ソーサラーズクライマー








ところ変わって、冒険者の店。






レイディア:かんぱーい!

一同   :かんぱーい!

G   M:木のジョッキをぶつけつつ、冒険者の店で、レイディアたちが騒いでいます。

レイディア:生きて帰れてよかったっすねー!

オルフ  :まったくです。

ディース :俺のことは撃墜王と呼んでくれ!

レイディア:いよっ、撃墜王!

トゥエリ :今回はディースさん大活躍でしたネ。

ディース :もっと言ってくれ。どんどん言ってくれ。

フアナ  :……いつ前線が崩れるかわからないから……戦闘技能は必須かも……。

トゥエリ :す、すみません。

ディース :泣きべそかいてた奴もいたけどなー。

フィーエル:???

レイディア:馬鹿、言うなって言っただろーっ!!

フィーエル:レイニーさん、泣き虫?

レイディア:レイディアっす。あと、泣き虫じゃないっ!

オルフ  :しかし、ディース君以外は、
      レイディア君の応急手当がなかったら死んでいましたよ。

トゥエリ :決め手のナイフを用意してくれたフアナも、敢闘賞デスね。

フアナ  :……計算はしてたけど、わたし含めて……陣形が思ったより崩れた。

オルフ  :あと一撃当たったら、実質全滅でしたからね。

レイディア:まあ、フィーエルが削ってくれた分もあるし、
      オルフの回復もあったし、みんなの勝利ってことで。

ディース :まあ、一番かっこいいのは俺だけどな。

フィーエル:ディースさん、一番かっこいい!

ディース :よせやい。照れるじゃねーか。

オルフ  :わたくしも、ディース君の一撃を見られなかったのが惜しいと思います。

ディース :おっさんまで褒めてくれるのか。景気がいいなー。

オルフ  :(……おっさん……おっさん……ガーン。)

ディース :よし、あの一撃をシャイニングスラッシュと名付けるぜ!

レイディア:いやー、一仕事終わった後のお酒はうまいっすねー。

トゥエリ :この世界では15歳で成人デスからねぇ。

レイディア:何カメラ目線で解説してるのよ。

ディース :ま、これからもよろしく頼むぜ、リーダー。(レイディアの肩を叩く)

レイディア:あ? へ? え?

フアナ  :……まさか……リーダーじゃないつもりだったの?

ディース :レイディアがリーダーだろ? 違うの?

トゥエリ :私もレイディアさんだと思ってましたけど……。

レイディア:え、でも、せいせ……じゃなくて、ほら……なんとなく。そう、なんとなく!

トゥエリ :フアナは頭はいいですけど、たまにぽーっとしますし、
      戦闘中は狙われると一番打たれ弱いですし。

ディース :あまり物怖じしないフアナより、びびりのお前のほうが適役だって!(笑)
      名前は「悟■、左よ!」みたいだけどな。

トゥエリ :若い人おいてけぼりデスね。

レイディア:(感極まって涙を流しながら)
      じゃあ、ほんとにわたしがリーダーなんすね?
      ついにやったんすね……!?(号泣)

フアナ  :(しばらく考えた後)……耳、触ってみる?

レイディア:(フアナの耳をぺたぺた触りながら)ああ〜、エルフに勝った〜!(号泣)

オルフ  :勝ち負けの問題ではないような気もしますが……
      とにかく、あらためてよろしくお願いします。レイディア君。

フィーエル:うん、レティシアさん、リーダー!

レイディア:レイディアっす。(泣)

トゥエリ :フィーエルは名前を覚えるのが苦手みたいデスからね。

レイディア:……リーダー……私がリーダー!(感涙)

オルフ  :はい。あなたがリーダーです。

トゥエリ :当たり前じゃないデスか。

フィーエル:(こくん。)

レイディア:……では、リーダー・レイディア、飲みまーす。

ディース :おー、行け! どんどん行け!

オルフ  :あまりはめを外しすぎないようにお願いしますよ。

レイディア:大丈夫大丈夫。お酒は大人のコミュニケーションツールっすから。

トゥエリ :レイディアさん、あんまりやってるとフィーエルが真似しますヨ。

レイディア:じゃあ、ちびちび飲むわ。

ディース :どうした。景気悪いぞ、リーダー。

レイディア:(……ごくごく……)おばちゃーん、おかわりー!

トゥエリ :(この人たちは……。)

フアナ  :……。 ←食べながら手元の鍵を片手でかちゃかちゃと

オルフ  :(……ひとまずは、やれやれ……ですね……。)






外野の人A:おい、見ろよ、あの変な傷がついた新品鎧の連中。

外野の人B:杖に皮鎧ばっかじゃねえか。ただの貧乏か……それともギャグか?

外野の人A:噂によると、全員ソーサラーだとか。

外野の人B:そんなん聞いたことねーぞ。あいつら頭おかしいんじゃねーのか。

外野の人A:で、1回目の冒険で、ゴブリン退治に行ったらミノタウロスが出てきたとか。

外野の人B:不運すぎるな。10人くらいで行ったのか?

外野の人A:いや、あそこにいるので全部らしい。

外野の人B:新人6人で倒したってのか!? 1人も死なずにか!?

外野の人A:ああ。見ろよ、あそこの大斧。

外野の人B:ありゃ、人間が振り回せる得物じゃねぇな。あながち嘘でもなさそうだ。

外野の人A:だろ? こりゃ、ちょっとした噂になるぜ……。

外野の人B:だな。






かくして、冒険者の店の夜は更けていくのでした。





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