壷いぢり








一行は、念のため主人に捜索の許可を得て、密かに捜索を始めます。
なお、何か出るとまずいので、依頼人は捜査能力の低い男性陣が部屋の外で保護します。






レイディア:(ころころ)7じゃ何も見つからないわね。

フアナ  :(ころころ)……15。

マリア  :(ころころ)8じゃ。

G   M:何も見つかりませんが、フアナはシーフ技能の記憶術で判定してください。

フアナ  :(ころころ)……1ゾロ。

G   M:何もわかりません。

フアナ  :……しくった……。

レイディア:じゃ、カトレア、頼んだわ。

G   M:では、まず捜索から。

カトレア :13ですね。

G   M:ぎりぎり成功です。では、記憶術を。

カトレア :(ころころ)んー。6ゾロです。

G   M:それなら、達成値に関係なくわかります。
      盗賊が宿に来たときに小脇に抱えていた荷物が、部屋のどこにもありません。

カトレア :もちろん、連行されるときも持ってなかったわけですね。

G   M:はい。

レイディア:分解したんじゃないの?

フアナ  :……できるなら……宿に入る前にそうする……。

カトレア :宿の主人が不審に思って、泊まれない可能性もありますからねー。

レイディア:あ、そっか。でも、あの荷物、4号室の件と関係あるわけ?

カトレア :4号室で事件が起こった時点で、あの荷物はありましたか?

G   M:捜索していないので、記憶を辿ってもわかりません。

レイディア:うーん。捜索・押収の権限がないのが響いたわね。

フアナ  :……盗品で……事件にかかわってるとすると……。

レイディア:何なのか調べる必要がある、と。

G   M:エートが警告を発します。衛視が帰ってきたようですね。

フィーエル:あう、帰って、きた。

レイディア:部屋を出るしかないわね。全員で1階に行くわよ。

G   M:盗賊は帰ってきていないようですね。

レイディア:あの男はどうしたんですか?

衛視   :気がついたら、姿が見えなかった。

G   M:明らかに不合理な返答ですが、嘘はないです。

レイディア:何らかの見返りと引き換えに、逃がしたりはしませんからね。

衛視   :当たり前だ! ワシを侮辱するのか!?

G   M:嘘はないです。

レイディア:そういうわけじゃないんすけどね。

衛視   :次はそこの色男……といきたいところだが、1号室のジジイだ。

G   M:そして、老人が連行されていきました。

レイディア:さて、あの盗賊がどこに消えたかね。

フアナ  :……最悪……首が飛んでる……。

カトレア :盗賊なら、所在を掴めませんか?

フアナ  :なら……盗賊ギルド、行ってくる……。

G   M:ここで、建物の外に動きがあります。
      衛視の手下2名が、同僚の報告を受けているところです。
      会話によると、近隣で殺人事件が発生。被害者は20〜40代の男性。
      死体には首が無いそうです。

フアナ  :……事件は会議室で起きてるんじゃない……現場で起きてるんだ……。

ディース :当たり前だろ。

フアナ  :……。

G   M:報告に来た者は、2名を護衛の応援として連れて帰りたいようですが、
      2名は上司に怒られるからと固辞しています。

フアナ  :……今のうちに……コンシール・セルフ(ころころ)成功。

レイディア:(たくさん抜けたら目立つから……頼んだわよ。)

G   M:やがて、報告に来た同僚は諦めて帰って行きます。

フアナ  :……後をつける。






G   M:では、フアナから処理しましょう。
      存在を完全に隠匿する魔法なので、至近距離でつけるなら尾行の判定は不要です。
      程なく、殺人現場にたどり着きますね。
      首無し死体に大量の血液という、4号室と同じ有様です。死体は全裸。
      では、シーフ技能の記憶術で判定を。

フアナ  :(ころころ)6ゾロ。

G   M:死体の近くに服が落ちています。盗賊が着ていた服ですね。
      なお、6ゾロですので、特別に、
      死体の体格はあの盗賊とはかすかに違うことがわかります。

フアナ  :……誰の体格に近いか、わかる……?

