鏡の中のオヒメサマ








さて、前回の冒険の報酬は当初の契約通り負担してもらった食費を除いては、
全体で800ガメル。持ち帰ったミノタウロスの斧は、
特別ボーナスの意味も含めておばちゃんが400ガメルで買い取ってくれました。







フィーエル:いい人?

トゥエリ :破格、なんデスかね?

ディース :どうなんだ? 必要筋力30くらいか?

レイディア:ろくに手入れもしてない中古武器だし……買い取ってどうするわけ?

オルフ  :どのみちわたくしたちには使えない代物ですし。
      というよりも、むしろ人間には使えない代物ですね。

フアナ  :(ボソッと)……客寄せになるかも。

フィーエル:???

ほか一同 :それだ!!!

レイディア:やられた!?

オルフ  :そうそう持ち歩けもしませんし、お互い得をしたということで。(笑)

レイディア:でも、そんなことまで瞬時に考えるなんて……。

トゥエリ :フアナは、たまにエルフとは思えないときがありますヨ。

フアナ  :……耳、触ってみる……?

トゥエリ :いえ、結構です。

レイディア:その400ガメルは全体用資金として、私が預かるわ。異議ないわね。
      (トゥエリに分配したら、借金完済されそうだし。)

トゥエリ :異議ないデスよ。

オルフ  :問題はないかと思われます。

G   M:さて、冒険者の店でそんな微笑ましいやりとりをしている皆さんですが、
      前回の冒険から帰還後、一躍有名人になっています。

オルフ  :……と、いいますと?

ディース :ミノタウロス倒したからか?

レイディア:ルーキーなのに、全員生還したから?

フアナ  :……ソーサラーばっかで……目立つから……?

トゥエリ :斧が宣伝になってるっていうのもありますかネ?

フィーエル:ぼくら、逃げなかった。

G   M:まあ、その全部です。店の周辺は、ゴブリン退治に行って
      ミノタウロスを撃退した新米冒険者の話題でもちきりですね。

フアナ  :……恥ずかしながら……帰ってまいりました……。

トゥエリ :死ぬ思いしたのが報われたんデスかね。←死にかけた人

G   M:そして、この1週間、おばちゃんが特別サービスで、皆さんの宿泊料まで
      持ってくれてます。(前回はメインの報酬が低すぎたから、
      そのバランスを取る意味も含めて。)

レイディア:まさか、ルーキーに看板の一角を担わせる気っすか?(汗)

フィーエル:それ、客寄せパンダ? ……たしか、動物学、本、読んだ、記憶が。

レイディア:いや、多分それ別の本だから。

G   M:ベテランは高すぎて一般人はちょっと雇えませんから。
      半分以下の値段で同じ仕事ができる人がいたら、そっちに頼むでしょう?

オルフ  :それは過大評価というものなのですが……。

トゥエリ :危ないデスよ。

G   M:あと、おばちゃんの計略で宿にとどまっているディースの歌も、
      相乗効果で店の人気を呼んでいます。

ディース :宣伝なら任せとけって。……思いついた! 
      今度から、光るダガーじゃなくて、燃えるソードで倒したことにするぜ!
      で、トドメを刺したのはもちろん俺!
      GM、バード技能の歌唱で1週間分稼いどいていい?

トゥエリ :私の聞いた話では、そもそもダガーは光ってなかった筈じゃ……。

G   M:バード1レベルだから、1×1×出目で。
      1週間あったから、14回歌ったとして、2×出目を7回ということで。
      今望まれている歌だから、それぞれの出目に+2していいです。
      他の人も前回の報酬として1人200ガメル足しといてください。

トゥエリ :まだレイディアさんに借金が返せないデスね……。

ディース :(ころころ)×7……1ゾロが1回出たけど、出目の合計が61で、
      122ガメル。結構大きいな。ほんとなら宿代にもならねーけど。

G   M:というわけで、今後しばらくは、皆さんのレベルの割に
      やや報酬が高い仕事が舞い込むかもしれません。
      その分、レベルの割に危険な仕事になるかも
      しれませんので、注意してくださいね。

レイディア:それは、困難な依頼が公式設定化したってことっすね?

トゥエリ :偶然とかでなくデスね。(嘆息)

オルフ  :こういうときこそ気を引き締めなければなりませんね。

レイディア:じゃあ、景気付けにとりあえずもう1杯いっとこっか〜。

トゥエリ :昼間から何杯飲んでるんデスか。

レイディア:あんたは、今までに飲んだ酒の数を覚えてるの?

ディース :ジョジョネタキターッ。

オルフ  :そもそも、お金があまり無いのではないですか?

