第6話・第2節・タイトル未定
G M:ゆうすけが目を覚ますと、白い天井が見えました。
視界の端の壁には、防犯カメラのモニターが並んでいます。
ゆうすけは、慌てて起き上がります。
はるひ :ゆうさま!
浅丘 :良かった! 心配してたんすよ!
G M:ゆうすけが見回すと、はるひ、いましめを解かれたかりん、ましろ、アキラ。
あとは、目の前の1人を筆頭に、見たことのない園児が数名。
ゆうすけ :……勝った、のか? あそこから?
G M:しかし、先程「心配してた」と声をかけた園児以外の全員が、浮かない顔をしていますね。
そして、ゆうすけの目に入ったのは、ラッパを持ち、望遠鏡をかついだひよこ。
起動したままだったゆうすけの『リトルグラフ』の上に、投影されています。
リナの率いるあやめ幼稚園に敗れて以来、姿を現さなかったはずのそれが。
そして、それと引き換えに、リナの姿は見えません。
ゆうすけは、『次に負けたら自分の大切な人間が1人死ぬ』という警告を思い出します。
ゆうすけ :リナはどうしたっ!!!?
浅丘 :あいつらに攫われたっす。
ゆうすけ :何だとっ!!!?
G M:よろめきながらも立ち上がり、浅丘に詰め寄ろうとするゆうすけ。
その間に、ましろが割って入ります。
ましろの手は、浅丘の手に触れました。
ましろ :よせ! こやつらは助けてくれたんだ!
マーリン :ゆうすけさん、対戦相手を指名してください。
G M:ひよこの立体映像は、事務的な調子で告げます。
今までリーダー以外を相手にしなかったナビゲーションペットが
ゆうすけの決定を聞くということは……。
ゆうすけ :……リナは俺に全部任せてさらわれた……そういうことか?
浅丘 :そうっす。
ゆうすけ :追うぞ!! どっちに逃げた!?
浅丘 :残念ながら、テレポートっす。うちの伊庭(いにわ)は、
誰かが線上を通り抜けたら感知できる能力を、常時何重かに張ってるんで。
マーリン :ゆうすけさん、対戦相手を指名してください。
ゆうすけ :なら、どうしたらいいんだよ!!?
浅丘 :彼女の代わりに、リーダーになってください。これは彼女の遺志っす。
ゆうすけ :……かりんを見捨てたように見せたのは、酷い目にあわせないためだな?
浅丘 :……今までボクのトリックを見破ってきたのは、やっぱりゆうすけさんなんすね。
はるひ :おきてたんですの!?
G M:はるひの反応を見るに、ゆうすけが気を失っている間にそういう話があったようです。
あと、れいめい幼稚園の他のメンバーがほとんど動きを見せないのにも、
今更ながら気付きます。おそらく、浅丘からそういう指示が出ているのでしょう。
ゆうすけ :生憎、直前で気付いただけだ。俺はあんまり賢くないから、知恵を貸してもらうぞ。
浅丘 :そのつもりっす!
マーリン :ゆうすけさん、対戦相手を指名してください。
浅丘 :ふじ・あじさい連合っす。
ゆうすけ :聞こえただろ! ふじ・あじさいだ! さっさと消えろ!!
マーリン :お互いの希望により、あやめ幼稚園とふじ・あじさい連合の対戦が決定しました。
G M:そう言い残し、マーリンは消えます。
後に残されたのは、ゆうすけに対して何を言っていいのかわからないあやめ幼稚園と、
浅丘に発言を禁じられているれいめい幼稚園が作り出す沈黙。
例外は、双方のリーダーのみです。
ゆうすけ :要点を頼む。
浅丘 :ボクが話し終わるまで、落ち着いて聞いて下さい。
G M:浅丘は、神妙な口調で語り始めました。
ゆうすけ :……わかった。
浅丘 :ましろさんが倒され、ゆうすけさんが倒されて、黒服が現れます。
そこで、リナさんが降参しました。
そうしたら、あのユズって女が、『皆殺しとリナさん1人が死ぬの、
どっちがいいか選べ』って。
ゆうすけ :さらわれたんじゃなかったのかっ!!!?
浅丘 :パチンコで頭部を撃たれ、倒れたところを、黒服が攫っていきました。
床に出血の跡はありませんでした。
撃たれる直前に、『後のことは、ゆうすけに任せるから。』
あとは、ゆうすけさんに『好きだった。』と言い遺しています。
ゆうすけ :………………。
浅丘 :……。
ゆうすけ :……黒服はテレポートか?
G M:沈黙が続いたところで、浅丘からの話は終わったと判断し、
ゆうすけは口を開きました。
浅丘 :はい。あと、間違いなく実体はあったっす。
G M:浅丘は、元の口調に戻りました。
ゆうすけ :幻覚じゃないとすると、あいつの能力か。
浅丘 :……というと、どっちかの能力を知ってたんすか?
ゆうすけ :いや、聞いてただろ? 男の方は戦ったことあるんだ。
その時も黒服は出てきたから。
浅丘 :……おかしいっすね。その男、小さい声だったっすけど、確かに言ってたんすよ。
『何回見ても、気味の悪いやつらだぜ』って。
ゆうすけ :あいつが出したんじゃないとしたら、仲間を呼ぶだけの能力、ってことか?
浅丘 :でも、お互いに警戒するそぶりもないんすよね。
ゆうすけ :お互い裏切っても意味が無いほど、裏になんかでかいのがいるのか。例えば、執政官とか。
浅丘 :執政官のやり方とは、色々と毛色が違う気がするんすよね。
ゆうすけ :執政官が全部糸を引いてるんじゃないのか?
浅丘 :色々と妙なんすよ。そもそも、執政官サイドなら、車で来るっしょ?
ゆうすけ :そっちには車で来たのか?
浅丘 :歩いては来ないっしょ。そもそも、執政官がこんな酷い状態を放置するとは……。
ゆうすけ :執政官なんか信用できるか!!!
浅丘 :ボクも同感っすけど、その話は後にしましょう。
それより、もっと大事なことがあります。
ゆうすけ :何だ?
浅丘 :話はさっき、みんなから聞かせてもらったっす。
ボクの予想通りなら、今から継承戦争が起こるんで。
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