G   M:頭がごっそりなくなっていますが、頭以外は衛視と同じ体格ですね。

フアナ  :……大体わかった。死体の手を観察する……。

G   M:はい。観察しました。

フアナ  :透明状態を維持したまま……帰る。






フアナが死体を見ている間、一行は1号室を調べようとします。
しかし、調べ始める前に事件が……。






G   M:1号室の鍵が開いていますね。

ディース :無用心な爺さんだな。

マリア  :ボケが始まっておるのではないか?

G   M:部屋に入ると、まるで家捜しでもされたように散らかっています。

フィーエル:トゥエリさん、そのままで! センス・マジック!(ころころ)成功。

G   M:それはわかりますね。部屋の中に魔力源が2つ。
      1つは透明化した人間。1つは、壷です。

フィーエル:誰か、いる!

レイディア:出てこないと、泥棒がファイアーボールぶっ放したことにするけど?

G   M:観念します。なお、レイディアはまだセンス・ライが持続していますね。
      よくいる魔術師ギルドの研究者のような風貌です。

レイディア:あなたが4号室の事件の犯人ね。

研究者  :ち、違いますっ。実は、ギルドから大事な品物が盗まれて、
      それを取り返しに来たんですよ。

レイディア:そう。魔法はロケーションとコンシール・セルフ?

研究者  :そうです。ただ、盗難に気付いて来てみたら、
      殺人事件が起きたようだったので、こっそりと。

レイディア:うん。筋は通るわね。じゃあ、首なし殺人事件に心当たりは?

研究者  :な、ないですって!

レイディア:わかったわ。で、盗まれた大事な品物って、ずばり何?

研究者  :使い走りの僕が知るわけないじゃないですか!?

レイディア:ええ。でも、嘘は相手を見てからつくといいわ。

研究者  :センス・ライ!? でも、いつの間に!?

レイディア:ふっ。高速詠唱と、熟達による身振りの省略のなせる技よ。

G   M:嘘です。

レイディア:私にしかわかんないんだから、いいのよっ!

研究者  :くそっ。こんな奴らがいるなんて、聞いてないぞ!

レイディア:ていうか、ここに来てから派手な魔法使ってないし。

研究者  :姿が見えたところで、こちらには破壊の魔法がある。

レイディア:ここに入る前に何匹か変な動物がいたでしょ?

研究者  :? ああ。

レイディア:あれが全部使い魔だとしたら、どうする?

研究者  :は?

トゥエリ :(下位古代語で)この人、怒らせると怖いですよ。従ってください。

フィーエル:(下位古代語で)うん。

マリア  :(下位古代語で)ヒュドラすら無傷で倒した我らを恐れぬとは……。

ディース :(下位古代語で)残念だな。忍び込んだのがお姉ちゃんだったらなぁ。

研究者  :……ほ、ほんとに?

レイディア:センス・ライ使ってみる?

研究者  :しかし、これの存在は機密でして……。

レイディア:あんたを縛ってからアナライズ・エンチャントメント使ってもいいけど。

研究者  :その場合、こちらの身の安全は……。

レイディア:ファンドリアの魔術師は優秀なんでしょ。聞かないとわからない?

研究者  :では、こちらの身の安全と引き換えということで……。

レイディア:わかったわ。じゃあ、教えなさい。

研究者  :この壷は、魔神召喚の壷でして、壷の底に刻まれた合言葉を唱えると、
      魔神が現れるんです。

レイディア:なるほど。犯人は魔神だったわけね。

G   M:そこに、透明化を解除したフアナが帰ってきます。

フアナ  :……ただいま……お客さん?

レイディア:まあ、そんなもんよ。

フアナ  :……殺人事件の全部を……伝える……。

レイディア:出てくる魔神の種類は?