レイディア:最近、酒代が財布を圧迫しててねー。

ディース :よくわかんねーけど、金額で言うと、どんくらい飲んでんだ?

レイディア:うーん。生活費と同じくらい?

ディース :うわー、それ絶対中毒だって。

トゥエリ :駆け出しには辛すぎる金額デスね。

レイディア:私は酔ってないからいいの!

ディース :ファンが見たら嘆くぞ。

レイディア:そりゃここはファンだけどさー。

トゥエリ :軽く酔ってますネ。

G   M:さて、そういう話をしているうちに、店に1人の老人が入ってきました。
      重い金属鎧を着て、戦士のようないでたちです。皆さん何してますか?

レイディア:話しかけてきてた別の冒険者に「ミノタウロスはさすがの私でも
      苦戦したっすよ〜」って武勇伝を語ってるわ。

オルフ  :奥のテーブルでカード賭博に興じている方々を、うらめしそうに眺めて
      います。いいですねぇ……。わたくしは聖職者なので、できませんが。

ディース :歌ってるに決まってんだろ。ミノタウロスの斧で削られたラージシールドを
      見えやすいとこに置いて。(笑)

トゥエリ :最近講義出てないので、店で魔術書を読んで復習を。

フィーエル:寮、帰って、1日中勉強。

フアナ  :……いつも通り鍵をかちゃかちゃ……かちゃり。(数秒で開いたらしい)

G   M:あ、それはわかりますね。

レイディア:(正気に返って)なにがわかるの?

G   M:老人はカウンターにいたハーフエルフのウエイトレスに何事か告げた後、
      こちらのテーブルに向かってきます。
      この場にはフィーエル以外は全員いるということで。

老人   :はじめまして。我が名はダーゼンという。
      これから皆さんに依頼のお話をしたいので、相談室に来ていただきたい。

レイディア:(営業スマイルで)はじめましてー。よろしくお願いしますー。

ディース :お前、フィーエル呼んで来い。10分以内な。

トゥエリ :(嘆息)仕方ないデスね。

ダーゼン :他にもおられたか。ならば、皆さん揃ってからお話をしたい。

レイディア:おばちゃん、お水2つお願いしまーす!






G   M:そして、15分後。

フィーエル:ごめん、お待たせ。

ディース :5分遅刻か。今度購買で焼きそばパンおごれよ。

トゥエリ :(荒い息で)こ、これでも走りましたって。無茶言わないでくださいヨ。

レイディア:人気メニューの焼きそばパンはレアよ。せいぜいがんばりなさい。

フィーエル:あうー、生?

ディース :フィーエルは息すら切れてねーぞ。お前は気合が足りねー。

フィーエル:あう。ぼく、片道。だから、半分。

フアナ  :……トゥエリは片道を2回分、フィーエルが1回分……平均して……。

フィーエル:あ、あうー?

レイディア:嘘教えてんじゃねえよ! お前も、騙されるな!

フィーエル:わかった。1.2回分だ!

レイディア:しかも計算違うし!

フアナ  :(無言でトゥエリにコップを差し出す。)

トゥエリ :ありがとう。助かりますヨ。

フアナ  :……お疲れ。(元々トゥエリのコップだけど。)

ダーゼン :……。←呆然

フアナ  :……同情するなら……金をくれ……。

レイディア:あんた言ってんのよ!? すみませんっ!

ダーゼン :いや、構わぬよ。同情したわけではないしの。

レイディア:フィーエル、これから依頼主様との直接交渉だからね。

フィーエル:冒険者、基本。大丈夫。

レイディア:よし。じゃあ、みんな行くわよ。







G   M:皆さんはダーゼンとともに相談室に移ります。

ディース :さっき待ってる間に雑談してたけど、引退した騎士なんだよな。

ダーゼン :うむ。

レイディア:で、今回のご依頼はどういったご用件で……?

ダーゼン :その件だが、我が姫君に会わせてほしいのだ。

フアナ  :? ←一瞬でいくつかの可能性を考えたけど、どれも違うっぽい。

レイディア:……ど、どちらのお姫様でしょうか?

ディース :王城関係はパスな。警備かてーし。

トゥエリ :お子さん……いえ、お孫さんデスか?

フアナ  :……それだと……姫君という呼び方は変、みたいな?

ディース :みたいっていうか、変そのものじゃね?

ダーゼン :ふむ、誤解を与える言い方だったかの。

フィーエル:??? ←情報の処理が追いついていない

ダーゼン :古代王国の姫君が遺跡で暮らしておっての。その姫にお会いしたいのだ。

フアナ  :

トゥエリ :本当に古代王国の姫君だとすると、500歳は超してますヨ!

