ミノタウロスに聞いてみろ♪
G M:さて、1週間と少し経ちましたが、いい仕事がありませんね。
マリア :レイディア、暇じゃー。
レイディア:時間のあるうちにお勉強するのよ。
ディース :まずお前がやれよ。
レイディア:私はかわいいからいいのよ。
トゥエリ :どういう理屈デスか……。
レイディア:いやー。ローディスたちと一緒に飲んでたら、男にモテモテでさー。
フアナ :……本当?(にやり)
レイディア:ほ、本当だってば!
ディース :まあ、ファンクラブがあるくらいだしな。
レイディア:その話はもういいわ。
ディース :あれ? 知ってんの?
フィーエル:レイブンさん、男は、度胸。女は、勉強。
レイディア:私はレイディアだ。あと、なんか違うし。
フィーエル:あうー。
ディース :何かこう、胸躍るような冒険はねーのかよ。遺跡とかゲートとか。
トゥエリ :そうそう都合良くはないデスよ。
マリア :父上の研究所にもゲートはあるがのう。
フアナ :……興味深いかも。
マリア :父上に事故があったときのために、
我の方から父上の研究所に行く方法を教えられておる。
ただ、我は最初のゲートの位置すら聞いておらぬが。
カトレア :その最初のゲートを見つけるのに、何年かかるでしょうかねー。
フィーエル:あう。ゲート。
レイディア:ゲートよ! 牛の洞窟で見たでしょ?
フィーエル:知ってるけど。
ディース :牛のことなら、牛殺しの俺様に何でも聞いてくれ。
マリア :前に言っておったミノタウロスのことであるな。して、ゲートとは?
フアナ :……まさか……。
レイディア:その牛が、元々ゲートを守ってたみたいなのよ。
マリア :……初耳であるな。その遺跡は、近くか? ゲートは生きておったか?
ディース :ここから4日の村の近くだな。ゲートは無傷だけど、作動してなかったぞ。
マリア :……レイディア、部屋に移らぬか? 大事な話がある。
レイディア:わかったわ。
一行は、宿のディースの部屋に移ります。
マリア :そのゲート……ことによると、我が使えるかもしれぬのだ。
レイディア:どういうこと?
マリア :父上は、知り合いの魔術師に頼んで、
ゲートを不完全なように偽装するという手をよく使うのじゃ。
父上1人ではできぬらしいが。
レイディア:……なるほど。見つけても、調べるだけでも勇気がいるからね。
トゥエリ :何かの拍子に、どこに飛ばされるかわかりませんからネ。
フアナ :……それと……今回の件の関係は……?
マリア :そもそも、ミノタウロスとゲートという組み合わせは妙でないか?
レイディア:……言われてみればそうね。
トゥエリ :……精密さが必要な魔法装置と、粗暴な魔獣……確かにそうデスね。
マリア :我は、父上がミノタウロスから作ったゴーレムに、
ゲートの一つを守らせていると聞いたことがある。
ミノタウロスはさほど珍しゅうないゆえ、
話を聞いたときはまさかと思うたが……。
ゲートがあったのなら、先に言わぬか。
レイディア:じゃあ、あれがゴーレムだったって言うの!?
マリア :誰か、解剖するか、生命の精霊力を感知したか?
フアナ :……明らかな生命体相手には、そんなことやらない……。
ディース :首は取ったけどな。普通だったぜ。
マリア :首は弱いからのう。後から重要な機関は備え付けぬわ。
フィーエル:あう。あのミノタウロス、ごはん食べてない。
レイディア:何でよ? 羊の残骸があったじゃない。
フィーエル:ミノに、血、付いてなかった。口にも。近くに泉、ないのに。
フアナ :!
レイディア:……そうだったわね。確かに、その通りだわ。
ディース :そんな細かいことは気にしてねーな。
トゥエリ :私も気付かなかったデスね。オルフも、気付いたら言ったと思いますし。
カトレア :つまり、フィーエルさんだけが気付いていたわけですかー。
レイディア:あの羊の残骸は、ゴブリン以外は手をつけてないということね。
フィーエル:マリアが、正しい可能性が、高い。
マリア :父上のミノタウロスは初期型じゃが、天才ゆえ、
オリジナルとほぼ同じ動きをさせることはたやすい。
じゃが、初期型ゆえ、動作に何らかの欠陥がある可能性が高い。
後期型のフレッシュゴーレムとて、細かい欠陥はあるしのう。
フィーエル:こっちが囲んでるのに、なぎ払い、使ってこなかった。締めつけも。
締めつけは、ゴブリンが1匹、食らってたけど。
マリア :これで可能性がより高まったのう。
ゲートがあるということは、少なくとも、どこかには通じておる筈じゃ。
トゥエリ :しかし、太守の本格的な研究所というのは、非常に危険なのではないデスか?
マリア :我が知る中期の最高傑作が、ミスリルゴーレム(注:13レベル)じゃ。
G M:ちなみに、ミスリルゴーレムの強さは、マリアが教えてくれます。
レイディア:それは冗談じゃないわね……って、それで中期!?
