第5話・第2節・タイトル未定
G M:ゆうすけたちが帰りが遅い2人を心配している頃、れいめい幼稚園の建物内では……。
タイガ :出て来い! いるのはわかってんだぞ!?
シャオ :ねぇ、ホントにいるのー?
G M:どこかの奥地にいる部族のような仮面をつけた男の子が弓矢を放ちながら叫ぶと、
薄紫色のグラデーションの長い髪を頭の上で2つに結んだ女の子が、
投げやりな調子で疑問を投げかけます。
タイガ :風っていうか、あの時、なんかとすれ違った。見えなかったけど。
シャオ :なら、なんですぐ言わないのよ!?
タイガ :早く帰りたかった。
シャオ :なら最後まで黙ってなさいよ! アタシだってこんなブキミなとこ居たくないわよ!
すぐる :まあまあ。ドアも閉めたし、ここならにげられないだろう。
あとは、しらみつぶしに調べるだけだ。
G M:2人を諌めたのは、おもちゃのプラスチック製ドリルを持った男の子。
園児にしては大きな鞄を背負っています。
タイガ :思いついた! シャオの能力で色つけたらいいじゃん!
シャオ :ムリムリ! 相手が同意してないとムリよ。
タイガ :イマイチな能力だなー。
シャオ :何よ!? タイガなんか、眠らされないだけでしょ!
すぐる :2人とも、よすんだ。
G M:そう言うと、ドリルの男の子は床に手をつきました。
すぐる :……何もうまってはいないようだ。消えるだけ、か?
タイガ :しょうがないなー。なら、こうやって……
G M:タイガは、置いてあった机を、両手で軽々と持ち上げました。
脚を折りたためるタイプの軽い机ですが、1人で軽々と持ち上げられる園児は、
そう多くはないでしょう。
すぐる :よせ! キンダイチさんにおこられるぞ!
タイガ :へいへい。
G M:タイガは、渋々といった顔で、机を置きます。
シャオ :男って、どうしてこう暴力的なのかしら?
タイガ :男のズボン下げるやつが言うなよ。
シャオ :アンタのなんか下げないわよ。べーっ、だ!
すぐる :2人とも、いい加減にしろ。
タイガ :すぐるが言うんなら、わかったよ。
シャオ :……はーい。あとは、その辺に攻撃してみたらいいってこと?
すぐる :そうだ。タイガは音にも注意してくれ。
G M:さて、先程道ですれ違ったとき、3連クリティカルを出したタイガは、
何者かとすれ違ったことに気付いていました。
そして、少し後に他の2人にそれを告げたことから、今回の事態は始まりました。
実は、競技中に他を出し抜いてれいめい幼稚園と交渉することについては、
さくら幼稚園のボスもゆうすけと似たようなことを考えていたわけです。
しかし、れいめい幼稚園のこの現状は、双方にとって誤算でした。
そして、先の戦いで併合されたさくら幼稚園のぞみ組の3人は、
古参メンバーよりも弱い立場にあります。
したがって、不可抗力にせよ、目的を達成できないのはまずいと考えます。
そして、そこに沸いて出たのが、今回のすれ違い遭遇です。
相手の所属すらわからないものの、おそらく透明化の能力者で、
進路は高確率でれいめい幼稚園。
さらに、襲ってこなかった以上は、こちらより弱いと判断します。
そして、開けっ放しになっていたれいめい幼稚園に再び侵入し、内側から素早く施錠。
これで、もし建物の中に姿を消す能力者がいたとして、
消えたまま誰にも気付かれず外に出ることは不可能な状態を作り出しました。
実際、あやめ幼稚園の2人は、姿を消したまま建物内に閉じ込められています。
すぐる :2人とも、あせるなよ。物はこわすなよ。
G M:かくして、この状況に至るわけです。
さて、以上は大部分において正しい推理なのですが、いくつかの誤算があります。
一つは、1人の能力で2人以上が消えられる可能性を全く考慮に入れていないこと。
とはいえ、仮に相手が3人以上ですと、あの場で襲われててもおかしくない状況ではありました。
ただ、もう1人未知の能力者がいるという可能性を考えなかったのには、
理由があります。シャオの能力は生体染色であり、3人の抱いた
大まかなイメージとしては透明化とかなり似ています。
シャオの能力は持続時間こそ長いものの、色をつけることしかできず、透明化は不可能です。
つまり、髪を染めたりするだけの趣味的な能力。それが頭にある限り、
2人以上の姿を消せる能力者なんて、強力すぎて考えつきもしないのです。
ですが、シャオの能力はレベル4、ヒビキの能力はレベル6。
レベルに絶対的な差があるので、同列に比較するのがそもそもの間違いなんですが。
しかし、実力を低く見積もられたのは、あやめ幼稚園の2人にとっては不幸でした。
2人とも戦闘系能力ではないので、仮に一撃不意打ちを入れたところで、
2人で3人を相手に勝てる確率は低いです。そして、施錠によって逃げ足も封じられました。
さらに、透明化したまま移動できる能力なのはバレたも同然です。
しかし、さくら幼稚園には、二つめの誤算があります。
それは、音を消せる能力者の存在を全く考慮に入れていないことです。
ライムの能力は、半径約10メートルの音を全て消す能力。
特定の者が発する音だけを消すことはできませんが、能力のオンオフは自在。
相手の会話が止まったタイミングを見計らえば、足音を消して移動することができるのです。
つまり、さくら幼稚園は「足跡が全く聞こえない以上は相手がほぼ移動していない」
というのを前提に探しますが、実際は、あやめ幼稚園の2人は、
隙を見て音を消しながら、慎重にほんの少しずつ動き回っているのです。
したがって、あとは2人対3人の読み合いになります。
姿が透明な上、少しずつ移動もできるあやめ幼稚園が基本的に有利ではありますが、
もし見つかれば高確率でアウト。2人の息が合わずに手が離れたり、
音を消すタイミングを間違ったり、音が消えてないタイミングでリナから通信が来てもアウト。
結局のところ、あやめ幼稚園側はどちらかが出目1でアウトという厳しい状況です。
ただし、さくら幼稚園側は、ここに誰かがいるという確信が持てないでいます。
入念に探す反面、見つからなければ諦めることでしょう。
したがって、見つかるかの判定は1回勝負です。
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