レイディア:……そ、それは豪勢なお話っすね。

フアナ  :……情報源は?

ダーゼン :(懐から布に包まれた手鏡を取り出し)この鏡なのだが……。

G   M:皆さん、セージ技能+知力ボーナスで鏡の宝物鑑定を。
      (ころころ)レイディア13、フアナ15、トゥエリ10、オルフ15、
      ディース14、フィーエル8ですね。トゥエリとフィーエル以外は、
      通話の鏡だとわかります。お互いが鏡を覗き込んでる間だけ、
      相手の顔を見ながら会話できるアイテムですね。
      現在は製法が失われている貴重なアイテムです。

フィーエル:??? ←勉強は一通りやったけど、必要なときに記憶が出てこない

トゥエリ :私にはわかりませんネ。レイディアさん、お願いしますヨ。

レイディア:これは通話の鏡ね。私の知識をもってすれば楽勝でわかるわ。

トゥエリ :さすがはレイディアさんデスね。

レイディア:ふん。お安い御用よ。

G   M:さらに、レイディア以外の3人は、鏡が少し壊れ、
      音声を伝える魔力が失われていることまでわかります。

ディース :よくある通話の鏡だけど、音だけ伝わらなくなってるよな。

オルフ  :ええ、ディース君の言う通りです。

フアナ  :(無言で)こくん。

レイディア:(……げ……そこまではわからなかったけど、黙っとこ。(汗))

G   M:さて、鏡には、10歳くらいの、栗色の髪の少女の姿が映っています。

レイディア:女の子ね。

G   M:鏡を覗き込んだ人はセージ技能+知力ボーナスで判定を。目標値は10です。
      レイディア13、フアナ12、トゥエリ11、オルフ13、ディース11、
      フィーエル8ですね。(なんとも順当な出目だ……。)
      フィーエル以外は、少女の顔を見てわかります。

フィーエル:誰か、知り合い?

G   M:額についている黒水晶は、古代王国人の証ですね。

レイディア:古代王国人よ。常識でしょう、馬鹿。

フィーエル:あうー。ごめんなさい。

トゥエリ :確かに、目標値10は常識レベルデスね。

フィーエル:あうー。

レイディア:わからないもんは仕方ないでしょう。クドクド言わないのよ。

トゥエリ :すみません。

フアナ  :(オマエモナー。)

ディース :ちょいとばっかし若すぎるよな。

レイディア:あんたの好みなんか聞いてないわよ。

フアナ  :……その女の子……透けてる?

G   M:透けているようには見えません。

レイディア:霊体アンデッドの可能性はまずない、か。

トゥエリ :最悪のシナリオはヴァンパイア(注:10レベル)でしたってオチデスね。

ディース :■詠かよ!

フアナ  :……仮に古代王国人の子孫と考えても……水晶をつけるのは不合理……。

オルフ  :では、古代王国人と関係ないとしたらどうでしょう?

レイディア:それも水晶をつけてるのが不合理ね。あと、鏡を持ってるのも。

G   M:では、ダーゼンが鏡を覗き込みます。

ダーゼン :我が姫君よ、お変わりないですか?

G   M:発言に反応して、鏡の中の少女が何かしゃべります。が、声は聞こえません。
      なお、皆さんが代わる代わる手鏡を覗き込んでいたときは、
      少女は様々な表情を浮かべていました。主に驚きや興味といった表情です。

フアナ  :……反応したということは、幻覚じゃない?

レイディア:そういう風にプログラムされた幻覚って可能性もあるっすよ。

フアナ  :……あ、そうか……。

レイディア:可能性としては、アンデッド、末裔、ゴーレムの順に高いかなー。

トゥエリ :少女型ゴーレムというのも珍しいと思いますガ。

レイディア:なによ。文句があるんなら自分が意見出しなさいよ。

トゥエリ :すみません。

ディース :それか、コスプレだな。

他全員  :(コスプレって、何……?)

トゥエリ :しかし、鏡を覗き込んで会話に答えるゴーレムがいますかネ?

レイディア:もっともな意見ね。トゥエリにしては上出来だわ。

トゥエリ :これでも、成績だけならレ……。

レイディア:にらむ。

トゥエリ :……すみません、なんでもないデス。

ダーゼン :黙って聞いておれば、姫君に対して失礼ではないのか?

レイディア:すみません。仕事上の癖でして……。

トゥエリ :(まだ癖がつくほど仕事してないですが。)

オルフ  :どういうわけか、あちらから音声は伝わらないわけですよね。

フアナ  :……こちらの発言は聞こえてるのか……聞こえてないのか。

レイディア:あるいは、聞こえなくても理解はできているか。

フィーエル:???

