第5話・第8節・タイトル未定





G   M:黒い矢印を前に、リナは決断します。

リナ   :もう夜も遅いわ。時間がもったいないから、矢印の方に行ってみるわよ。

ゆうすけ :そうだな。悪質な罠を仕掛けるなら、入り口の扉でやればいいわけだしな。

G   M:では、矢印に沿って進むと、プールゾーンに着きます。
      男性用の更衣室へと続いていますね。

はるひ  :ええと、じゃあ、わたしはむこうに……。

リナ   :行かなくていいわ。ぬがないんだから。

ましろ  :その手があったか。

はるひ  :し、知ってましたわよ!?

G   M:ご丁寧にも、更衣室の床にも同じような矢印がありました。
      そして、更衣室では水の音が聞こえます。
      どうやら、市内がほぼ無人になった今も、プールは稼働中のようですね。
      コインロッカーなどがある男性用更衣室を抜け、一行はプールゾーンへたどり着きます。
      そこには、流れるプールや子供用の浅いプールなど、
      平常通りに水がたたえられた様々なプールがあります。
      先ほど聞こえた水音の示すように、水を入れたままで大人たちが疎開してそれっきり
      というわけではなく、ちゃんと新しい水が流れているようですね。
      さて、ゆうすけたちの目の前にも競泳用の25メートルプールがあるわけですが、
      水の色が妙です。そのプールだけ、底が全く見えそうにない濃い緑色です。
      あえて形容するなら、藻のような……カエルとかがいそうな色です。
      そして、ご丁寧にも、コースロープは取り払われています。

ゆうすけ :学校かよっ!?

G   M:そして、緑のプールの中央には、ワニが浮いているように見えます。

一同   :!!!?

G   M:よく見ると、ビニール製の浮き輪ですね。ワニ型の。
      プールからは何か森のような香りがしますし、おそらく、
      塩素の代わりに入浴剤をプールに入れたとか、そんな感じでしょう。
      そして、ワニの傍らに、スクール水着に赤い水泳帽の園児が顔を出します。
      ゴーグルをつけていて顔はわかりにくいのですが、かすかに見える
      スクール水着の肩のパーツを見るに、おそらく女の子でしょうね。

ましろ  :……あの男よりはマシか……。

ゆうすけ :プールと入浴剤か……危険すぎる組み合わせだな……。

一同   :あっけに取られる一行の前で、水面から顔を出した園児が口を開きます。

かりん  :よく来たな! あたしはかりん。さあ、1対1で勝負だ!

ゆうすけ :俺たちは、あやめ幼稚園だ。今日は……

声    :……最初に言っとくけど、話し合いの余地はないっす。

かりん  :きょーちゃん!

G   M:突然、天井のどこかにあるであろうスピーカーから、声が聞こえます。
      しかし、姿は見えません。おそらく、プールの監視カメラで覗いている上、
      何らかの方法で会話も聞き取ってるんでしょう。
      元々、ほぼ無人の室内プールですから、声が響きますしね。

声    :ボクはれいめい幼稚園のトップの浅丘っす。話し合いの余地はありません。

ゆうすけ :何でだ!? まずは話を聞いてくれ!

声    :目的がカードなのはわかってるんで、彼女と1対1で戦ってください。

ゆうすけ :それだけじゃない。お前ら、食糧そんなに無いだろ!?

声    :無いっすけど、強いところが味方になれば、コンビニに取りにいけるっすからね。

ゆうすけ :そうだ! 

声    :現に、ここまで来られた実力がある、って言いたいんすね?

ゆうすけ :その通りだ!

声    :そして、支配下に置かれた園児の待遇は見ればわかる、と。

ゆうすけ :そうだ! わかってるじゃな……!!?

リナ   :まさか、心を読まれてるのっ!!!?

ましろ  :そんな。ボスの『リトルグラフ』には、何も……。

声    :さあね。名前が表示されない能力もあるっすからね。



夜想曲(ノクターン)発現! 『海底羅針盤(サブマリン・パイレーツ)』!!



G   M:リナが床と水平に持っていた『リトルグラフ』に注目が集まったところで、
      能力名が表示されます。例によって漢字は読めないものの、
      文字列の意味はなんとなくわかりますね。
      気がつくと、プールには例のワニがいるだけで、女の子の姿は消えています。

リナ   :おそらく、水中で戦う能力ね。

はるひ  :こんなところに入るなんて、いやですわ!

アキラ  :……。 ←頷く

ゆうすけ :おい! カードを賭けないんなら、非正規戦だ。
      話し合いに応じない奴らのルールに従う必要は無いんだぞ。

声    :でも、うちの倍以上持ってるのは知ってるっすからねー。

ましろ  :そういえば、2倍以上持ってると、人数を指定できるんだったな。

ゆうすけ :持ってるだけじゃなくて、賭けなきゃ駄目だけどな。

はるひ  :ゆうさま、そいつをつかまえれば、ひとじちにできますわ!

G   M:はるひは嬉々として、緑色のプールを指差します。
      もっとも、どこにいるのかわからないんですが……。

アキラ  :……。

ましろ  :(我輩よりワルだな……。)

声    :生憎、カードが手元に無いんすよね。どこ行っちゃったかなー?

はるひ  :まさか、ゆうさまと同じことするつもりですの!?

リナ   :これほどの相手がわざわざ戦力を分散するなんて、凄い自信かしら。

ゆうすけ :最低1人と刺し違える計算か……。

声    :ボクも鬼じゃない。彼女に1対1で勝ったら、話くらいは聞くっすよ。

ゆうすけ :(思った以上に曲者だな……。)リナ、決断を頼む。

リナ   :わかったわ。


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