研究者  :無作為です。最悪の場合、魔神将が出てきます。

レイディア:つまり、底の古代語を読めて、かつ、
      壷の鑑定ができない人間の手に渡ると、この上なく危ないわけね。

フアナ  :……出てきた魔神は……消える?

研究者  :消えません。通常ならば、この物質界で暴れ回ります。

G   M:では、この件に関する情報を整理しましょう。
      4号室の盗賊は、宿に入ってから朝までの間に入れ替わり、
      同室には身元不明の首無し死体。外には盗賊の服が近くに置かれた、
      盗賊で無い人物の首無し死体。死体は衛視の体格と酷似。
      そして、4号室の盗賊が部屋に持って入ったのは、
      魔術師ギルドから盗んだ魔神召喚の壷。
      この件を踏まえて、セージチェックを。目標値は16です。

レイディア:(ころころ)16。

フアナ  :(ころころ)16。……謎は……全て解けた。

トゥエリ :(ころころ)14デスね。

カトレア :(ころころ)んー。10です。

ディース :(ころころ)11。

フィーエル:(ころころ)あうー。11。

マリア  :(ころころ)14。……本で調べるぞ(ころころ)17じゃ!

G   M:女性3人は、ドッペルゲンガーの存在に思い当たります。

レイディア:犯人は、ドッペルゲンガーよ!

研究者  :そんな……上位魔神は滅多に現れないのに……。

G   M:ドッペルゲンガーは、姿を真似る上位魔神です。
      もちろん、コピーした姿は、真似られた相手と同じ服を着てます。
      被害者の脳を食べればその記憶を得ることができ、
      ドッペルゲンガーはそれにより自我に影響を受けることもあります。
      自我に影響を受けたところで、魔法などの特殊能力は無くならないんですけど。
      判定に成功した3人は、そのことを思い出しました。

フアナ  :……盗賊は部屋で品定めをしていて……誤って魔神を召喚。
      ……盗賊が気付かないうちに、魔神は盗賊の頭を一飲み……盗賊の姿に。

レイディア:魔神は盗賊の姿を得ると同時に、盗賊の自我と記憶に影響された。で、
      自分が殺した記憶を失ったところに、目の前には自分と同じ服の首無し死体。
      真相はわからないまでも、とりあえず、被害者の服を隠した。
      その上で、ただの発見者を装うことに。

マリア  :そして、衛視が到着する前に、壷を老人に渡したのじゃな。
      盗品の壷を触っておって、気付けば首無し死体が現れたわけじゃから。

トゥエリ :ということは、フアナが見た首無し死体は……。

フアナ  :……衛視が盗賊になった魔神を追い詰めて、魔神が出てきた……。

レイディア:衛視の隙を見て、魔神が頭を飲み込んだ。
      魔神は衛視の姿と記憶を得て、それに影響される。
      結果、第一の事件と同じように、服の偽装を思いつく、と。

ディース :でも、魔神が化けてた盗賊の服は、無いんじゃねーか?

トゥエリ :言われてみれば、第二の現場に落ちてるのはおかしいデスね。

レイディア:本物の盗賊の服を、どこかに隠した記憶を受け継いでて、アポートしたのよ。
      かく乱のために。で、衛視の服は、見つからない場所に処理した。

フアナ  :それか、可能性は低いけど……さりげなく持ってた……。

マリア  :なるほど。

フィーエル:なら、今の犯人は、衛視の人?

レイディア:そういうことになるわね。

G   M:エートからの連絡です。老人と衛視が帰ってきました。
      かなり長い間ごちゃごちゃやってましたからね。

レイディア:壷持って帰りなさい。謝礼は後でいいわ。

研究者  :いいんですか?