トゥエリ :読唇術デスか。なるほど。

オルフ  :ふむふむ。

ディース :読唇術で何かわからねー?

G   M:無理です。

フアナ  :……おじいちゃん……姫君だって根拠は?

ダーゼン :それは苦労して手に入れた情報じゃから、依頼を受けてもらってから話す。

オルフ  :妥当な判断ですね。

ダーゼン :報酬は、姫君を我が手にするという成功報酬で1人600ガメル。
      前金はそのうち、1人150ガメルでどうじゃ。
      中で手に入れた宝物のうち、姫君の私物以外はお主らの物じゃ。

トゥエリ :古代王国の遺跡探索とは、冒険者の華デスね。

フィーエル:レイチェルさん、どう?

レイディア:私はレイディアだ。……報酬は安いけど、後者の条件は魅力的ね。

フアナ  :……姫君がいるってことは……枯れてないもんね。

トゥエリ :特にこの国の場合、大抵の遺跡は枯れてますからネ。

ディース :俺の魔法剣がうなるぜ!

レイディア:お前、剣持ってないだろ。

ディース :るせーな。剣高いって知ってるだろ。

オルフ  :しかし、年頃の女性は難しいので、成功までは難しいかもしれませんね。

ダーゼン :なに、姫を説得するところはワシがやる。安心せい。

レイディア:何より、枯れてない遺跡のお宝ごっそりって、すっごい魅力ない?

ディース :あるある!

トゥエリ :(レイディアさん、持ち帰ってあいつらに見せる気ですね。)

フアナ  :(逆に考えれば、このおじいちゃんには、宝を折半の条件に持ち込む
      財力なり、思慮分別なりが、少なくとも今はないってことなんだよ?)

トゥエリ :でも、探索されてないということは、何が出てくるかわかりませんヨ。

ダーゼン :姫君の住まわれる遺跡じゃ。多少の危険はあるじゃろうが、
      正面から来たならばワシの剣でねじ伏せてやろうぞ。

ディース :爺さん、ファイター何レベル?

オルフ  :ディース君、依頼人に対する口のきき方には気をつけた方が。

ダーゼン :構わぬよ。6じゃ。

ディース :俺より5も上じゃねーか。こりゃ百人力だな。

トゥエリ :(ていうか、この人は1レベルでミノタウロス葬ったんですね……。)

フアナ  :……逆に考えれば、ボスのレベルは7〜9……特に8か9。

トゥエリ :裏技が出ましたネ。(笑)

オルフ  :これはまた不穏当な。(笑)

レイディア:6〜8で、通常武器無効や、生命点再生の類という線も出てくるわ。

トゥエリ :しかし、最悪10レベルという可能性も……。

ディース :それだと、最有力ボスがバンパイアになるかなー。

フィーエル:あうー。強すぎる。

レイディア:多分、バンパイアは違うと思う。遺跡にこもるタイプじゃないし。

オルフ  :まだバンパイアと決まったわけでは……。

フアナ  :……おそらく、違う。……精神点の維持に、吸血が必要だから……。

オルフ  :いずれにせよ、危険が大きいのは確かですね。

レイディア:でも、遺跡を前にして引けないのが冒険者でしょ!

トゥエリ :お金が欲しいので、私は行きますヨ。

ディース :お前、珍しく積極的だな。また弱みでも握られたのか?

トゥエリ :レイディアさんに借金がありますからネ。

ディース :せっかくだから、俺は行く方を選ぶぜ!!

フィーエル:あう。レイスさんと、同じ。

レイディア:私はレイディアだ。モンスターじゃない!

フアナ  :……鍵がありそうだから……行く。

ディース :これで5人か。おっさんはどうする?

オルフ  :使命達成不能の見込みが高ければ逃げるという条件付きならば。

ダーゼン :お主、ワシの腕を信用しとらんな。まあ、いいじゃろ。

レイディア:まあまあ。話はまとまったので、ご依頼を受けさせていただきます。

G   M:かくして、ダーゼン氏の依頼を受けることになりました。






G   M:冒険者の店の相談室で、話は続きます。

ダーゼン :ここに、姫君の日記がある。

G   M:ダーゼンは、鏡をしまい、懐から古びた日記を取り出します。

ダーゼン :別の遺跡で見つけたものじゃ。元々はこの鏡と一緒の遺跡にあったらしい。

レイディア:つまり、その日記から遺跡の情報を得た、と。

ダーゼン :それはまた別じゃ。情報を探し回った。5年ほどかかったかのう。

ディース :5年ん!? 俺らの商売だったらとっくに諦めてるって。

フアナ  :……鏡と、これから行く遺跡の間に齟齬がある可能性は……。

ダーゼン :それはない。館の入り口のガーディアンは、
      鏡を持っておるワシを襲わんかった。

ディース :6レベルでも、さすがに1人で入り口以上はまずいってか。うひょー。

ダーゼン :盗賊の心得はないからの。お主らも1人では入らんじゃろ。

オルフ  :おっしゃる通りです。

フアナ  :……入り口のガーディアンは?

