第5話・第7節・タイトル未定





G   M:リナ、ゆうすけ、はるひ、アキラ、ましろの5人は、
      まゆみ先生が運転する送迎用のワゴンに乗って、
      れいめい幼稚園よりさらに南西にある『アクアハウス』のある丘の手前に着きます。
      いくぶん涼しくなった夏の夜空には、欠けるところのない満月が見えます。
      郊外の小高い丘の上に建てられた建物は、月の光を受けて寂しげに佇んでいます。

ゆうすけ :先生、ここでいい。ありがとう。

リナ   :世話になったわね。

まゆみ先生:いえいえ〜。夜だから、特別ですよ〜?

ましろ  :あの2人も、こうやって送ってやればよかったのではないか?

はるひ  :その手がありましたわね!

アキラ  :……!

ゆうすけ :いや、ドア開けて、何も出てないのにドア閉めたら怪しすぎるだろ。

リナ   :『壁に耳あり障子に目あり』、よ。

ましろ  :そうか……。

はるひ  :言われてみればそうですわね。

まゆみ先生:それではみなさん、気をつけてくださいね〜。

ゆうすけ :ああ、わかった。

リナ   :危ないって感じたら、逃げていいわ。

まゆみ先生:わ、わかりました〜。

G   M:一行は車を降り、建物の手前にある駐車場へと向かいます。
      さて、れいめい幼稚園の人数規模はわかりませんが、
      駐車場に足を踏み入れていない現在、人影は見当たりません。
      ちなみに、れいめい幼稚園に用意されていた朝食は、30人分ほどですね。

ましろ  :もったいない……。

ゆうすけ :交換できる奴らがいる以上、食器の数も当てにはならないな。

G   M:問題は、食糧を調達できるポイントが、この建物の近くにはないということです。
      れいめい幼稚園のコンビニからごっそり持ち去ったとして、
      保存できる食糧は500食分もは無い筈です。

はるひ  :ご、ごひゃくひくさんじゅう? ゆ、ゆびが足りませんわ……。

G   M:園児は胃があまり大きくないですし、1日3食食べないと足りません。
      いざというときに最低限戦える程度の体調を維持するだけでも、
      1人あたり1日3食必要でしょう。

リナ   :仮に5人で独占したとしても、1日15食は必要ってことかしら。

ましろ  :大体一ヶ月くらいか。我輩でもわかるぞ。

G   M:そして、れいめい幼稚園の建物に誰もいなくなったことが露見すれば、
      コンビニを実効支配したがる園も出てくるでしょう。
      その可能性を考えると、あそこまでの偽装をした上で、
      食糧を取りにコンビニに戻ることは考えられません。
      特にゆうすけやましろからすれば、食糧を得られる拠点を
      わざわざ放棄するところが、理解に苦しみますね。

ゆうすけ :ここは、コンビニ付きの拠点を放棄してまで来るところなのか?

はるひ  :パンがないなら、キャンディを食べればいいんですわ!

ゆうすけ :……はるひの能力って、思った以上に凄かったんだな。

はるひ  :さすがゆうさま、わかってますわね!

アキラ  :……。

リナ   :さっさと行くわよ。

G   M:一行は、アスファルトの駐車場に足を踏み入れました。
      車が一台も停まってないのが清清しくもあり、不気味でもあります。
      駐車場や建物には、見張りの姿は見えません。

ゆうすけ :まずは話し合いが目的だ。正面から建物に入るぞ。

G   M:正面玄関は自動ドアなわけですが、拍子抜けするほどあっさり開きます。
      電源を切ることによって侵入を防いでいた黒点領とは対照的ですね。入りますか?

ましろ  :電源を切らないなんて……我輩(わがはい)よりバカなのか?

ゆうすけ :自分の幼稚園にはあれほど偽装してた奴らが、何でだ……?

リナ   :開けっ放しってことは、ここが見張られてる覚悟はした方がよさそうね。

ゆうすけ :そうだな。

はるひ  :なんでですの?

ましろ  :気がつかないうちに入り込まれたら、大変だからな。

はるひ  :ひまわり幼稚園なんて、開けっぱなしでしたわよ。

ゆうすけ :そうだな。門も正門と裏門があるし……。

G   M:一行が正面玄関から中に入ると、無人のホテルのフロントが目に入ります。
      『温泉保養施設』と銘打たれたこの施設は、早い話が、
      プール・スーパー銭湯・ホテルが併設されたようなものです。
      プールはもちろん水着で入れますが、銭湯部分は裸で入ります。
      プールは男女一緒、銭湯は男女別ですね。
      建物の中が3つのゾーンに分かれていて、かなり広いです。
      もちろん、監視カメラは目の前のフロントをはじめ、いたるところにあります。
      赤いランプがついているところをみると、どうやらカメラは稼働中のようですね。

リナ   :動画で監視なんて、無粋(ぶすい)かしら。

G   M:愛用の赤いベレー帽をかぶったリナは、いつものカメラを右手に持って呟きました。
      なお、カメラは落とさないよう、紐で首から掛けてあります。
      そして、左手にはスイッチをオンにした『リトルグラフ』が。

ゆうすけ :さて、どっちに行くかだな。

G   M:少し迷っている間に、一行は、床に貼られた黒いビニールテープの存在に気付きます。
      どうやら、3枚のテープで矢印が描かれているようですね。
      矢印の先を見ると、ある程度の間隔でまた矢印があり、どこかに導いているようです。
      
はるひ  :こっちにすすめ、ってことですの?

アキラ  :……わなだ!

ましろ  :我輩にもわかるぞ。

ゆうすけ :ボス、どうする?

リナ   :そうね……。


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