傀儡の戒めを君は








イリュージョナリー・ビーストとの戦いで、レイディアだけ無傷で生命力15、
ダーゼンが5、それ以外が全員1という、すさまじい満身創痍状態ができあがりました。







レイディア:いったん帰らないっすか?

トゥエリ :その残り生命力でフレッシュゴーレムと殴り合ったら死にますネ。

フアナ  :(投げたナイフを回収しながら)……それだと……また出てくる可能性が……。

ディース :嫌だ。それだけは嫌だー。武器は当たらねーし魔法は効かねーし。

オルフ  :ディース君にも、怖いものがあるんですね。

ディース :あいつは魔法戦士の天敵だ。二度と戦わねーぞ!

ダーゼン :ワシは行くぞ!

フアナ  :……おじいちゃん……。

ダーゼン :ワシが1人で前に立つ。ワシが倒れたら、逃げてもらって構わん。

トゥエリ :しかし、その体では、死にに行くようなもんデスよ。

フアナ  :……さっき……扉の前に行った瞬間出てきたよね……。

トゥエリ :ということは、ずっとこの扉の前にいれば、おそらくは……。

レイディア:さっきの寝室、ほこり積もってたっすか?

G   M:少なくともベッドには積もっていませんでした。

フアナ  :……ということは……この部屋を出て寝室まで行くのかも……。

オルフ  :そもそも、ゴーレムに睡眠は必要ありませんよ。

トゥエリ :しかし、ギアスがありますからネ。

レイディア:無理やりに娘の生活様式をなぞらされている、と。

ディース :ああ……俺は役に立たなかった……すまねぇ……。

トゥエリ :ディースさん、気にしすぎデスよ。

ダーゼン :ワシは1人でも行くぞ。

フアナ  :……おじいちゃん……待って……。

レイディア:無策で行くのはまずいっす。この際、この場で野営してオルフと
      私とフアナの精神力だけでも回復しておかないと……。

フアナ  :夜になって鉢合わせるの覚悟の上でね。

G   M:その時、がちゃり、と大きな扉が開いて、子供が出てきますね。

フアナ  :!!!

レイディア:ぬかったわね。部屋の前で戦闘して雑談してりゃそのうち聞こえるわ。

マリアンヌ:なにやら部屋の前でうるさいのぅ。本も読めぬわ。

レイディア:あははーっ。すみません。

フアナ  :オーラは?

G   M:負のオーラを感じないので、アンデッドではありません。
      周囲にある自分達の生命の精霊が邪魔になって、
      生命の精霊の感知は困難です。(『Q&A』参照)
      また、人間と同じように体温を持っているようです。
      したがって、オーラをもってゴーレムかどうかの断定は不能ですね。
      外見自体は、額に水晶がくっついた人間の子供そのものです。
      ただ、服に生活感がないというか、経年劣化で既にボロボロですね。

マリアンヌ:我は太守ハルシュタットが第一子、マリアンヌである。
      我をマリアンヌと知っての狼藉か?

レイディア:いえいえ。そのようなことは全然ないっすよ。

マリアンヌ:(老騎士を見ながら)おお、ぬしは! 我を助けに来てくれたのか?

ダーゼン :マリアンヌ様。お会いできて光栄でございます。騎士のダーゼンと申します。

マリアンヌ:父上がここを離れて以来退屈しておってのう。声こそ聞こえなんだが、
      そなたとの話は楽しかったぞ。連れもボロボロであるな。入って休むか?

フアナ  :(このまま戦ったら確実に死者が出る……。)お願い……。

ダーゼン :その前に。この日記をご覧ください。姫様の日記でございます。

マリアンヌ:どれ……我の署名があるな。覚えはないが、我の日記であろう。

ダーゼン :ひとつだけ、お尋ねしたいことが。

マリアンヌ:我は太守の娘にしてはなかなかに心が広いぞ。なんなりと聞くがよい。

フアナ  :口をふさぐ! 敏捷度はこっちのが速い!

ダーゼン :かわすぞ。

フアナ  :(ころころ)シーフ技能使って、9。

ダーゼン :(ころころ)出目は振るわなんだが、それでも11じゃ。

G   M:フアナはかわされました。

フィーエル:???

ダーゼン :姫様が死体から作られたフレッシュゴーレムであるという話は、
      本当ですか!?

マリアンヌ:……だ、誰が死体だと!? ダーゼンとやら、いくらぬしでも許さぬぞ!!

フアナ  :人間だったら、1人で生きてられない……おじいちゃん……諦めて。

ダーゼン :……この反応は、書いてあった通りではないか……!

レイディア:とりあえず、この場は双方とも抑えてほしいっす。

マリアンヌ:ええい、無礼にも程がある。成敗してくれるわ!

ダーゼン :……死体の分際でワシを惑わしおって……お前など破壊してやるわ!