ダーゼン :スケルトン・ウォリアー2体じゃ。

G   M:全員ソーサラーなので知ってますね。5レベルです。強いです。

トゥエリ :ダーゼンさんは、ひるまずその前を通ったんデスね。

ディース :おいおい。入り口で5だぜー、勘弁してくれよ。

トゥエリ :ディースさん、顔が笑ってますヨ。

ディース :くししし。(笑)

ダーゼン :さあ、日記を読んでくれ。ワシにもわかるが、下位古代語で書かれておる。

レイディア:読み上げるっすよ。全員ソーサラーでセージだから必要ないけどね。

G   M:『我は太守ハルシュタット家が第一子、マリアンヌである。』

レイディア:た、太守ぅ!?

フアナ  :!!(大物!)

ディース :げぇ、初の遺跡探索が太守の館ときたか。

トゥエリ :これが本当なら、確かに姫君デスね。

フアナ  :……書かれてからどのくらい経ってる?

G   M:冒険者なら誰でも分かるのでロール不要です。優に100年は経ってます。

フィーエル:あう。偽造、可能性、低い。

レイディア:(興奮して)正解よ。よくできたわね。内容はどうっすか?

G   M:日記の内容は普通です。本当に太守の娘かどうかの真偽は不明ですが、
      内容は皆さんが勉強している古代王国の生活様式に合致します。

フアナ  :……特筆すべき点は?

G   M:子供で、考え方が多少高慢なようですね。あと、体が弱かったようです。

フアナ  :(小声で)これは……おそらく、ゴーストかバンパイアになってる……。

レイディア:(小声で)もしくは、若い頃の自分に化けてる魔法使いっすね。

ディース :なら、そんな半端な歳よりもっと瑞々しい歳に化けねー?

フアナ  :……言われてみれば、そうかも……。

レイディア:古代王国人が、どうやって今まで生きてるんすか?

ダーゼン :さっぱりわからんが、死んでおるよりはいいじゃろ?

オルフ  :まったくです。

ダーゼン :ワシの調べによると、元は研究所だった遺跡を、居住用にしたらしい。

フアナ  :……何があったの?

ダーゼン :わからん。政争か何かかの。
      とにかく、太守は姫君1人を残して遺跡を封印したんじゃ。

レイディア:そもそも、なんで女の子1人を残すわけ?

フィーエル:あうー。わかんない。

トゥエリ :政争か、宝物狙いカ。後者だとすると、たいした宝物は残ってませんネ。

ディース :でも、太守だぞ。残りカスと姫の身の回りだけでも、凄いことになるぞ。

レイディア:研究内容が宝、という可能性もあるわね。

トゥエリ :確かにそれはありそうデスね。

フアナ  :……で、魔法が高度すぎて……わたしたちには使えないってオチ……。

ディース :でも、中の調度品だけでも、次の仕事までの飯代にはなるだろ。余裕で。

オルフ  :遺跡までの距離は?

ダーゼン :ここから1日で行ける森じゃ。鏡を持っていれば迷わん。

フアナ  :……近い……。

レイディア:その鏡こそが、枯れてない理由っすね。

ディース :ラッキーだよなっ!

オルフ  :というか、話がおいしすぎて怖いくらいですね。

ダーゼン :ワシは姫君以外に興味はないからの。裏などないぞ。

フアナ  :(仮に裏があるなら、最初の提示金額が高めになる可能性が高いもんね。)

オルフ  :仮に、姫君との交渉が決裂した場合は?

ダーゼン :それはまずないと思うが、前金と中の宝物で満足してもらうことになる。

フアナ  :(「まずないと思う」とまでは言えない状況のはずだけど。)

ディース :リーダー、待遇としては破格だよな。

レイディア:ええ、いち冒険者として、願ってもないチャンスね。(ニヤリ)

トゥエリ :(古代王国の宝を手に入れて、馬鹿にしてた奴らに見せびらかす気ですね。)

レイディア:何より、私たちはもう依頼を受けた後だしね。

ダーゼン :頼りにしておるぞ。出発は明日でよいな。

レイディア:はい。

G   M:かくして、翌日の朝に遺跡に出発することになりました。






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