第4話・第30節・タイトル未定





その後、あやめ幼稚園一行は、建物内にあったおもちゃをどっさりと抱え、
周囲を伺いつつ黒点領の拠点を脱出します。
そして、あやめ幼稚園の隠れ家の喫茶店へ。
建物の入り口では、リナの事前連絡を受けていた帽子にサングラスのリョウが、
一般園児やまゆみ先生とともに出迎えます。



リョウ  :ボス、お帰りなさい。無事でなによりネ。

一般園児 :お帰りなさい、ボス! あ、おもちゃだ!

まゆみ先生:みなさん、おかえりなさ〜い。

G   M:他の園児と違って、まゆみ先生の手にはトランプが。
      今までトランプしていたようです。ずっと待ってた体(てい)をしていた
      リョウや一般園児ですが、まゆみ先生のせいでバレバレです。
      そんな感じで、まゆみ先生はもはや完璧になじんでますね。
      まるで、ここにいるのが当然といったように。

ましろ  :(ボソッと)いい先生、みたいだな。

ケイジ  :(小声で)そうであるな。

リナ   :ただいま。心配かけたかしら?

リョウ  :大丈夫ヨ。それより、ライムとヒビキがまだネ。

リナ   :走れない能力だから無理もないけど……シェマハ、位置情報!

G   M:リナは自らの『リトルグラフ』を床に置きつつ、命令します。
      ライムは周囲の音を消す能力、ヒビキは自身と手をつないだ者の姿を消す能力なので、
      2人で組めば、かなり精度の高いステルス性能を発揮します。反面、集中してないと
      使えないので、姿を消したまま戦うことはできませんし、『リトルグラフ』の操作もできません。
      ヒビキの能力は、能力の対象とそれに隣接して付属する物品も消えるので、
      自分や手をつないだ相手の姿も見えないのはもちろん、
      『リトルグラフ』で送られた文字情報を読むこともできません。
      また、ヒビキの能力だけなら『リトルグラフ』での音声通話は可能ですが、
      ライムの能力で音声が消されているため、お互いに声が届きません。
      ただし、『リトルグラフ』をオンにして持っているだけなら害はありませんので、
      お互いに許可していれば、位置情報を受け取ることはできるんですよね。
      さて、リナの声に応じて、床に置かれていたリナの『リトルグラフ』から、
      望遠鏡を持ち、ラッパをかついだネズミの立体映像が現れます。

ゆうすけ :(見分けはつかないが、あれは、マーリンのラッパだよな……?)

G   M:さて、位置情報ですが、2人の位置をリアルタイムで示す点は、
      れいめい幼稚園の敷地内ですね。行って帰るだけなら時間がかかりすぎなんですが、
      そもそもの任務がれいめい幼稚園との交渉なので、不自然ではありません。
      ここで、かしこさでチェックを。(ころころ)ゆうすけがクリティカルで17、
      ケンが8、はるひが奇跡的な5連クリティカルで34、アキラが5、リナが6、
      リョウが6、ケイジが9、ましろが6、と。
      はるひとゆうすけは気がつきます。
      2人の位置を示す点を注意深く観察すると、妙ですね。
      2つ並んで、ゆっくり歩くような速度で動き回っています。
      手をつないでいるとしか考えられない、ごく近い距離感です。
      ということは、普通に考えて、能力発動中でしょう。交渉しているとは考えられません。
      しかも、あっちに行ったりこっちに行ったりと、何かから逃げ回るかのような動きです。
      集中が必要な以上、詳しい調査はできませんから、基本的に歩き回るメリットもないはずです。

はるひ  :2人の回りに何かいますわ!

ゆうすけ :だな。この動き、どう考えても能力発動して潜伏してる。

G   M:それだけでは、周囲に全く危険が無く、2人で隣り合って何かを調べているという可能性が
      全く無いとは言い切れません。例えば、周囲が明らかに無人で、リナに対する連絡は
      自重したものの、能力をオフにして、発見した手がかりを急いで調べている状況です。
      とはいえ、ライムの能力を考えるとリナからの通信で支障が出るケースは考えにくいため、
      リナとの音声通話はオンにしたままですが。先程のリナたちのやり取りの音声を受け取って、
      急いで取って返さないということは、少なくともその時点では、
      ライムの音を消す能力はオンだった可能性が高いといえます。
      ですが、その時点で能力はオン→今はオフという可能性もあります。
      それを確認するには……。

リナ   :ライム、応答しなさい!

G   M:……しばらく待っても、応答はありません。
      通話はオン状態のままですから、ライムの能力はオンと考えられます。
      もちろん、ライムが誰かに『リトルグラフ』を奪われていなければの話ですが。

はるひ  :気づかれてますわよね。あのときのわたしみたいに……。

アキラ  :……。

ケン   :アニキもはるひさんもイヤっすねー。まさか、気付かれるわけないじゃないっすか。

はるひ  :わたしがおそわれる直前には、見えてましたわよ。

リナ   :ちょっと待って! 完璧に消えるんじゃなかったの!?

はるひ  :確かに見えてましたわ。

まゆみ先生:わ、わたしには見えませんでしたけど〜。

ましろ  :ここには、消える能力者がいるのか!?

リョウ  :あと、音を消せる能力者を、れいめいに向かわせてるネ。

ましろ  :なんという……。

ケイジ  :二面作戦というやつか。思い切ったことをするな……。

ゆうすけ :幻覚能力は、不審を抱かれると解けるわけか。ありうる話だな。

ケン   :なるほど。温度や気配は消せないっすもんね。

アキラ  :……それにしては、見つかってないみたいだが。

ゆうすけ :おそらく、消えてることに気付いてる連中に囲まれてるな。

はるひ  :そうですわね。わたしなら、消えてそうなところにたくさんアメを投げますわ。

ゆうすけ :皆、すぐ助けに……

リナ   :待ちなさい!!

ゆうすけ :ボス! でも、俺の責任……

リナ   :前線の情報収集役は、最初から覚悟の上よ。
      自分たちの力で逃げられないなら、それまでのこと。
      敵の戦力や能力がわからない以上、下手に助けに行ったら全滅のリスクがあるわ。

ゆうすけ :……。(俺らのときは敵が1人だから来た、ということにするわけか。)

ましろ  :そうだ。今回は自重しろ、バカ。

リナ   :あと、もし何かあったとしても、判断を下した私の責任よ。

リョウ  :ボスの言う通りネ。

ケイジ  :さすが、あれほどの人物を従えるボスであるな。

はるひ  :あの時も、そんなかくごで来てましたのね……。

アキラ  :……。 ←目を閉じて、悔しそうな表情

はるひ  :ヒビキくんの足なら、だれもおいつけないはずですわ。

リナ   :そうね。ライムも、ケンといい勝負ができるくらいには速いわ。
      散り散りに逃げないってことは、隠れてるほうが安全って判断をしたってことよ。

ケン   :そうっすよ、もっと仲間を信頼するべきっすよー!

ゆうすけ :……わかった。

G   M:仲間が増えた喜びもつかの間。
      あやめ幼稚園には、仲間の帰りを待つ重い時間が流れるのでした。


第4話・第29節 へ
第4話・第31節 へ

トップページへ