第5話・第10節・タイトル未定





G   M:アキラが、能力によって帯電させたピコピコハンマーの頭を、
      かりんが潜っている緑色のプールに突っ込んでから、十数秒後。



・まゆみ先生からのおねがい

よいこのみなさんへ

おみずのちかくで でんきをつかっては いけません
あぶないから ぜったいにやめましょう
ぬれたてで でんきをつかうものにさわるのも いけません
てをあらったら きれいにふきましょうね




一同   :……。

かりん  :あべっ! なっ、なに!?

G   M:水面に顔を出したかりんですが、いつの間にか赤い水泳帽は脱いでいます。
      もしかすると、脱いだ帽子を使って撹乱するつもりだったのかも
      しれませんが、もはやそれどころではありません。
      最初は気のせい、次に体調不良と誤認し、いよいよ痛みが
      激しくなってきたところで、たまらず水面に顔を出したかたちです。

ゆうすけ :雷の能力で水中全体に攻撃してる。降参しろ!

かりん  :いたっ、いたいっ! と、とにかく、上がって……。

G   M:かりんはワニにつかまってプールサイドに向かいます。
      しかし、かりんには電気をまとった水の中で、痛みをものともせずに
      泳げるほどの経験も根性もありません。潜水を放棄したかりんは、
      一緒に進むのにより大きな推進力を必要とするワニを手放し、岸へと向かいます。

はるひ  :おーっほっほっほっ! 上がったところで、アキラくんは空手もやってますのよ!

ゆうすけ :(なら、ピコピコハンマーじゃなくて素手で戦えよ……。)

アキラ  :こうさんしろ!

G   M:プールの縁(ふち)にしゃがみ込んだまま、
      武器に雷をまとわせる能力を維持しつつ、アキラは叫びます。

かりん  :だ、だれが、降参……。

ゆうすけ :降参させろっ!!

G   M:しかし、返事はありませんでした。もはや静かな水音も聞こえず、
      もがきながら前に進むかりんの立てた、激しい水音が聞こえるだけです。

ゆうすけ :……おいっ! 聞こえてるんだろっ!?

はるひ  :……?

浅丘の声 :……かりんは、ボクのために死んでくれるんすよね?

かりん  :……うばっ……うぶ…うんっ……。

ゆうすけ :お前っ!!!

はるひ  :こいつ、正気じゃないですわ! 水中でしとめますわよ!

アキラ  :……。

G   M:アキラは、渋い表情のまま、姿勢を維持します。

ゆうすけ :はるひ。止めさせてくれ、頼む!!

はるひ  :アキラくん……

アキラ  :わかった!

G   M:アキラは、はるひが言い終わる前にハンマーを水面から上げます。
      しかし、かりんは水上でもがくだけで、ほとんど進めない状況です。

ましろ  :(小声で)汝(なんじ)も宿命に殉じるか……。

リナ   :アキラ以外が戦ったら、こっちがああなってたわよ。

かりん  :……あべれ、おぼ…あべれる……。

G   M:最初はワニと一緒に中心近くにいたので、縁(ふち)まではまだ
      4メートルほどの距離があります。
      浮きを持っていたとはいえ、かりんも元々は泳ぎが得意だったんでしょうけど、
      電撃を受けて溺れかけながら進んだため、体力を使い果たしたようです。
      結果論ですが、慌てて溺れやすい水面に上がってしまったことと、
      体力が残ってる間に素早くワニを手放したこと、
      そして、すぐに降参しなかったことは重大な判断ミスでしょう。
      彼女に思慮深さがあったなら、あるいはもっと実戦経験があったなら、
      こんな酷いミスはしなかった筈です。

かりん  :……いやら…死に、たくな……。

ゆうすけ :くそっ! こうなったら、俺が……。

リナ   :やめなさい。あなたまでおぼれるわよ。

ましろ  :一人抱えてこの距離を泳ぐのは、この体ではまず無理だぞ。

ゆうすけ :(どうしたらいいんだ!!?)


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