G   M:では、フレッシュゴーレムのマリアンヌとの戦闘に突入します。
      1ラウンド目。敵は、ランダムで決めた標的を拳で殴ります。

レイディア:瀕死だったら一撃で死ぬから、下がって。
      前衛は私とダーゼンさんで。精神力残ってるメンバーで、
      接敵前にエネルギー・ボルト撃てるのは……いないか。
      フィーエルにダーゼンさんへのファイア・ウェポンの指示を。共通語で。

トゥエリ :(共通語でって……最悪の場合は命乞いする気ですね……。)

フアナ  :……下がりながら、ナイフ投げる。

G   M:マリアンヌは敏捷度18なので、まずフアナから。

フアナ  :ナイフ投げ。(ころころ)12でハズレ。

G   M:マリアンヌの攻撃標的は(ころころ)レイディア。

レイディア:(ころころ)避けられるわけない。元から体で受ける気よ。
      (ころころ)7点止めて8点通った。残り7点。次で倒れるわね。

オルフ  :することがないので静観です。

トゥエリ :後衛で応急手当ができるのは私だけデスから、様子を見ますヨ。

ダーゼン :化け物に攻撃じゃ。(ころころ)16。

G   M:当たりです。ダメージください。

ダーゼン :(ころころ)出目11でクリティカルじゃ。(ころころ)21点!

G   M:8点止めて、13点通りました。一気に残り12点です。
      明らかに、生物を斬った感触ではありません。

ダーゼン :この手応え……やはり人間ではないなっ!!

フィーエル:ダーゼンさんに、ファイア・ウェポン!(ころころ)あれ、1ゾロ?

レイディア:この肝心なときに何やってんの馬鹿ー!?

G   M:生涯最初のダメージなので、ちょっとふらついてます。

マリアンヌ:くっ……このようなところで壊されるわけには……。

フアナ  :こ、壊される!!?

レイディア:もしかして、全部わかってる!? この子を説得するわ!
      あんた、自分がマリアンヌじゃないってわかってるんでしょ!?

マリアンヌ:くっ……。

G   M:2ラウンド目。(ころころ)攻撃目標はダーゼンに決定です。

ダーゼン :(ころころ)避け損ねた。(ころころ)4点通ったの。残り1点じゃ。

G   M:これで、レイディア以外の6人が生命力1ですね。

トゥエリ :状況がわからないので、ダーゼンさんにファイア・ウェポンを。
      (ころころ)かかりましたヨ。

レイディア:空気読め馬鹿!!

ダーゼン :感謝する! (ころころ)当たりじゃ。(ころころ)ダメージ15。

G   M:7点通りました。残り5点です。

フィーエル:ダーゼンさん、攻撃。手加減つき。(ころころ)合計10。

ダーゼン :なっ、何をする!? 13で回避じゃ。

レイディア:よくやった、フィーエル!

マリアンヌ:(苦痛に耐えながら)我とて……全て……わかっておるのだ。

G   M:マリアンヌは涙を流します。そして、3ラウンド目です。

フアナ  :……ゴーレムが……涙を!?

マリアンヌ:……ぬしがどう言おうと、我は…………受け入れるもなにも……。

レイディア:誰か、1ラウンドでいいから、ダーゼンさん押さえて!
      私、敏捷度12しかないから! 

フアナ  :素手で、おじいちゃんを、攻撃。(ころころ)11しかない。

ダーゼン :(ころころ)15で回避じゃ。お主ら、いったいどうしたというのじゃ!?

オルフ  :平目でダーゼンさんを攻撃。(ころころ)歯が立ちませんね。

ダーゼン :(ころころ)素人の攻撃など当たるものか!

ディース :ここで俺のメイスの一撃が爺さんに!(ころころ)がんばって12。

ダーゼン :(ころころ)出目3……当たりじゃ……。

ディース :もちろん手加減はするぜ。(ころころ)出目11で、クリティカルなし。

ダーゼン :(ころころ)レベルが高いから鎧で止まったが……お主、手加減したの。

G   M:手加減さえしてなきゃ、クリティカルで倒れてますね。
      相手も歴戦の勇士ですので、そのくらいはわかりますが。

ディース :ちくしょう……惜しかったぜ。

トゥエリ :手加減でダーゼンさんを攻撃デス。(ころころ)出目10!

ダーゼン :なんの、こちらも出目10!

フアナ  :……お爺ちゃん……強い!

ダーゼン :……攻撃をやめ、手加減などしてくれた小僧をにらみつけよう。

レイディア:間に合った! マリアンヌの前で彼女に背を向けて、かばうわ。

ダーゼン :……何を……ひとまず様子見じゃ。

レイディア:マリアンヌ! あんたが助かる方法がひとつだけある!
      私らの仲間になりなさい! この爺さんは私たちが抑える。

マリアンヌ:……我に、殺されたいのか?

レイディア:あんたは500年間もマリアンヌのふりして、誰もいない館で過ごしてきた。
      そんなあんたが壊されるくらいなら、私が死んだ方がマシだ!!