フアナ :……アイアンで……十分危ない……。
マリア :オーソドックスなゴーレムなど、天才と呼ばれた父上にはたやすすぎるわ。
トゥエリ :ずいぶん豪勢な話になってきましたネ。
カトレア :ミスリルゴーレムって、名前からして強そうですよねー。
マリア :父上は何回か研究所を移転させておるからのう。
後期の研究所であれば、ミスリルゴーレムがおる確率は低いと思うが。
レイディア:で、中期でミスリルゴーレム作ってた人の、後期の研究所のガーディアンは?
マリア :我が鏡越しに見たのは、入り口にアイアン・ゴーレムがおったのう。
レイディア:……さあ、仕事探さないとね。
ディース :早速へたれたか。
フィーエル:レイフォンさん、正しい。
レイディア:私はレイディアだ。
フアナ :……他に何かないの? ……鍵とか。
マリア :別荘地につながっているゲートもあるらしいがのう。
フアナ :……別荘地……?
マリア :ファーランドのことじゃ。
広大な大地がエリアに区切られ、貴族たちの自治区になっておった。
フアナ :……初耳。
マリア :今では未踏の地であるらしいのう。
レイディア:そっちに行ければ、お宝ザクザクなわけね。
マリア :レックスですら滅びた時代じゃ。今どうなっておるかの保証はできぬがな。
ディース :マリアは行ったことがあるのか?
マリア :……行ったことがあることになっておる。
レイディア:その話はそこまでにしましょう。まずは情報の整理よ。
マリアは偽装されたゲートを開くことができるのね?
マリア :父上が作ったものであれば、偽装だけを解くことができるぞ。
レイディア:で、ゲートはマリアのお父さんが生前立ち寄ったどこかに通じている。
マリア :そういうことになるのう。
トゥエリ :私の槍は、1本9万以上の品でしたからネ。
レイディア:今は仕事が無い割に、お金は残ってる。行ってみて損はないと思うわ。
トゥエリ :軍資金があるうちにデスね。
マリア :我は死ぬまでレイディアと一緒じゃ。
フィーエル:あう。レイエスさん、ついてく。
レイディア:私はレイディアだ。
フアナ :……退屈は……エルフすら殺す……。
ディース :俺は前衛だからな。
トゥエリ :多数決には従いますヨ。
カトレア :んー。正直言って、僕にはメリットがないですねー。
レイディア:気持ちはわかるけど、神官無しは勘弁願いたいわね。
カトレア :遺跡では信者が増えませんからねー。
フアナ :……お金が手に入るかも……。
カトレア :金銭欲はあまりないです。
フアナ :……変わった……神官……。
トゥエリ :それは変わってるんデスか?
レイディア:遺跡に亡霊がいるというのはよくある話よ。
生者に恨みを抱いていたり、自分が死んでることに気付いてなかったり。
神官として、解放してあげない?
カトレア :わかりました。行きましょう。
ディース :おっ、さっすが。殊勝な神官様だな。
一行は、片道4日の道のりを辿り、ミノタウロスを倒した小さな村へ。
夜は住民たちの歓待を受け、翌朝に首塚に案内されます。
フアナ :……うう……朝は、弱い……。
ディース :いやー、女の子にモテまくりで困るぜ。
フアナ :……『あの頃は』……主役だったから。
ディース :今も主役だろ! 主役……だよな?
マリア :ずっとこの村におれば、最強であったのにのう。
フアナ :……ゆっくりしていってね……。
レイディア:(笑顔で)いっそ、骨を埋めてみない?
ディース :いや、まだ早いだろ。……最近レイディア冷たくね?
トゥエリ :自分の胸に手を当てて考えてくださいヨ。
ディース :お前、知ってるならとっとと教えろよ。
カトレア :何かあったんですか?
マリア :ディースがレイディアの風呂を覗いたのじゃ。
レイディア:言うなって!
カトレア :復讐したいとは思いませんか。
レイディア:ライトニング食らわせたけど、ぴんぴんしてるのよ。
カトレア :覗きでライトニング……下手したら死にますよ。んー。素質ありますね。
レイディア:な、何よ?
カトレア :何でもないです。 ←笑顔
村長 :着きました。
レイディア:トゥエリ。
トゥエリ :分かりましたヨ。掘ります。
フアナ :……えんがちょ……鼻を、つまむ……。
G M:ミノタウロスの首を掘り出しました。首はまったく腐っていません。
村長 :こ、これは……!?
マリア :当たりじゃな。
フアナ :……形質保持の、魔法……。
レイディア:マリアの言う通りだったみたいね……。
フアナ :……おそらく、命令は、待機と侵入者排除……。
侵入者を追いかけて壊滅させ、帰り道を見失った……。
マリア :……哀れな奴じゃのう……。
レイディア:マリアは悲しまなくていいのよ。
村長 :い、一体どういうことですかな?
レイディア:ミノタウロスの正体は、生物に見せかけた魔法生物でした。
今からその製造所を探索してきます。
村に害は及びませんが、村の人には、例の洞窟に近付かせないで下さい。
あと、魔法生物の件はご内密に。
村長 :……わかりました。どうかお気をつけて。
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