ゴブリン・スクリーミング・ショウ








オルフが旅立つ支度をするのを待って、一行は山奥の村へと向かいます。
少しでも早く到着するため、夕方から出発し、
道中の食事は買い込んだ保存食で済ませました。






ディース :なあ、なんで挫折したのにメイジスタッフ持ってんの?

オルフ  :……この杖には愛着がありましてね。手放せないんですよ……。

フィーエル:(驚きの表情で)手、杖、くっついてる!?

オルフ  :……いえ。(冗談を言ってるようには感じませんが……まさか……。)

トゥエリ :あ、彼のことは気にしないでくださいネ。

レイディア:杖の表面が焦げてるみたいだけど……どう使ったらそんなになるの?(汗)

オルフ  :……ははは。わたくしも若い頃は色々ありましてね。

ディース :気になるなー。なー、俺に教えてくれよ。

オルフ  :この場は黙秘権を行使させていただきます。
      とにかく、わたくしは古代語魔法は使えませんので。

フアナ  :(怪しいなー。)






途中、遭遇もなく、地図にあった村までの進路からややずれた場所にあるらしい洞窟は無視し、
名前も無い山奥の村に難なく到着。到着したのは正午になろうという頃でした。
一行は家に篭っている村人たちに話を聞いて回りますが……。






村人A  :ゴブリンか……昨日は何の被害もなかったな。毎日来てたのに。

村人B  :途中で洞窟に寄って倒してくれたんだろ? 助かったよ。

村人C  :村長にはまだ絶対外に出るなって言われてるんだ。

フアナ  :洞窟……あったね。急いでたから寄らなかったけど。

レイディア:要するに、被害がぷっつりと途絶えたわけね。それって……。

フィーエル:いい人、倒してくれた?

オルフ  :ふむ……ありえないことではないですが……。
      だとすると、村に一言くらいあってもいいのでは?

フアナ  :……照れ屋さん、だったり……。

フィーエル:あう。てれやさんー!

オルフ  :……怖いことにならないといいのですが……。

トゥエリ :(真顔でああいう会話がされてることが一番怖いですよ……。)

レイディア:……とにかく、村長さんに話を聞いてみるわ。






村長   :……遠いところよく来てくださいました。
      恥ずかしながら冒険者の方にとっての十分な報酬を用意できませんでしたので、
      半分あきらめてはいましたが……。

レイディア:レイディアと申します。学院の同期の中でも三本の指に入る魔術師です。
      わたしたちが来たからには、必ずやゴブリンどもを退治してみせましょう。

トゥエリ :(レイディアさん、指が減ってますよ。まあ、いつものことですけど……。)

村長   :それが……今朝方、町外れにゴブリンの死体が複数あるのを
      見つけた者がいまして……。私も一緒に見に行ったんですが……。

フィーエル:???

ほか一同 :!!!

村長   :他の者には内緒にしています。無用な混乱を生じるだけですので……。

オルフ  :(しばらく考え込んで)山賊の縄張りとかち合った?  
      ……いえ、それならば村に対して何らかのコンタクトをとるはず。
      だとすると動物ですか……ゴブリンの群れを蹴散らすような……!?

ディース :ちっ……。こりゃ面倒かもなぁ。 ←と言いつつ、ニヤリ。

フィーエル:あうー。あうー。

ディース :死体の数と、死因とかわかる?

村長   :私も行って見ましたが、自然に死んだものではないでしょう。

ディース :念のため聞いとくけど、病気は?

村長   :巨大な刀傷がついているのが数体。数は……
      すみません……当時は混乱していたもので……確か5体だったと思います。

レイディア:なら、病気の線は薄くなるか……。ていうか、まずないっすね……。
      巨大な刀って……そんなゴブリンいた?

オルフ  :裂傷を負わせる暗黒魔法があったと記憶しています。
      それを使えるゴブリンシャーマンもまれに存在する筈です。
      仮に仲間割れならば当初の敵より数が減っていますね。
      そうでないとすると、同等以上の脅威が今もいるか、
      昨日はいたということになりますが……。

トゥエリ :ファリスの聖戦士あたりが成敗してくれたとかはないデスかね?

ディース :それだとオルフが言ったように、村に「もう大丈夫ですよ」って
      言いにこないか? 村人が困ってるだろうし。

フアナ  :(こいつ、意外と賢いよね。)

ディース :やっぱ、俺らにあるんだよ、活躍の場がさ!

フィーエル:?(こんな、状況、本、読んだこと、ない。
      どう考えたらいいか、わからない……。)

レイディア:ゴブリン以外の脅威がゴブリンとかち合ったって仮説に立つと、どう?

オルフ  :……この村の運の悪さ以外は説明がつくかと思われます。

ディース :その場合で俺らにとってベストなのは、近くの茂みにでもゴブリンと
      戦った奴の死体が転がってること。で、もうどっかに行っちまって
      帰ってこないことが確認できたらベター。……でいいよな?

フィーエル:あう。バター。

ディース :そうそう。虎が木の周りをぐるぐる回ってバターに……ならねーよ!

フィーエル:あ、あうー。

トゥエリ :この人、ノリツッコミしましたヨ。

レイディア:(無視して)傷は負ってるけど、村に入れない事情があるって線もアリね。

フアナ  :……最悪なのは……そいつが無傷でこの辺に居座ってること。

フィーエル:???

一同   :………………。

レイディア:(ていうか、正直逃げたいんだけど……。)

フアナ  :……。

レイディア:村長さんは明るくなってから見に行ったんっすよね?

村長   :はい。

レイディア:今までにゴブリンが悪さをしていたのは、夜だけっすよね?

