BOY MEETS GIRL
トゥエリ :結局、断られたんデスね?
レイディア:紙一重だったわ。
トゥエリ :紙一重で、断られたんデスね。
レイディア:条件が厳しすぎるわ。これでついてくる奴がいたら、よほどのアホね。
トゥエリ :私もよほどのアホなんデスね。……ひとまず、ここの状況はわかりましたヨ。
レイディア:さあ、話もひと段落ついたし、パンチ17発ね。
トゥエリ :無茶言わないでくださいヨ。これでも急いだんデスから。
レイディア:過程は関係ないわ。結果が全てよ。
トゥエリ :無茶苦茶デスよ。あと、よく考えれば全然ひと段落ついてませんし。
レイディア:それに、急いで来たにしては息が切れてないみたいだけど?
トゥエリ :はぁはぁ。
レイディア:急にハァハァしても駄目だろ。そんなに殴ってほしかったの?
トゥエリ :殴ってもいいデスけど、誤解を招くことは言わないでくださいヨ。
レイディア:結局殴られたいの。変態ね。
クァルミル:(遠くで)あいつ、変態だったのか。キモっ!
チェーザ :(遠くで)まあ、変態ですって。
トゥエリ :なんか、遠くから嫌な視線を感じるんデスが。
レイディア:気のせいよ。それより……。
トゥエリ :はい……。
G M:廊下に箱があります。
体を折りたためば人が入れそうなサイズの、木箱ですね。
しばらく止まっていたか思うと、少し進み、また止まります。
明らかに誰か入ってます。
どうやら、廊下の奥に向かって進んでいるようです。
箱 :…………。
レイディア:(小声で)あ、また止まった。
トゥエリ :(小声で)まさか、ばれてないつもりなんじゃ……。
レイディア:(小声で)あ、動いた。
トゥエリ :(小声で)さて、中身のわからない相手にどうしましょうカ。
レイディア:(小声で)ただ一つだけわかるのは、中身がアホだということね。
トゥエリ :(小声で)そうデスね。
レイディア:(小声で)……今から耳打ちした通りにしゃべるのよ。
トゥエリ :(小声で)わかりました。
レイディア:(箱の前まで移動して)あ、こんなところに箱がある。
トゥエリ :(同じく移動して)本当だ。箱がありますね。(←棒読み)
レイディア:なぜか急に、この杖で、箱を殴りたい気分になったわ。
トゥエリ :それはいけませんよ。(←棒読み)
レイディア:そうね。中に猫でも入ってたらかわいそうだものね。
トゥエリ :『にゃあ』って鳴いたら、殴れませんね。(←棒読み)
箱 :……にゃあ。
レイディア:でも、ここは3階よ。たとえ猫でも、男の子が入ったらお仕置きしないと。
トゥエリ :女性は入っていいですけどね。(←棒読み)
レイディア:『女の子だにゃあ』って言ったら、見逃すしかないわね。
箱 :……。
レイディア:(……くっ。思ったほどアホじゃないの!?)
箱 :……。
トゥエリ :(さすがにきつかったですかね。)
箱 :……女の子だにゃあ。
トゥエリ :言っちゃいましたカっ!?
レイディア:誰が見逃すかぁっ! 箱に杖で全力攻撃、クリティカル−1で。
トゥエリ :ちょ……それは殺す用の攻撃オプション……。
G M:では、命中判定を。攻撃側は出目に+4です。
レイディア:(ころころ)3+4=7。低いっ!
