第4話・第29節・タイトル未定





リナ   :落ち着きなさい! 何と戦ってるのよ!?

G   M:急に凄い力で後ろに引っぱられ、武器を落としてしまったゆうすけですが、
      目の前には見知った赤いベレー帽の女の子が。
      いつの間にかあずさの姿が消えており、その代わりにリナがいます。

アキラ  :……おちつけ!

G   M:後ろからはアキラの声。どうやら、羽交い絞め(はがいじめ)にされていたようです。
      完全に無防備なところを後ろからやられると、抵抗のしようもありません。

ゆうすけ :来たのか……。

リナ   :当たり前でしょ! 当然、リョウは残してきたけどね。

G   M:何が当然なのかはわかりませんが、いざというときのことを考えて
      能力者を拠点に一人残す冷静な判断力はさすがというかなんというか。
      ここで、全員のかしこさを基準に判定します。(ころころ)
      ゆうすけ11、はるひ5、ケン7、アキラ7、リナ9、ケイジが出目1、
      ましろがクリティカルで13、と。やっぱり、あんまり高くはなりませんね。
      ゆうすけは、戦う前のあずさの発言を思い出します。
      彼女の能力名は『千の瞳(サウザンド・アイズ)』、
      視覚を操作して、幻覚を見せるだけの能力と言っていました。
      まあ、そのくらいは誰でもそのうち思い出すんですが、
      すぐに思い出して仲間に伝えられるかも重要なので。

ゆうすけ :当然、伝えるぞ。

ケン   :あー、そういや言ってたっすね。

リナ   :何もしてないのに勝手に吹っ飛んだり、なわとびは振り回すし……
      アキラなんか、なわとび食らいそうになったのよ。急に踏み込むから……。

リナとアキラ以外:!!?

G   M:急に踏み込んだのは、ましろが命中させた最後のなわとびですね。

リナ   :アキラがミョルニルで弾いたから大丈夫だったけど。

G   M:あずさの首に当たった一撃ですね。冷静になって振り返ってみれば、
      体勢を崩してもいないのにいやにあっさり当たった気がします。
      おそらく、急な踏み込みに幻覚が対応できなかったため、
      実際に他人がいる位置と幻覚の位置が重なってしまい、当たったことにしたのでしょう。

ましろ  :だまされていたとはいえ、すまない。

アキラ  :……いい。はるひちゃん、だいじょうぶ?

はるひ  :だいじょうぶですけど、どうなってますの?

ゆうすけ :どうやら、幻覚と戦わされてたらしい……。

はるひ  :シリアルなまぼろしですのね……。

ゆうすけ :(そういえば、女の子としゃべったらまずいんだった。あと、『リアル』な……。)

G   M:ゆうすけが恐る恐るリナの様子を伺うと、吸血鬼姿のましろとケイジが、
      リナの前にひざまずいています。

ましろ  :我輩(わがはい)は、汝(なんじ)に忠誠を誓う。

ケイジ  :我ら吸血鬼、あやめ幼稚園に永遠の忠誠を。

G   M:ましろはひざまずいた姿勢のままリナの左足を手に取り、
      靴の上側にそっと口づけしました。

リナ   :あ、そういうのはいいから。ま、よろしくね。

ゆうすけ :(リナはこういうことドライだよな……ていうか、アレって男にもやるのか?
       もし、俺のひまわりが勝ってたら……って、何を考えてるんだ俺は!?)

G   M:さて、ゆうすけとましろは、妙なことに気がつきます。
      あずさが『視覚を操作して、幻覚を見せるだけのつまらない能力』と
      説明したにもかかわらず、何の疑いもなく幻覚と戦っていたのです。
      ゆうすけは、床にはるひのアメ、ジョーのガムボールが散乱してるにもかかわらず、
      あずさが最初の攻撃で放ったつぶてがどこにも落ちていないのに気がつきます。
      さらに、おそらく、アキラはリナに言われてゆうすけを羽交い絞めにしたんでしょうけど、
      考えてみれば妙です。普通に考えれば、声をかければいいだけの話なんですよね。

ゆうすけ :……声をかけたけど、反応せずに見えない敵と戦ってたから、
      仕方なく後ろから羽交い絞めにしたんだな?

リナ   :そうよ。聞こえてるなら反応しなさいよ。

ゆうすけ :いや、全然聞こえなかった。

ケン   :そうっすよ、ボス。何も聞こえなかったっすよ?

