスの神官を装ったんデスね。

カトレア :そうなりますね。僕に語りかけられる神は、ミゴリだけです。

ディース :恨みと復讐の神か……なんでそんなことに……。

カトレア :昔、山奥に、小さな村がありました。
      村人が自給自足で生活している、小さな村です。

ディース :その村がどうしたんだ?

レイディア:ディース、黙って聞いて。

ディース :わかったよ。

カトレア :少年は、その小さな村で育ちました。
      村では珍しい学者の家に生まれた少年は、小さな頃から勉強が好きでした。
      ある日、少年は、父親の学者仲間の紹介で、
      魔術師ギルドの試験を受けに行きました。
      試験はなかなかの出来だったみたいで、そこの偉い先生に褒められました。
      そして、みんなに自慢しようと思って、馬車に送られて帰ったら、
      村が静かで……。

フアナ  :……辛かったら……やめてもいい。

カトレア :……少年は、最初は村のみんながからかってるのかと思いました。
      村はあまりにも静かで……でも、なにか変な匂いとかを感じて……
      家に帰ったら、お父さんもお母さんも、倒れていました。
      気が付くと、少年の服は黒い血で染まっていました。
      それでも、少年は、信じたくなくて、泣きながら、叫びながら、
      帰ってきたからって。みんな出てきていいよって。
      途中で目にした人は、みんな死んでいました。
      ……でも、一番仲が良かった友達だけは、生きてるって信じて。
      かくれんぼが得意だったし、いい子だし。
      隠れてるからすぐには見つからないだろうって。
      見つかっても、子供が殺される理由なんてないし。そして、
      こんなところにいるはずないけどって、その子の家の扉を開けたら……。

フィーエル:それ以上は、聞きたくない。

レイディア:…………。

ディース :レイディア、泣くな。お前が泣いたってどうにもならねーよ。

フィーエル:大丈夫?

レイディア:わだしは大丈夫だがら、つづけざせて……。

フアナ  :……犯人は……?

カトレア :もういなかった。自分も殺してほしくて、村の外で叫んで回ったのに。
      しばらくしたら、少しまともに考えられるようになって、穴を掘った。
      みんながそこで腐ってくのが嫌だったから。それしかできないから。
      でも、なかなか掘れなくて、手で掘ってたから爪もはがれて
      ……泣いてたら、雨が降ってきて、神様の声が聞こえたんだ。

フアナ  :……それが……ミゴリ……。

カトレア :奴らに復讐しろって。犯人はダークエルフが率いる野盗だって。
      神様はその声が聞こえる神官を通してしかその力を行使できないけど、
      神官の復讐なら助けられるって。
      それで、手を治したいってお祈りしたら、神様が叶えてくれた。
      傷だらけだったあの子の手も、治してもらえた。

ディース :

フアナ  :……丸腰で刃物を防ぐには……よけるか、腕で防御するしかないから。

ディース :でもよ、腕を刃物の防御に使って奪い取れねーようなのは素人だから、
      賊相手に傷だらけになるほど長くは持たねーんじゃ……。

フアナ  :……わざといたぶってた……ダークエルフなら、やりかねない……。

フィーエル:ひどすぎるよ!

ディース :そういうわけか。

フアナ  :……わたしたちを騙したことの……弁解は?

カトレア :最初は、あなたたちの復讐をお手伝いしたかっただけです。
      でも、一緒にいるうちに、別れたくなくなってきて……。

フアナ  :……今回、珍しく進んでついてきた理由は……復讐?

カトレア :ルーシュンさんに野盗の話を聞いたとき、神の啓示を受けました。
      僕の村のと同じ奴らだって。

レイディア:……復讐は、止められないのよね?

カトレア :止めるなら、この場で皆さんを倒します。

フアナ  :……それ、わたし……死ぬ。

ディース :おっと。カトレアの魔法じゃ、俺は倒せねーぜ。

カトレア :そうですね。ははは。参ったなー。

レイディア:とにかく、約束は守ってもらうわ。

カトレア :約束?

レイディア:4号室の犯人を捕まえるまで、一緒にいるんでしょ?

フアナ  :……そういえば……殺したけど、捕まえてはない……。

カトレア :詭弁ですね。

レイディア:悪い? 私たちも、あんたと一緒にいたいし。

カトレア :暗黒神を信じることは犯罪です。これ以上一緒にいると、皆さんも……。

レイディア:フェネスの神官なら、問題はないわ。

カトレア :センス・ライの力を知ってるでしょう。僕をかばうと、皆さんまで……。

ディース :へっ。国家権力が怖くて、冒険者ができるかよ。

フアナ  :……答え方を工夫すれば……すり抜けられる魔法……。

ディース :つーか。さっきもすり抜けてたしな。

マリア  :カトレアを悪く言う奴は、我の拳で沈めてやろうぞ。

フィーエル:みんながいれば、だいじょうぶ!

トゥエリ :大体、レイディアさんに何言っても無駄デスよ。

レイディア:私たちは仲間よ。今までも、これからも。

カトレア :……僕は危険です。奴らを前にしたら、きっと、とんでもないことを……。

レイディア:あー、もう。大の男がうだうだ言ってんじゃないわよ!
      あんたは攻撃されても避けられないし、私たちは傷を治せない。
      あんたみたいなのは黙って守られてりゃいいのよ。
      当然、傷は治してもらうけどね。

カトレア :……わかりました。では、奴らを見つけるまで、よろしくお願いします。

ディース :今更改まってんじゃねーよ。

レイディア:よろしくね。

トゥエリ :なんとか元の鞘に収まりましたかネ。






かくして、冒険者たちの旅は続くのでした。





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