G M:(ころころ)箱は10です。箱はそのまま横に移動し、素早く避けました。
レイディア:ちっ。
トゥエリ :発動体の杖で殴らないでくださいヨ……。
レイディア:手で殴るなんて、優雅で繊細な私には不似合いよ。
トゥエリ :しかも、殴ったりしたら、敵意があるってバレバレデスよ。
レイディア:一発だけなら誤射かもしれないわ。
トゥエリ :不穏当な発言は勘弁してくださいヨ。
箱 :……女の子だにゃあ。
トゥエリ :しかも、まだばれてないつもりデスよ。
レイディア:仕方ないわね。とっとと出てきなさい。
トゥエリ :いや、素直に出るとは思えないデスが。
箱 :……。
レイディア:ふん。学生以外の侵入者は、問答無用でライトニングされるわよ。
箱 :……。
G M:箱を脱いで、男子の学生が出てきます。2人とも知っている顔ですね。
寮生でなく、自宅から学院に通っているディースです。
よくいるボンボンタイプの学生ですね。
ディース :……女の子だにゃあ。
レイディア:どうみても男だろ!
トゥエリ :この人、そんなに成績悪くない筈なんデスが……。
レイディア:あーあ。どんな大魔法で血祭りにあげられることやら。
ディース :ちょっと待て。学生だったらライトニング食らわないんじゃないのかよ!
レイディア:学生だったら魔法食らわないなんて言った覚えはないわ。
ディース :き、きたねーぞ!
トゥエリ :不法侵入者に言われたくはないデスね。
レイディア:正直に事情を話すなら、3階のお偉方にとりなしてあげなくもないわ。
ディース :ローディスかよ……でも、これは男と男の約束なんだ。死んでも話さねー。
レイディア:あーあ。こりゃあフルコースね。
ディース :……フルコース?
レイディア:身ぐるみ剥がれて、ローディスのサンドバッグになって、
よってたかって全裸に卑猥な落書きをされて、3時間放置。
その後、変態の烙印を押され、最後は覚えたての学生たちによる
フォーリング・コントロールの実習素材に。
3階じゃ魔法が不発でも死なないから大丈夫よ、多分。
ディース :大丈夫じゃねーよ! お前は鬼か!
レイディア:心外ねぇ。そういう目に遭わないように助けてあげようって言ってるのに。
トゥエリ :……。 ←何か嬉しいことがあったらしい
ディース :わかったよ、話すよ。
トゥエリ :死んでも話さないんじゃなかったんデスか?
ディース :おまじないだよ。
レイディア:おまじない?
トゥエリ :はあ?
ディース :満月の夜、ここの裏庭で……。
レイディア:ああ、部屋側の庭ね。そんな人気の無い場所で何しようっていうの?
ディース :半裸でひとしきり踊った後、おもむろにパンツを脱ぎ、
それに好きな子の名前を書く。そして、パンツを投げ入れ、
パンツが見事その子の部屋に入れば、2人は結ばれるという……。
レイディア:結ばれてたまるかぁーっ!!!
トゥエリ :な、なんて馬鹿なことを……。
レイディア:ここの男子どもは、想像を絶する馬鹿ね。お前もだよ、馬鹿男子!
ディース :へっ。馬鹿って言う奴が馬鹿なんだよ。
レイディア:じゃあ、あんたも馬鹿になるんじゃない?
ディース :その理屈だと、お前も馬鹿だけどな。
レイディア:ふん。あえて言い返さないけど、負けを認めたわけじゃないからね。
トゥエリ :で、昼間からその子の部屋に忍び込んで、本懐を遂げようと。
ディース :そうそう。押し倒して本懐を……って、違う違う。俺の仕業じゃねーよ。
トゥエリ :この人、この状況でノリツッコミしましたヨ。
レイディア:誰の仕業よ。
ディース :言えるかよ。
レイディア:そもそも、あんたは何しに来たのよ。
トゥエリ :パンツが別の部屋に入っちゃったとか、デスかね。
ディース :いや、そのパンツに親が名前書いてたらしくてさ、その男の。
トゥエリ :……どこからつっこんだらいいんデスかね?
レイディア:大体わかったわ。それであんたが回収しに来たわけね。
トゥエリ :一体、どういう報酬で動いてるんデスか?
ディース :そりゃエロほ……男の友情に決まってんだろ!
