ある虚言者の記録−6





『ランダム・エンカウンター』



あなたは、『ロールプレイングゲーム』をプレイしたことがありますか?
一口に『ロールプレイングゲーム』と言っても色々ありますが、
この場合は、『勇者が魔王を倒す冒険モノのゲーム』とでも考えてください。

なぜか決まって、スタート地点は敵が一番弱いですよね?
そう。まるで、そいつを倒して強くなってくれとでも言わんばかりに。
冒険が始まった直後に突然魔王が攻めてきて、
勇者がそこで死んでしまうようなことは絶対にありません。
ゲームとは、そういうものなのです。

しかし、現実はそうとは限りません。
例えば、あなたにはとても大きな力があると仮定します。
そして、今は弱いけれど、成長すればあなたを脅かすのが明らかな者がいたとします。
あなたならどうしますか?

そう。魔王が本気を出せば、冒険を始めたばかりの勇者などひとたまりもないのです。
では、魔王がその時の気分で進軍する場所を決める世界があるとしたら、どうでしょう?
魔王が次にどこを滅ぼすかは、その配下ですらわからないのです。

どこで出会うか、あるいは誰と出会うかわからない。
これをテーブルゲーム用語で『ランダム・エンカウンター』というようです。
『ロールプレイングゲーム』でフィールドを歩いていると遭遇する敵も、
一種の『ランダム・エンカウンター』なわけですね。

では、その『ランダム・エンカウンター』で魔王と遭遇しうるとしたら、どうでしょう?
そして、一度出会ったら最後、決して逃げられないとしたら?
勇者の冒険は、ある日突然魔王に出会うまでの猶予期間に過ぎないのです。



                    ――ある虚言者の記録


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