村長   :その通りです。

レイディア:ということは、ゴブリンは昼はねぐらで、夜にやられた可能性が高い……。
      見に行くにしても、昼のうちのほうが安全かもしれないわ。
      ひとまず、第一発見者に事情を聞いてみるわよ。






その後、一行は第一発見者の村人の家に行って話を聞きます。その村人は、
「早朝なら大丈夫だろう」と、村のはずれの畑に作物を取りに行っていたとのこと。
昨日の朝は何もなかったけれど、今日の朝はゴブリンの死体が5つ。
彼は慌てて村に逃げ帰り、村長に報告したそうです。
なお、他の村人に対してはこのことは口止めされています。
一行は彼と村長を連れ、現場へと向かうことにしました。






G   M:現場にはゴブリンの死体が5つ。うち4つには目立った外傷が。
      村長の言うように巨大な刀傷のようです。傷は、1体あたり1〜2個所。
      残りの1つも明らかに死んでますが、死因は不明です。
      手足が妙な方向に曲がってますけど……。
      刀傷を詳しく調べる人はセージ技能+知力ボーナスで。
      ……レイディアとフアナが13で、あとは10ですね。
      (みんな駆け出しなのに異常に高いな……まあ、全員セージだからな……。)
      難易度7に出目5だから、目標値は12と。
      全員、ものすごい力を持つ何かが、刃のある武器で力任せにゴブリンに
      切りつけたことがわかります。
      レイディアとフアナは、ぱっくり開いた巨大な傷口がすっぱりと切られずに
      できたものだとわかります。傷口の下の骨もえらいことになってます。
      これは、重量のある刃付きの鈍器を力任せに振り下ろしたときにできる傷跡。
      つまり、2人は、凶器は巨大な斧又は大剣であると断定できますね。

ディース :犯人は10代から20代、もしくは30代から40代だな。 ←失敗した

トゥエリ :広すぎデスよ。

ディース :……ゴブリンでも、一撃で倒すなんて俺らにゃ無理だよな。

フアナ  :……凶器は巨大な斧か大剣……間違いない。

レイディア:私もわかったわよ。実力を考えると当然よね。(えっへん)

G   M:では、ここでセージチェックを。
      以上の特徴に該当するモンスターを記憶から検索することになります。
      かなり危険な強さであると思われることと、
      あとは武器しかわかってないのでペナルティー−2で。
      (一同、ころころ)順に10・10・6・9・7・13ですね。
      目標値は修正後で12だから、出目が11だったフィーエルだけ成功。
      (危なっ! 正体不明のまま突っ込んだら全滅しかねないのに……。)
      犯人は、ミノタウロスです。

フィーエル:ミノタウロス! 学院、本、100回以上、読み返した、間違いない。
      ミノタウロス、データ、モンスターレベル6、攻撃点……(以下省略。)

G   M:そしてフィーエルの言ったデータから、
      先ほどの死因不明の一匹はおそらく絞め殺されたであろうことがわかります。






さて、ここで正体が判明したミノタウロスは、モンスターレベルがなんと6!
駆け出しソーサラーの一行にとっては、洒落にならないほどの強敵です。
(※ミノタウロスのデータは、完全版209ページ)
村長を目の前に、一向は必死に相談を始めます。






レイディア:……帰ろっか。(遠い目)

ディース :……さすがに、簡単に勝てる相手じゃねーな……。

フアナ  :……要素に重大な錯誤があり……契約は無効……鍵もないしね。

トゥエリ :(鍵は関係ないのでは……。)

オルフ  :……わたくしがしっかりしていれば……! ←愕然……。

G   M:(昔日のオルフの力があっても勝てるとは限りませんが。)

ディース :ミノタウロスがゴブリンにやられたり……するわけねーか。
      無傷……だろうなぁ……。

フィーエル:村、みんな、大変。助けて、あげよう!

レイディア:敵の強さをわかった上でそう言えるフィーエルはすごいと思う。けど……。

トゥエリ :助けてあげたいのは山々デスけど、勝てる見込みガ……。

フアナ  :……命あっての……ものだね……。

レイディア:(村長に向き直って)最悪の事態です。
      ゴブリンの死体を見てお気付きかもしれませんが、
      敵は我々の力をもってしても全滅しかねないほどの強さです。
      ……しかも……人食いです……。

オルフ  :こうなったら、村ごとどこかに移住するしか……。

村長   :いまさら移住しようにも、それでは村人たちが生きていけません……。
      無理を承知でお願いさせていただきます!
      なんとかしていただけないでしょうか!? 必要ならば、
      私も含めて村の男たち全員が農具を持って戦いに加わりますので。
      報酬のことでしたら私の家でも何でも差し上げますので!

フアナ  :……一般人にはどうやっても……無理。
      傷は通らないし、敵の一撃で1人……死ぬ……。

村長   :………………そうですか……無理を言って申し訳ありませんでした……。

フィーエル:……今いる、仮定する、ゴブリン、住んでた、洞窟?

レイディア:だろうけど、1人で行くの無しね。犬死にだから。私はあんたの保護者だし。

村長   :……そうだ、洞窟を塞いで煙でいぶすというのは……。

オルフ  :おそらく怒らせるだけでしょう。見ての通りの怪力ですから。

村長   :しかし、何もしないよりは……。
      他の冒険者を雇う余裕もありませんし……。

G   M:さて、ここでレンジャー技能+知力ボーナスで難易度3のロールを。

トゥエリ :そ、それ、危険感知じゃないデスかっ!?

レイディア:不意打ちか。まずいわね。





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