トゥエリ :いや、ほとんど言い終わってから訂正されても。
レイディア:へぇー、そんなことで若い命を散らせるとはねぇ。 ←獲物を狙う目
ディース :散らねーよ。……散らねー……よな?
レイディア:誰の部屋に投げ込んだか言いなさい。
ディース :それこそ言えねーよ。
レイディア:なら、2人の名前が書かれたパンツが見つかって、大騒ぎになるだけね。
ディース :……仕方ねーな。フィーナ様だよ。
トゥエリ :あの人でしたカ。特待生デスし、力押しは通用しませんヨ。
レイディア:確かにフィーナ先輩の部屋に入ったのね?
ディース :ああ。
レイディア:確実じゃないけど、取り返す方法がなくもないわよ。
ディース :本当か、教えてくれ!
レイディア:教えないし、私じゃないと実行不能よ。それより……。
ディース :?
レイディア:取り返して来たら、私の仲間になりなさい。
ディース :仲間? 『衛視と泥棒ごっこ』でもやんのか?
トゥエリ :あなた何歳デスか?
レイディア:とにかく、仲間にならないんならこの話は無しよ。
ディース :わかったよ。仲間になるから、頼む! あの本レアなんだよ。
トゥエリ :男の友情とかいう設定はどこに行ったんデスか。
ディース :どっちも大事なんだよ。
レイディア:わかった。そういうことなら私に任せるといいわ。
G M:3階、フィーナの部屋。
レイディア:で、酔った勢いで盛り上がっちゃって、
面白がって2階の部屋に投げ入れようとしたら、
フィーナ先輩の部屋に入っちゃったってわけで。
フィーナ :あらあら。困った人たちですねぇ。
レイディア:というわけで、この袋に入れて持って帰らせてもらいたいんすけど。
フィーナ :これに私の名前らしきものが書いてあるのは?
レイディア:見たんすか?
フィーナ :それはもう。どういうわけか、名前の綴りは違いますけど。
レイディア:いやー、ありふれてそうなお名前っすからねぇ。
フィーナ :あら。そんなにありふれてはいないと思いますけど?
レイディア:気のせいじゃないっすか?
フィーナ :私だって仮にも特待生なんですから、その言い訳は通じませんよ。
レイディア:いや、偶然の一致ということで、ここはひとつ。
フィーナ :まあいいです。調べればわかりますから。
レイディア:お願いします。調べないでください。土下座でも何でもしますから。
フィーナ :大丈夫、綴りが間違ってるって教えてさしあげるだけですよ。うふふ。
レイディア:……フィーナ先輩、まさか……。
フィーナ :悪いようにはしません。それは持って帰っていいですよ。以上です。
レイディア:あ、ありがとうございます。
G M:そして、3階廊下。
ディース :お前すげーよな。どうやって持って帰ったんだよ。
レイディア:ふん。私の交渉能力を甘く見ないことね。(えっへん)←ほとんど何もしてない
ディース :ただのヘタレじゃなかったのか。
レイディア:私の凄さは、分かる人にだけ分かるのよ。
ディース :そうか。ますますすげーな。
レイディア:もっと褒めていいわよ。
ディース :いや、すげー。ほんとにすげー。
トゥエリ :あの、そろそろ話を。
レイディア:そうだったわね。私の仲間になりなさい。
ディース :ああ。いいぜ。
レイディア:じゃあ、あんたは私の冒険者仲間よ。
ディース :な、仲間って、冒険者仲間のことだったのか!?
トゥエリ :いや、その部分を急に明かしても、仲間にはなってくれないと思いますガ。
ディース :なる! なる! 俺前衛な! 魔法戦士な!
トゥエリ :…………。
レイディア:何よ、その哀れむような目は。気持ちはすごくわかるけど。
ディース :へっ。俺の魔法剣が火を噴くぜっ! 必殺、ファイヤーマグナムトルネード!
トゥエリ :……マ、マグナム?
ディースが仲間に加わった!
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