第5話・第11節・タイトル未定





G   M:緑色のプールで溺れかけ、今にも沈みそうなかりん。
      その目の前に、色のついたひも状の物が投げ入れられます。
      よく見ると、ましろのなわとびだとわかります。いつの間に結んだのか、
      2つ分の縄が結び付けられていて、5メートル近い長さになっています。

ましろ  :どれ、寛大な我輩(わがはい)が助けてやろう。

G   M:なわとびのもう一端をもったましろが尊大に宣言し、
      かりんは一瞬躊躇した後に、なわとびの取っ手を掴みます。
      このように、つかまれるものさえあれば、無理にもがくこともないですし、
      溺れることはありません。

はるひ  :その手がありましたのね!

アキラ  :……!

ゆうすけ :ましろ! よくやったぞ!!

G   M:ゆうすけは、かりんに引っぱられて落ちないように、
      ましろを後ろから抱きかかえる姿勢をとりました。

ましろ  :ふ、触れるなっ! 我輩は、汝(なんじ)に興味など無い!

ゆうすけ :悪い。女の子なのに、配慮が足りなかった。

リナ   :……。

ましろ  :そ、そうだ。ところで汝(なんじ)、降参するのだな?

かりん  :だ、だれが降参なんか!

ましろ  :クックックッ。そうかそうか。我輩(わがはい)は、汝の仲間の能力を所望する。

かりん  :……え?

ましろ  :仲間の能力を教えろ。素直にしゃべらないと、手が滑るかもしれないぞ?

かりん  :な、仲間を売るぐらいなら……。

ゆうすけ :おい、ふざけるな! さっさと助けるぞ。

リナ   :アキラとゆうすけは、ましろの後ろからなわとびを引きなさい。ましろは少し前へ。

アキラ  :……わかった。

ましろ  :ボスの仰せのままに。

ゆうすけ :そうだよな。最初からそうするべきだったよな……。

G   M:ましろ、ゆうすけ、アキラの3人によって、なわとびを掴んだかりんが
      プールの縁(ふち)まで引っぱられます。ゆうすけは、自分が濡れるのも構わず、
      かりんをプールサイドへと引き上げました。

かりん  :きょーちゃん……や、約束は、まもった、ぞ……。

G   M:かりんはそうつぶやいたきり、プールサイドに横たわります。
      ひどく疲れているだけで、命に別状はなさそうです。
     
はるひ  :ところでゆうさま……。

ゆうすけ :なんだ?

はるひ  :やめさせたら、けっこんしてくれるんですわよね!?

アキラ  :ぶっ!!!?

ゆうすけ :言ってない! それは絶対に言ってないぞ!

リナ   :……。

G   M:ぐったりとプールサイドに横たわるかりんを背に、
      騒ぎ出すゆうすけたち。
      その間に、かりんはふらふらと立ち上がります。
      誰もそちらを見ていないことを確認し、ゆっくりとアキラに近づいたところで……。

かりん  :!?

G   M:ましろはなわとび、はるひはアメ玉、リナはサイコロを構え、
      一瞬のうちにかりんを取り囲みました。

ましろ  :汝、そうまでして死に急ぐか……。

はるひ  :やっぱり、ゆうさまはあますぎですわ!

リナ   :けが人は安静にしてた方がいいかしら。

ましろ  :クックックッ。奇遇だな。どちらも同感だ。

かりん  :……こ、降参、だ……。

G   M:さすがにここまでされては、どうにもならない実力差を痛感します。
      ましろはマントの下からなわとびを取り出し、抵抗を諦めたかりんを後ろ手に縛ります。

ましろ  :さて、ここまで抵抗するということは、
      服の下に何かを隠している可能性は高いな。脱がすか……。

かりん  :ええっ!? マジか!? や、やめろ……!

G   M:スクール水着のかりんは身をよじりますが、既に後ろ手に縛られているため、抵抗できません。

リナ   :あなたの仲間の能力、教えてくれるかしら?

かりん  :……ぬがすなり殺すなり、好きにしろ!

リナ   :仕方ないわね。こうなったら……。

はるひ  :ま、まさか、あれをやるんですの……?

G   M:そこに、マイクを通して涼しげな声が聞こえてきます。

浅丘の声 :うーん。浮き輪を手放したのは計算外だったっすね。

かりん  :きょーちゃん!

リナ   :んふふ。高見の見物とは、いいご身分ね。

浅丘の声 :ボクの大切な仲間を助けてくれて、ありがとうございます。

G   M:ゆうすけは、浅丘の声に底知れない軽薄さを感じます。
      そして、こいつだけは絶対に信用してはいけないという確信を抱きました。

ゆうすけ :どの口が言ってるんだ!!?

浅丘の声 :え? もちろん、ボクのこの口っすけど。

ゆうすけ :……お前らの中に、探知系の能力者はいるのか?

浅丘の声 :いるっすけど、沈んだ味方の位置を探る能力じゃないっすよ。

ゆうすけ :最初から使い捨てる気だったってことか……。

浅丘の声 :あ、そういや、それもう要らないんで、好きにしていいっすよ。

ゆうすけ :……!?

かりん  :きょーちゃん……。

リナ   :話は平行線ね。今日はもう遅いんだけど、とりあえず、これ持って帰ってもいいの?

浅丘の声 :もちろんいいっすよ。そんなの置いてかれても使えないんで。

かりん  :……。

G   M:かりんは、今にも泣き出しそうです。

リナ   :……多数決はダメだって言われてるんだけどね。

はるひ  :?

リナ   :あの浅丘ってのがリーダー失格だと思う人、手を挙げなさい。

G   M:自らも軽く挙手しながら、リナが宣言します。
      ましろはそれを見てゆっくりと手を挙げ、はるひとアキラもそれに続きます。
      最後に、ゆうすけも大きく右手を挙げました。

ゆうすけ :あいつだけは、ぶん殴らないと気が済みそうにない。

G   M:ゆうすけは、挙げていた右手を強く握ります。

浅丘の声 :そうっすか。遠慮は要らないんで、気が済むまで殴ってほしいっすね。
      なんなら、ボクの大切な仲間を代わりに殴ってもらってもいいっすよ。      

リナ   :満場一致ね。日が変わろうと、全力でぶっ潰すわよ。

ましろ  :もういいだろ。せめて、あいつがどこにいるか教えろ。

かりん  :……コントロール・ルーム……。

G   M:涙を流しながら、消え入りそうな声でかりんがつぶやきます。

浅丘の声 :……えっ!?

G   M:そして、今までよりもずっと小さい声でしたが、
      マイクを通して、浅丘の驚きの声が確かに聞こえました。

はるひ  :おーっほっほっ! あっさりうらぎられましたわね! いいきみですわ!

アキラ  :……。

ゆうすけ :……お前だけは、絶対に許さないからな!!!

G   M:ゆうすけは天井に向かって叫びますが、浅丘の返事は聞こえません。
      その頃、あやめ幼稚園とれいめい幼稚園の両者にとって、
      想定外の事態が起ころうとしていました。


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