フアナ  :……渡さなくても……ずっと探知されるし……。

研究者  :ありがとうございます。

レイディア:条件があるわ。とりあえず2号室についてきなさい。

G   M:全員で、ひとまず2号室に移ります。

レイディア:紙とペン渡すから、私が今から言う言葉を書いて。

研究者  :それで壷が帰ってくるのなら、お安い御用です。

G   M:研究者はレイディアの言う通りの手紙を残します。
      そして、大型の背負い袋に壷を入れ、魔法で消えました。
      そのままギルドに直行することでしょう。
      そして、効果時間が終了し、レイディアのセンス・ライは切れました。

レイディア:かけなおす必要はないわ。






老人と衛視は、揃って1号室へ。
壷が無いと騒ぎ始めたところに、今駆けつけた風を装って、
レイディアたちが2号室から現れます。
予めフィーエルの唱えていたセンス・マジックにより、
魔神(衛視)がセンス・ライを使っていないことを確認。
尋問されるも、のらりくらりとかわします。
業を煮やした衛視は一度1階に下り、こっそりセンス・ライを使ってから再び現れました。






フィーエル:お仕事、お疲れ様。

レイディア:(その発言は、センス・ライを使ってきたってことね。)

衛視   :なくなった壷のことだが、お前らが関わってるんだろ!?

フアナ  :……現在の正確な所在については……わからない。

G   M:研究者はまだ学院に着いてもいませんし、セーフです。
      壷は移動していますから、正確な所在はわかりませんね。

衛視   :誰が盗ったんだ!?

フアナ  :4号室の盗賊?

G   M:確かにそうですね。

衛視   :あいつは死んでるだろ? 仲間が死体を確認している。

老人   :これで、壷を返せなくなりましたじゃ。

衛視   :お前か!? お前がどこかにやったのか!?

老人   :違いますじゃ。

衛視   :なら、お前らだろ!?

レイディア:そんなものに触った覚えはないわね。

G   M:確かに、鑑定無しで吐かせたので、触ってはいませんね。

衛視   :言い方を変える。この部屋から壷を移動させた者がいるのか。

レイディア:いるかもしれないっすね。

衛視   :知っているのか知らないのかを聞いているんだ!

フアナ  :……知ったことじゃない……。

衛視   :壷について、知っていることを全て話せっ!

フアナ  :……義務は……ない。

レイディア:ここに、持ち出した犯人が残した手紙があります。

衛視   :貸せっ!

G   M:レイディアが研究者に書かせた手紙を、衛視が乱暴に奪い取ります。

フアナ  :……手に持って読んでたら手が止まるから……手を観察する。

G   M:シーフ技能の記憶術で判定を。

フアナ  :(ころころ)……17。

G   M:高いですね。爪の形や手のシワが、死体の手と、完全に一致します。

フアナ  :……これで……100%クロ……。

G   M:手紙には、こう書かれています。
      『午後9時50分に、全てがわかる。それ以前に動けば、望みは果たせない。』

衛視   :ここに書かれていることは本当か!?

フアナ  :……持ち出した犯人に聞いたら、わかる……。

衛視   :くっ……なら、そこの男を容疑者として連行する。

G   M:衛視の視線の先には、フィーエルが。

レイディア:彼は壷を持ち出していませんけど?

衛視   :殺人事件の容疑者として、だ。

レイディア:お断りします。ていうか、9時50分より前に動いたらまずいんじゃ?

衛視   :癪に障る奴らだ。なら、その時間に来てやろう!

G   M:衛視は、不機嫌な態度をあらわにしながら帰っていきます。






レイディア:興味の対象が、犯人から壷に移ってることない?

マリア  :計算外じゃのう。

フアナ  :……盗賊の……壷への執着の影響が残ってる……?

レイディア:それか、元々壷が気になってたかね。






時間通りに夕食を終え、9時30分には衛視が到着します。
衛視の部下2名も一緒です。なお、宿の主人が、事件の真相を公表するとして、
1号室の老人、2号室の少女、依頼人、衛視とその部下を食堂に集めました。
もちろん、財務大臣の護衛官2名の姿もあります。なお、レイディアは既に
マリアの精神力でセンス・ライを唱えています。そして、9時50分になりました。





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