第5話・第6節・タイトル未定





G   M:総社市の南端。れいめい幼稚園の領外の山中にある、温泉保養施設『アクアハウス』にて。
      熱めのお湯に使っている浅丘がいる男湯に、服を着たままで、
      血相を変えた伊庭(いにわ)が駆け込んできます。

伊庭   :浅丘さんっ!!!

浅丘   :ああ、侵入者っすね。第一に、ゆうなにタオルの用意を指示。第二に、まゆを起こして。

伊庭   :なんで言う前に分かったんですか!?

浅丘   :におが慌てすぎっすからねー。敷地が広いっすから、直線距離でもだいぶあるっすよ。

伊庭   :あなたは落ち着きすぎです!

浅丘   :ボク、言ったっしょ? どうせ『みんな』戦うだろうからって。

伊庭   :……!!?

浅丘   :どうせ徒歩っしょ? なら、執政官サイドの敵じゃない可能性は高いっすね。

伊庭   :徒歩ですけど、今までこんなことなかったでしょ!!?

浅丘   :もちろん、結構な事態だってのはわかってるっすよ? だから、訓練してたっしょ?

伊庭   :ですけど、侵入者は5人です。一直線で、この建物に……。

浅丘   :了解っす。第三に、かりんに戦闘準備を指示。全滅させる気でやらせてください。

伊庭   :やはり、田沼はコントロール・ルームには呼ばないということですか?

浅丘   :かりんは戦いたがってたっすからねー。この状況なら、一対一でやらせていいっしょ。
      万が一やられたところで、まだまだ手はあるっすからねー。

伊庭   :でも、田沼がやられたら、数的不利に……いえ、あなたを信じます。

浅丘   :ありがと、にお。

伊庭   :別に感謝なんて要りません。皆、生き残るために、あなたに賭けたんですから。

浅丘   :におにだけは話すけど……敵が来たの、ボクの計算より早かったんっすよね。

伊庭   :でも、浅丘さんを上回る策士、ってのはあり得ませんよね?

浅丘   :ボクなんか、全然大したことないっすよ。
      ま、今回のはイレギュラーか、ボクに近いのが向こうにいるか、っすね。

伊庭   :もし後者だと、非常にまずいですよね?

浅丘   :うちは、武闘派が2人しかいないっすからねー。

伊庭   :わたしを数に入れないでください!

浅丘   :……まさか、こんなに早いとはね。
      こんなことなら、におにもっと甘えとくんだったなー。

伊庭   :甘えなくて構いません。リーダーなんですから、ちゃんとしてください!

浅丘   :もう。ボク、ちゃんとやってるよ。……あと、お願いしていい?

伊庭   :……一応言ってみてください。

浅丘   :もし敵のカード取れたら、みんなにナイショで甘えていい?

伊庭   :……勝手にしてください。念のために言っておきますが、それは別にどうでもいいんですが、
      本当に真面目にやってくださいね? 皆の安全のためですからね?

浅丘   :うん。そろそろ準備しようかな。確認、いい?

伊庭   :本城にタオル、春野を起こす、田沼に戦闘準備、それ以外の全員、コントロール・ルームへ。

浅丘   :さすがにお。あと、かりんに「期待してる」って伝えといて。

伊庭   :わかりました。

浅丘   :じゃ、もうちょっとしたらコントロール・ルームに行けるから、先に待ってて。

伊庭   :早く来てくださいねっ!

G   M:伊庭は、走り去っていきました。






G   M:順に指示を終え、伊庭は田沼の部屋へと到着します。
      部屋の中には、薄い黄色の園児服を着た女の子が、
      空気で膨らませたビニールのワニを小脇に抱えています。
      原寸大のワニよりは小さいですが、よくある動物型の浮き輪ですね。

田沼   :ついに出撃かっ!?

伊庭   :残念ながら防衛です。侵入者を確認したので、
      浅丘さんの指示通り、今すぐ戦闘配置についてください。

田沼   :さすがきょーちゃん! ……? 伊庭、武器はどうしたんだ?

伊庭   :浅丘さんの指示は、田沼1人での迎撃です。

田沼   :一人ぃ!? 相手も1人なのかっ!?

伊庭   :いえ、5人ですが、浅丘さんの指示が、
      一対一に持ち込んで、田沼1人での迎撃なんです。

田沼   :死ねってことだな! まっ、きょーちゃんの作戦なら、間違いはないだろ。出るぞ!

G   M:事実上の特攻命令にもかかわらず、田沼は前向きな表情です。

伊庭   :はい。あと、伝言があります。「全滅させる気で戦ってね。期待してるよ。」だそうです。

田沼   :っしゃ! きょーちゃんのためなら死ねるぜ!
      3人は殺すから、きょーちゃんのことは任せたぞ!


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