二月の護衛








G   M:そんなこんなで、前の事件から2週間が経過します。
      生活費を減らしておいてください。

レイディア:あー。臨時収入が入ったから、ちょっといいお酒飲んじゃった〜♪

ディース :て、てめえ、俺の金で……。

レイディア:ごちそうさまー。次もよろしく♪

トゥエリ :聞くのが怖い気もしますが……いくらのお酒デスか?

レイディア:あっはっはっはっ。さ・ん・け・た(はぁと)

ディース :うわ。駄目人間の見本がいる。

フアナ  :……黙れ……だめ人間の、養分……。

ディース :言うなーっ! それは言うなーっ!

フアナ  :……みつぐ君……。

カトレア :んー。あぶく銭は儚く享楽に消える運命にありますからねー。

トゥエリ :神官様、放っておいていいんですカ?

カトレア :金は天下の回り物、といいますし。

フィーエル:あう。回し者。

レイディア:回り物だってば。

G   M:しかし、その回り物が回ってこないわけなんですが。

フアナ  :……わたしたち……有名になりすぎ……逆に、仕事がこないかも。

レイディア:そうね。高いからね。

ディース :まずは借金を返さねーと。

マリア  :やーい。甲斐性なしー!

カトレア :僕も甲斐性なしですか。

マリア  :宵越しの銭を持たぬところが、男らしいぞ。

ディース :差別だろっ!

G   M:さて、冒険者の店にお客さんです。
      レイディア、フアナ、トゥエリ、カトレア、ディース、フィーエル、マリア、
      全員名指しで相談室に呼び出されます。
      相手は太った商人風の男ですね。常に柔和な表情です。

ルーシュン:どうもはじめまして。わたくし、行商人のルーシュンと申します。

マリア  :金づるが来たのう。

レイディア:……マリア……黙ってて。そういえば、ラヴェルナ様の名前に似てるわね。

フアナ  :……出身は?

ルーシュン:東方の小さな村ですが?

レイディア:無関係か。なんでもないっす。

ルーシュン:ファンの街に立ち寄ったところ、皆様の武勇伝をお聞きしまして、
      ぜひ皆様に道中の護衛をお願いしたいと存じまして、お願いに上がりました。

フアナ  :……武勇伝……武勇伝……。

ディース :護衛か。初めてじゃね?

マリア  :したことがないゆえ、ようわからぬ。

ルーシュン:大丈夫でございます。
      隊商の安全を確保していただくだけの簡単なお仕事ですので。

フアナ  :……どこまで?

ルーシュン:ぜひぜひオランまでお願いしたいのですが。

ディース :オランーんんん!?

レイディア:オランっすか……。

フィーエル:あうー。遠すぎる。

トゥエリ :歩きで最短2ヶ月、デスね。

レイディア:帰るまでにはテレポート覚えてそうだけど……オランはちょっと。

ルーシュン:もちろん、それなりの報酬はご用意させて頂きますので、
      どうかいま少しお時間を下さいませ。

ディース :ちなみに、ギャラ何桁?

ルーシュン:5、でございます。

ディース :全員で? 1人で?

ルーシュン:1人あたり、でございます。合計すると、桁が1つ増えます。

フィーエル:???

レイディア:1人で約1万4286ガメル以上ってことよ。あ、続きお願いします。

ルーシュン:ありがとうございます。

フアナ  :……質問1……どうして、わたしたちみたいな高レベルを選ぶのか。

ディース :あ、言われてみりゃそうだよなー。

トゥエリ :ハリボテの護衛がいるだけでも、襲われる確率が激減しますからネ。

レイディア:それは私も聞こうと思ってたところよ。

フアナ  :……質問2……どうして、途中で雇うのか。

ルーシュン:もっともなご質問でございます。それら双方に対するお答えになりますが、
      近頃東方で物騒な事件が目立つようでして。

ディース :うん? 具体的には?

ルーシュン:はい。村が丸ごと野盗にやられて、
      そこにいた行商人の一行が犠牲になったりといったものです。
      無論、護衛はつけていたのでしょうけど、
      1人も生き残りがいないほどの周到さとなると、
      わたくしどもも危機感を抱きまして。

カトレア :(笑顔で)んー。興味深いですねー。

トゥエリ :つまり、危険が想定されている、と。

ルーシュン:それに、出発地で護衛を雇うとなりますと、
      まずは確かな情報を得ることから始めなければならないものですから、
      時間が余計にかかってしまいますし。
      最悪、強力な護衛がそもそも存在しないということもありますから。

トゥエリ :確かに、ホームが辺境という可能性もありますよネ。

レイディア:まあ、合理的っすね。

ルーシュン:その点、皆さんは竜にすら匹敵するといわれる上位魔神を倒されましたし、
      その前には森巨人を2体も倒されています。
      実力と信頼で選ばせていただくならば、皆さんの他にはいらっしゃいません。

レイディア:さすが、情報通でいらっしゃいますね。

ルーシュン:現代の商売は情報戦ですから。隊商を危険にさらすわけにはいけませんし。

トゥエリ :今は街にいらっしゃるわけデスか?

