第6話・第3節・タイトル未定





ゆうすけ :継承戦争!?

浅丘   :そうっす。継承を巡る戦争っす。昔あったっしょ? オーストリアとかで。

はるひ  :そ、そんなことがあったんですのね……。 ←コアラやカンガルーの乱闘を思い浮かべているらしい。

浅丘   :ボクもこんなこと言いたくないんすけど……続けていいっすか?

ゆうすけ :ああ、頼む。

浅丘   :元のボスで、みんなに慕われてたリナさんが、行方不明なわけっすよね?

ゆうすけ :……ああ。

浅丘   :行方不明になる直前に地位を譲ってたとしても、元のメンバーが納得しないっしょ。

ましろ  :最悪、全て我らの差し金と疑われるかもな。

ゆうすけ :そんなことするわけないだろ!!

ましろ  :……すまない。

浅丘   :気持ちはわかるんすけど、これからのためにも、ひとまず落ち着いてほしいっす。

ゆうすけ :……悪かった。

浅丘   :彼女の言うことも一理あるっす。
      リナさんとゆうすけさんのこと、内心疎ましく思ってたのもいるっしょ?

ゆうすけ :リョウか……。

浅丘   :ゆうすけさんの継承さえ否定すれば、彼がボスにだってなれるっすからね。

アキラ  :……どうしろと?

はるひ  :わかりましたわ! リョウくんをたおせばいいんですのね!

浅丘   :さすがはるひさん! 結論としてはそうなるっす。
      いやー、お美しいだけじゃなくて、内面も素晴らしいっす!

はるひ  :おーっほっほっほっ! もっとほめてもいいですわよ!

アキラ  :(こいつもか……!)

ましろ  :(ほう……。)

ゆうすけ :ちょっと待て。なんで仲間に暴力振るう前提なんだよ!?

浅丘   :もちろん、ボクらも証言はさせてもらうっすけど、信用してもらえるとは思えないっすからね。

はるひ  :話してわからないなら、やっちゃうしかないですわ!

ましろ  :闇討ちか。気は進まないが、やむを得まい。クックックッ……。

浅丘   :ボクも暴力は嫌いっす。でも、さっきリナさんが言ったことを思い出してください。

ゆうすけ :何か言ってたのか!?

浅丘   :リナさんは、世の中には、片方しか手に入らないものがあるって言ってたっす。

ゆうすけ :……あいつらしいな。

浅丘   :かりん、帽子を。

G   M:かりんは、プールで戦っていたときとは違って、薄い黄色の制服を着ています。
      彼女は、持っていた白い箱を開け、赤いベレー帽を差し出しました。
      ゆうすけは、感情を抑えられず、それをひったくります。

田沼   :あっ!

ゆうすけ :悪い。これはどこで!?

浅丘   :倒れたときにそのまま……。出血も無かったみたいっす。

ゆうすけ :そうか……。

浅丘   :話を聞いた限り、3人とも相当強いっす。
      考える隙を与えて、連携されるとまずいんすよね。

アキラ  :……。

浅丘   :つまり、話し合いで解決するのを諦めるか、リナさんを諦めるかっす。

ゆうすけ :リーダーとしては、仲間の安全が最優先だ。

G   M:個人的感情を自分の地位と責任に仮託して考えるあたり、
      ゆうすけもリナの影響を受けていますね。もっとも、本人は気付いてませんが。

浅丘   :こんなこと言いたくないんすけど、れいめいを攻めたのは、結果的にミスだったっすね。

G   M:そして、帽子でゆうすけの手がふさがっているところに、
      傷口を的確にえぐるような浅丘の指摘が飛びます。

はるひ  :あなた、けんかうってますの!!?

アキラ  :……。

ゆうすけ :よせ。そいつの言う通りだ。

浅丘   :でも、ボクでも同じ判断をしてた筈っす。
      あいつらの戦力と、出てくる法則がわからなかったんで。

ほか一同 :……!!!?

ゆうすけ :待て!! 出てくる法則って何だ!!?

浅丘   :話は聞かせてもらったっす。まだ2例なんで、可能性の段階っすけど……。

ゆうすけ :いいから教えてくれ!!

浅丘   :2回とも非正規戦で、カードを手に入れようと攻め込んで、
      1回勝った後で来たっすよね?

ゆうすけ :……確かにそうだ!