マリアンヌ:……安い同情であるのう。

レイディア:私は人間だ。あんたに同情して何が悪い!?
      それに、あんたも人間だから!!

マリアンヌ:(苦痛に耐えながら)……我が人間、じゃと?

レイディア:古代王国のことは勉強してきた。その技術の結晶であるゴーレムのことも。
      でも、涙を流すゴーレムなんて、私は知らない。だからあんたは人間だ。
      心は絶対に人間。だから、私たちの仲間になれる!!!

マリアンヌ:我が、ぬしらの仲間に?

レイディア:カストゥールは500年前に滅びてる。あんたがここにしばられる必要はない。
      今は魔法の時代じゃなくて剣の時代。あんたの拳があれば心強いわ。

マリアンヌ:黙れ……黙れ黙れ黙れッ!

ダーゼン :……それ以上茶番を続けるなら、お主から斬るぞ。
      手加減はしてやるから、お主は死にはせんがの。

レイディア:手加減はするな! 刃で切り裂いて殺せ!
      手加減なんかしたら、追っかけてってぶち殺してやる!!!

ダーゼン :……そうか。なら死ね。

レイディア:(体で受け止めて、剣なんか奪ってやる……。)隙作るから、全力で殴るのよ。

マリアンヌ:……気は確かか?

レイディア:……あんたは生きなさい。

フアナ  :刃物だから手加減できないけど、ナイフで攻撃する。(ころころ)15!

ダーゼン :(ころころ)13じゃ。ツキがないのう。

フアナ  :(ころころ)ダメージは、合計3点……。

ダーゼン :(ころころ)エルフの攻撃なんぞ通らんのう。

フアナ  :レイディア、逃げてぇぇぇ!!!

ダーゼン :逃げられる前にレイディアを攻撃じゃ。手加減なし。(ころころ)16。

レイディア:体で受け止めて、剣を奪おうとしてみる。……後はお願い!!!

ダーゼン :……寸止めしようかの。わしには造作もないことじゃ。

レイディア:…………え?

ダーゼン :口だけではないようじゃの。ワシはそこの小僧に負けた。
      不本意じゃが、この場は譲るとしよう。元々、物はそちらの総取りじゃ。

G   M:ダーゼンは背を向けず、剣を構えたままで後ずさりします。
      そして、そのまま階段を下り、去っていきました。

レイディア:(……助かった?)

ディース :……わりぃ……あんま役に立たなくて申し訳ねーな。

フアナ  :……とりあえず……第一関門は去った……。

トゥエリ :でも、継戦能力がもうないデスよ。

オルフ  :わたくしも、もはや何もできません。

レイディア:(マリアンヌに向き直って)やっかいなのは片付いたわね。さあ、マリア。

マリアンヌ:我が名を気安く呼ぶでないぞ。

レイディア:あんた誇り高い貴族なのよね。助けてもらっといて、
      何もしないってのはまずいんじゃないの?

マリアンヌ:むぅ。ならば、宝物庫の宝をやろうではないか。

レイディア:いや、私ら遺跡荒らしなんだって。
      ……と、宝物庫で取ってきた宝を見せるわ。
      あれはもう私のだから、くれなくてもいいっすよ。(笑)

マリアンヌ:図々しい奴め。して、我に何を望む?

レイディア:私たちの仲間になって、一緒にいろんなこと、しよう。
      嫌なことや逃げ出したいこともいっぱいあるけど、楽しいよ!

マリアンヌ:……殴られたいのか?

レイディア:私も寂しい思いとか、ちょっとだけど、したことがあるし。
      500年も独りでいる苦しみに比べたら大したことないけどね。
      でも、やっぱり独りきりは辛いと思うんだ。

マリアンヌ:それでも、我はマリアンヌであるし、マリアンヌであらねばならぬ。

レイディア:わかってる。私ら全員魔法使いだよ。

ディース :俺は、冒険の旅に出た姫様のサーガ、知ってるぞ。
      太守の娘が冒険に出ても、別におかしくなんかないって。

トゥエリ :私なんてそこの人に強制的に連れ出されたんデスよ。
      説得があるだけでも、充分いい扱いじゃないですか。

フアナ  :……退屈は人生を殺す……だから、わたしは森を出た……。
      ……それでも退屈して、冒険者になった……。

オルフ  :まさか、ギアスに耐えられるとは……。

フィーエル:僕、いろいろ、教える!

ディース :お前が言うなよ!

レイディア:うちの仲間はこんな感じだしね。

マリアンヌ:我を……マリアンヌでいさせてくれるのか?

レイディア:当然よ!

フアナ  :……もちの……ろんよ……。

ディース :あったりまえだぜ!

トゥエリ :右に同じく。

オルフ  :仕方ありませんねぇ。

フィーエル:(首を縦に振りながら)うん。

G   M:マリアンヌは、泣きながらレイディアに抱きつきます。

マリアンヌ:……我を退屈させたら……承知せぬぞ!






かくして、一行は遺跡で思わぬ仲間を得たのでした。





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