委員長は承認せず?








G   M:気を取り直して、寮の3階、ローディスの部屋の前にやってきました。

レイディア:今度は、日替わりで女生徒を部屋に連れ込んだりとかはないわよね?

トゥエリ :あの。レイディアさんは学院をどういうところだと思ってるんデスか?

レイディア:周りにああいう系統ばっかいると、人間不信になっても仕方ないわ。

トゥエリ :…………。

レイディア:もういいわ。思い出したくもない。

トゥエリ :……。

レイディア:大丈夫、ローディスは信頼してるから。

トゥエリ :だったら、変なこと聞かないでくださいヨ。

レイディア:うるさいわね。じゃあ、行ってくるわ。

トゥエリ :この部屋の前が防衛ラインデスからね。私は階段で待ってますヨ。






G   M:そして、レイディアはローディスの部屋に入ります。
      短髪で体格のいい女性がレイディアを出迎えますね。
      もっとも、例によって飲みすぎたらしく、フラフラですが。



ローディス:(青い顔で)……い、いらっしゃい……。

レイディア:だ、大丈夫? 入り口から酒臭いし。ていうか、飲むんなら呼びなさいよ。

ローディス:ごめんね。……今度はそうしようかな……。

レイディア:あ、言っとくけど、よく知らん男と飲む趣味はないから。

ローディス:飲まないよ、男となんて……。

レイディア:なかなかの量の酒瓶ね……何人で飲んだ?

ローディス:……5人だけど、前の飲み会から持ち越したのもあるから。

レイディア:5人だったら全然足りなくない?

ローディス:いや、これが普通だから、哀れむような目で見ないで……。

レイディア:お茶飲んだらマシになるけど。

ローディス:もう……だいぶ飲んだ。

レイディア:(薬包を懐から取り出しながら)仕方ないか。邪道だけど。
      この粉末を水で飲んだら、大抵の酔いは吹き飛ぶから。

ローディス:……それ、何の薬……?

レイディア:二日酔いに決まってるでしょ。

ローディス:な、なんで……若い娘がそんなもの持ってるのさ。

レイディア:1限ある日に酒が残ってたら、だるいし。

ローディス:1限ある日の前日に飲まなきゃいいと思うけど……。






G   M:数分後。

ローディス:……だいぶマシになったよ。ありがとう。

レイディア:お安いご用よ。でも、まだちょっと辛そう。

ローディス:すぐには治らないわ。

レイディア:えー。うそー?

ローディス:いや、これが普通だからさ。

レイディア:ていうか、今日講義ないの?

ローディス:あったけど、二日酔いで出て、聞き流したの。

レイディア:出るだけ真面目ね。飲みすぎは体に悪いよ。

ローディス:あなたもね。

レイディア:……うぐ。……そ、そんなことよりさ、頼みがあるんだけど。

ローディス:何? 言うだけ言ってみて。

レイディア:冒険者になって、一緒に古代王国の遺跡を探索しよっ!

ローディス:………………。(←開いた口が塞がらない)

レイディア:ありがとう。ローディスの力があれば、百人力よ!

ローディス:……3階の生きた伝説って二つ名は、伊達じゃなかったようだね。

レイディア:ローディスの慧眼に認められるとは、私もたいしたもんね。

ローディス:褒めてないし、無理だから。ごめんね。

レイディア:えー。

ローディス:そんなの無理よ。お願いだから、これ以上3階の問題を増やさないでよ……。

レイディア:ローディスは充分働いた。3階の治安は、もう別の子に委ねていいと思う。

ローディス:でも、いきなり出て行くなんて無茶だよ……。

レイディア:あんたのことだから、非常時のために引継ぎの準備もしてるんでしょ?

ローディス:そりゃ、してるけど……。

レイディア:誰? 誰? 言ってみて。誰にも言わないから。

ローディス:8号室のルコ。

レイディア:知らない。どっかで聞いた名前だとは思うけど……まあいっか。

G   M:そこに、ノックの音が聞こえます。

クァルミル:ローディス姐(ねえ)さん。お仕事っす。お願いしまっす!

ローディス:……入って……。

G   M:活発そうな学生が入ってきますね。寮3階の女子です。

クァルミル:失礼しまっす! (露骨に顔をしかめながら)姐さん、なんでこいつが?

レイディア:私も3階だっつーの。あんた何様?

クァルミル:お前が何様だぁっ!?

ローディス:同じ3階同士で喧嘩しないでよ。(嘆息) ……いつどこで何があったの?

クァルミル:はい。今、防衛ライン内で、箱をかぶった侵入者が。

レイディア:箱? 他に特徴は?

クァルミル:(無視して)姐さん、お願いします。

レイディア:(今、シカトしやがったな、この脳筋……。)

ローディス:外で守衛に止められてないってことは、寮の男子だと思うけど。

クァルミル:素晴らしい、さすがは姐さん!

レイディア:ふん。そのくらい私もわかるわよ。

クァルミル:(無視して)敵は防衛ラインを突破し、少しずつ前進中です。今は、
      チェーザが遠くでそれとなく見張ってます。姐さん、お願いします!

ローディス:(立ち上がって、よろめく)……まだ、体がうまく動かない。

クァルミル:姐さん、そんな!?

ローディス:う……あなた、自分は飲まないくせに注いで回りすぎよ。

クァルミル:美味しそうに飲んでたから、つい。

レイディア:ていうか、お前の仕業かよ。

ローディス:3階の雄(ゆう)の歴史は、鉄壁の伝説。
      私が出て、万が一にも負けることがあってはいけない……。

クァルミル:姐さん、しっかり!

レイディア:元凶が無責任に励ましてるんじゃねーよ。

クァルミル:じゃあお前がやれよ!

レイディア:逆切れしてんじゃねえよ!

クァルミル:特待生だから、凄い魔法が使えるんだろ。

レイディア:そ、そりゃ当然よ。ファイア・ボールだって出せるんだから。(えっへん)

クァルミル:そりゃ凄いな! お前のことちょっと見直したよ!

ローディス:……レイディア、お願いしていい?

レイディア:う……。(しまった!)

ローディス:不安なら、男子を連れてきていい。見つかったら、私の名前を出して。

クァルミル:姐さん、ファイア・ボールが使えたら、男子なんてイチコロっすよ。

レイディア:甘いわね。3階の治安がかかってる以上、慎重に慎重を重ねるべきよ。

クァルミル:おお! 確かに!

レイディア:部屋出たら、見張りの子と一緒に、階段にいるトゥエリ呼んできて。
      『30秒以内。1秒遅れるごとにパンチ1発』ってね。

クァルミル:す、凄い! 特待生の男子をこき使うなんて!

レイディア:ふん。私にかかればちょろいもんよ。(えっへん)





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