ルーシュン:少々規模が大きいですので、数台の馬車と少数の幹部以外は、
      外で寝泊りしています。
      オーファンは冒険者の方も多く、治安のいい国ですし。

レイディア:そ、それはでかいっすね……。

フィーエル:あう。ママの、若い頃みたい。

ルーシュン:今後の進路は、ファンから、ライナス、ファンドリア、ロマール、
      ザイン、エレミア、オランという予定です。

レイディア:それは……マジで丸2ヶ月っすね……。

フアナ  :……報酬は?

ルーシュン:危険手当込みで、お1人あたり4万9800ガメルでいかがでしょう?

フアナ  :……5万+拘束期間中の生活費。

レイディア:+酒代でいかがでしょう?

ルーシュン:お上手ですね。わかりました。

レイディア:行く人? 私は行く。

フアナ  :……行く。

カトレア :是が非でも。

ディース :お、珍しくやる気だな。俺も行くぜ。

トゥエリ :仕方ないデスね。

フィーエル:あう。行く。

レイディア:マリアは大丈夫?

マリア  :金などどうでもよいが……。

レイディア:お留守番する?

マリア  :ここで置いていかれるとまずいのう。行くぞ。

レイディア:なら、全員参加ね。

ルーシュン:よろしくお願いします。

レイディア:(営業スマイルで)こちらこそ。






G   M:出発は翌日とのこと。現金で支払われた1万ガメルの前金を手に、
      レイディアとフアナはディケイのところに行き、
      3点以下の魔晶石を買い占めます。

レイディア:備えあれば憂いなしね。

フィーエル:あう。そなえあれば、うれしいな。

レイディア:うれいなし、よ!

G   M:隊商の規模が大きいので、護衛を分散する必要があります。
      皆さんは1〜2人で山賊団1個ほど軽く潰せる強さなので、
      そう悩むこともないですが。
      ちなみに、元から付いていた護衛も3人ほどいます。
      全員5レベルのファイターで、低いですがレンジャー技能もあります。

フアナ  :……豪勢……。

レイディア:マリアは私の言うことしか聞かないから、私と。
      女の子1人ってのもアレだから、フアナも一緒に。
      レンジャー技能持ちのカトレアとトゥエリを分けて、
      丈夫なディースがカトレアと、フィーエルがトゥエリと。異存ない?

ディース :ねーけど、丈夫なのとプリーストって、組み合わせおかしくね?

フアナ  :……フォース・イクスプロージョン……。

ディース :するなよ! 絶対するなよ!

フアナ  :……つまり、やれと……。

ディース :んなわけねぇだろっ!

G   M:翌日、ファンの街を出、エールの街道を6日で通過し、
      ラムリアースの王都ライナスに入ります。

トゥエリ :ランダム・エンカウンターすらなしデスか。

G   M:もはや街道最強のワイバーンすら弱すぎて、時間がもったいないので。

レイディア:うーん。ラムリアースの地酒もなかなかね。

ディース :お前、酒目当てで請けただろ?

レイディア:何のこと? ←白々しい

G   M:道中、何かしたいことがある人は?

レイディア:仕事中だから、毎日寝る前に飲むわ。

マリア  :我が起こしたら1回で起きるのだぞ。起きねば……。

レイディア:起きるから!!

フィーエル:ルーシュンさんに、商売のこと、教えてもらう。

トゥエリ :なら、それを補佐しましょうかネ。

カトレア :隙を見て、ルーシュンさんに全滅した村のことを聞きましょうか。

ディース :女の子に声を。

G   M:妙齢の娘はいませんよ。

ディース :残念だな。

G   M:では、ライナスを出発してから、いにしえの街道を通り、7日。
      ファンドリアの街に到着しますね。

フアナ  :……ダークエルフが……いる街……。

トゥエリ :それに、ファラリス信仰が認められてるんデスよね。

カトレア :んー。邪悪は滅しなければなりませんね。

G   M:ルーシュンは、いつも先触れとして丁稚を送り込みます。
      そこで、宿の手配などをさせるわけですが、
      彼が好む中程度の値段で質がいい宿に、空きがあまりありませんでした。
      結局、その宿は1部屋分しか取れず、
      依頼人1人と、皆さんで分割して使用することになります。

ルーシュン:すみません。雨の影響で使い走りが遅くなりまして。さあ、行きましょうか。

G   M:幹部の商人に案内され、皆さんは宿に向かいます。
      なお、ルーシュン以外の幹部は別の、やや高い宿に泊まるようですね。

ディース :部下のが高い宿なのか?

レイディア:10ガメルの食事と、100ガメルの食事、自分で払うならどっち?

フィーエル:あう。100ガメル。

マリア  :……こやつは気にするな。

ディース :なるほど。そういうことか。

G   M:かくして、皆さんは宿に向かいます。





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