浅丘   :偶然では説明がつきにくいほどのタイミングっす。

ゆうすけ :だとしても、何のために……?

浅丘   :おそらく、裏で糸を引いてる人間の仕業っしょ。
      現段階では想像に頼るしかないっすけど、多分、勢力均衡のためっすね。

ゆうすけ :そうか……抜け駆けするな、ってことか。

浅丘   :ただ、完全に禁止事項ではないみたいっす。勝てば許されるみたいなんすよね。
      我慢するのが難しいところっす。領地が潤うと、次の戦いが楽になるっすからね。

ましろ  :エサで釣るとは、卑怯な……いや、我らもエサだったのか……。

浅丘   :でも、この仮説が見えてきただけでも大きいっすよ。
      これからは余計な危険を避けて、最短ルートでリナさんに会いに行けるっす。

ゆうすけ :どこにいるかわかったのか!?

浅丘   :残念ながら、まだっす。
      ただ、はやぶさ幼稚園まで攻め込めば、おそらく何らかの手掛かりはある筈っす。

ゆうすけ :そうか。そうだよな……。

浅丘   :あと、この仮説が正しいなら、少なくとも攻め入った先で監視されてることも示してるっす。
      だから、カードは差し出すんで、ボクらも傘下で保護してもらいたいっす。

ゆうすけ :もちろんだ。よろしく頼むぞ。

ましろ  :我輩も、見張られていたのか……。

ゆうすけ :それはそれとして、お前。さっきのはかりんに言い過ぎだぞ。

田沼   :あたしか!?

G   M:急に話題を振られて、かりんは困惑します。

浅丘   :申し訳ないっす。でも、敵を騙すにはまず味方からっすからね。

田沼   :きょーちゃんは、あたしにちゃんと持たせてくれてたんだぜ!

ゆうすけ :?

浅丘   :彼女の水着の中に、『リトルグラフ』を入れさせてたんす。

G   M:助け上げたときは、そんなふくらみはありませんでしたが。

ましろ  :確かに防水だが……。

ゆうすけ :……大事に思ってることが知られたくないから、水中で捨てさせたのか!

浅丘   :まあ、照れ臭いけど、そういうことになるっす。

田沼   :きょーちゃんに着いて行ったら、間違いはないからな!

はるひ  :……つまり、どういうことですの?

ゆうすけ :捨てる余裕の無い状況なら、GPSで、能力に頼らずに助けに行ける。

ましろ  :どこに沈んだかわかるからな。寛大な我輩の慈悲にすがる寸前に捨てたのだろうが。

はるひ  :あなた、頭いいですわね!

アキラ  :!?

浅丘   :はるひさんのかわいさの方が凄いっすよ!
      あと、雷の能力者ってのは完全に計算外っすよ。アキラさんも凄いっす!

アキラ  :……そうか? ←まんざらでもなさそう。

ましろ  :さすがだな。

浅丘   :ましろさんの服も素敵っすよ!

ましろ  :ふむ。 ←まんざらでもなさそうな表情。

G   M:浅丘は早くも、ここにいるあやめ幼稚園のメンバーの信頼を得ているように見えます。

ゆうすけ :(すっかり馴染んでるな。まあ、かりんにあそこまで慕われてた男だ。無理もないか。)

浅丘   :そして、みんなをまとめるゆうすけさんも凄いっすよね!

はるひ  :おーっほっほっほっ! あなた、よくわかってますわね!

アキラ  :……。

ゆうすけ :いや、俺は別に大したことはない。(お世辞か? まあいい。こいつの頭は不可欠の戦力だ。)

ましろ  :(タヌキめ。いつか我輩が尻尾をつかんでやろう。)

ゆうすけ :(こんな心強い味方はいないぞ。あとは、リナさえ戻ってくれば……。)

浅丘   :だって、こんなにもみんなに慕われてるじゃないっすか!

ゆうすけ :そうか?

ましろ  :(それまで、せいぜい頑張ってはるひとくっつくがいい。クックッ……。)

浅丘   :ゆうすけさんが目を覚ますまで、みんな凄く心配してたっすからね!

ましろ  :バカ! 言うなぁっ!!

G   M:顔を真っ赤にして、涙目のましろが叫びます。

ゆうすけ :(でも、何かとてつもなく重大なことを見落としてるような、そんな違和感が……。)


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