プリンセスプライド








G   M:ところ変わって、冒険者の店。

マリア以外:かんぱーい!

マリア  :……蛮族は酒も静かに飲めぬのか。

ディース :なんだよ、ノリわりーなー。

レイディア:そっか。知らないんだよね……。

マリア  :……ふん。我は蛮族の下品な習俗になぞ、興味はない。

レイディア:さっきグラス持たせたでしょ。さっきみたいに、みんなでぶつけるの。

マリア  :なぜ我が蛮族の真似事をせねばならぬのじゃ。

レイディア:冒険者は仲間同士でやるのよ。マリアも、一緒にやりましょ?

マリア  :うぬぅ……我も仲間なのか?

レイディア:同じ死線をくぐり抜けたんだから、仲間じゃなかったら何なのよ。

マリア  :ぬぅ……。

トゥエリ :(レイディアさんの詭弁も、こういうときは役に立ちますね。)

フアナ  :……もはや……戦後ではない……。

マリア  :じゃが、我は物を飲むことができぬ……。

レイディア:え!!? そうなの!?

G   M:仕様書によると、水分は問題なく採れるようです。
      おそらく、飲み方の学習がまだだったのでしょう。

ディース :それが噂のきれいな水ってやつか……。

レイディア:……ちょっとずつ慣れてみる?

マリア  :絶対に嫌じゃ。

レイディア:高貴なお嬢様は、人前で食事しないってこともあるかもね、うん。

オルフ  :なるほど。確かに、それはありえると思います。

マリア  :……?

レイディア:じゃ、何も飲まなくていいから、ここで一緒にいよ。

マリア  :それでよいのか?

レイディア:マリアがやりたいことだけやったんでいいのよ。
      私は今のマリアをスカウトしたんだから。

マリア  :では、我は部屋に帰るぞ。蛮族との馴れ合いは好まぬでな。

レイディア:だめー。ここでみんなとお話するの。

ディース :なんでそうなるんだよ。

マリア  :……嘘つき。レイディアは嘘つきじゃ。

レイディア:私はマリアともっと仲良くなりたいな。マリアは私のこと嫌い?

マリア  :き、嫌いではないが……。

レイディア:なら、みんなで一緒にお話しましょ。私、寂しがりやさんだし。

ディース :ついでに、友達いねーしな。

レイディア:いるわよっ!!

マリア  :……仕方ないのう。ここはぬしらの流儀に合わせようぞ。

レイディア:じゃ、あらためて、乾杯する?

マリア  :うむ!

フィーエル:あう。グラスの持ち方、こう。

マリア  :……これを誰かの頭に振り下ろしてはならぬのか?

ディース :こっち見ながら何言ってんだよ!?

レイディア:だめ。でも、セクハラされたら殴っていいわ。

トゥエリ :ディースさんは、殴られても死にませんからネ。

ディース :顔面に2発入ったら死ぬって!

マリア  :して、セクハラとはなんじゃ?

レイディア:エッチなこと全部。

トゥエリ :微妙に定義が違うような気もしますガ。

フアナ  :……男は……狼……。

フィーエル:あうー。男は、人間。

オルフ  :例えの話ですよ。

マリア  :ふむ。では、エルフの胸を眺めていた男は殴ってよいのじゃな。

ディース :違うって! 俺のグラス眺めてただけだって!

フアナ  :……見るのは……ロハ……。

トゥエリ :ディースさんがやったなんて、誰も言ってないデスよ。

レイディア:あんた、そんなことしてたのね……。

ディース :でっかいおっぱいあったら見るだろ、普通!

フィーエル:あう!

レイディア:力説してんじゃねぇよ! セクハラだろ!

トゥエリ :しかも、あっさり前言を翻しましたネ。

フアナ  :……。

マリア  :うむ。こやつの股の間を殴ればいいのじゃな。

ディース :死ぬわ! いろんな意味で!

フアナ  :……やめてあげて……わたしは見られても、平気……。

レイディア:仕方ないわね。今回は許してあげるわ。

フアナ  :レイディアがそう言うのなら、やめてやろうぞ。

ディース :助かった。これで夢のエルフ乳揺れライフを満喫できるぜ。

トゥエリ :ディースさん……。

フアナ  :……。

レイディア:……死なない程度にね。

マリア  :うむ。

オルフ  :おっと。暴力は感心しませんね。

レイディア:マリア、ストップ!

マリア  :ぬぅ。(……この男、レイディアより強いのか?)

ディース :助かった。恩に着るぜ、おっさん。

オルフ  :お、おっさん……。(ま、またしても……。)

トゥエリ :な、なんてことを。

フィーエル:あうー。







外野の人A:ほら、あいつら牛殺しの……。

外野の人B:ああ、牛殺しだな。いま常連で知らない奴はいないが……。

外野の人A:さっきからあいつらが使ってるの、何語だ?

外野の人B:下位古代語だ。全員魔法使いか賢者っていうのは本当らしいな。

外野の人A:でも、なんでこんな店に子供がいるんだよ。

外野の人B:ああ、確かに、子供らしきものが1人増えてるよな。

外野の人A:確かな筋によると、わけありの貴族の娘だそうだぜ。

外野の人B:でも、あれ人間じゃないぞ。よーっく見たら、温度の分布がちょっとおかしい。

外野の人A:……アンデッドか?

外野の人B:ところが、負の生命の精霊の気配もない。

外野の人A:幻覚かゴーレムか?

外野の人B:さっきグラス持ってたし、ゴーレムはあんな表情豊かじゃないだろ。

外野の人A:じゃあ何者なんだよ。あそこの女にだけ懐いてるし。

外野の人B:それに、さっき、あの子供から精神の精霊の気配を感じたんだ。

外野の人A:一体何者だよ……。見間違いで、本当は人間なんじゃないのか?

外野の人B:さあ……とにかく奴らは得体が知れないな。気をつけよう。

外野の人A:ああ、いずれ大物になるかもな……。






かくして、冒険者の店の夜はふけていくのでした。






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