はるひ  :そうですわ。聞こえませんでしたわ。 ←えっへん

アキラ  :……。 ←目を閉じ、腕を組んでうなづく。何かのマネをしているようだ。

リナ   :つまり、最初は聞こえなかった、ってことね?

ゆうすけ :あずさは、『第三者が介入するまで、何も気付かないまま私の幻覚と戦っていてください。』
      って言ってた。あれがヒントだったんだ。

ましろ  :道理で、あんな強い奴相手に、我輩が向かっていったわけだ……。

ケン   :つまり、遠くにいる奴にまでは、まぼろしは見せられないってことっすね。

ゆうすけ :それプラス、聴覚も騙されてた可能性が高い。

リナ   :よくわからないけど、さっき戦ってたやつは倒したのよね?

ゆうすけ :ああ。聞いてなかったのか?

アキラ  :あの後、あわててとび出したから……。

リナ   :(リトルグラフを見て)競技は、ふじ・あじさい連合の勝ちみたい。
      あと、黒点領はうちで併合したって表示されてるわ。

ケン   :えっ!? オレら倒されてないっすよ!?

ゆうすけ :『戦意喪失などによりゲームに動きがなくなったと判断されると終了』ってやつか。

ましろ  :何の話だ?

ゆうすけ :そうか。そっちは不参加だったな。

ケイジ  :それよりも、我らは飯を所望する。

ゆうすけ :わかった。ボス、こいつら大した物食べてないんだ。

リナ   :了解。あとは、ライムとヒビキね。まずは、周囲の安全確認よ。

ゆうすけ :よし。それができたら、必要な物だけ持って、ここを離れるぞ!



G   M:一方その頃。
      次に戦うであろうふじ・あじさい連合を挟撃するため、
      れいめい幼稚園に送られていたライムとヒビキ。
      かつてひまわり幼稚園に潜入してはるひをさらったときと同じく、
      ヒビキの能力で2人の姿を消し、ライムの能力で2人の音を消すというコンボで、
      慎重にれいめい幼稚園へと向かいます。
      そこで、れいめい幼稚園の方から歩いてくる園児の一団とすれ違いました。
      3人とも、緑色の園児服ですね。明らかに一般園児とは雰囲気が違います。
      1人は薄紫のようなグラデーションがかかった髪の女の子です。
      見た目は活発そうな感じですが、どうも元気がありません。
      あとの2人は男の子。この2人も、同じ様子ですね。
      一人は未開の部族でシャーマンがかぶるようなお面を頭の横につけ、
      おもちゃの弓矢を背負っています。
      一人は鞄を背負い、おもちゃのドリルを持っていますね。
      (ころころ)3人は、手をつないでいるライムとヒビキとすれ違います。
      気付いた様子はありません。

ライム  :……。

ヒビキ  :……。

G   M:さて、ここで帰るわけにも、お互い相談するわけにもいかないので、
      最初の指示通り、2人はそのままれいめい幼稚園へと向かいます。
      着いてみたところ、れいめい幼稚園には人影がありません。
      運動場にサッカーボールが出しっぱなしになっていたりと、
      生活感が全く無いわけではありませんが、人の気配がありません。
      あとは、建物に近づくと、外壁を取り囲むように子供の赤い手形がべたべたと。
      この能力を維持しながらでは、詳しく調べるなどはできませんが、どうします?

ヒビキ  :(ずっと消えたままでござる。)

ライム  :(もっともだね。中に入るよ。)

G   M:建物の中も無人ですね。人っ子一人見当たりません。
      ただ、おもちゃが出しっぱなしになっていたりと、
      何かをしている途中で急にいなくなったような印象を受けます。
      そして、2人はホールに入ります。
      あやめ幼稚園と違って、ここが給食を食べたりする場所なのでしょう。
      テーブルに朝食か昼食か、はたまた夕食かはわかりませんが、
      お盆とお皿の上に、乾パンなどの簡素な保存食が並べられています。
      が、妙なことに全く手をつけられていません。まるで、全ての準備を終えた後、
      『いただきます』の直前にみんな突然いなくなったかのように。
      他の幼稚園に襲撃されたのなら、食べ物が残っているのは考えづらいですし。
      そのとき、どちらともなく、視界の端、ホールの壁に赤い模様があるのに気がつきます。
      やがて、2人とも気付き、歩調を揃えて壁の前に向かいます。
      どうやら、クリーム色の壁に、外壁と同じ血のような真っ赤な色で
      字がかかれているようです。壁には、こう書かれていました。



『こいつらとおなじめにあいたくなかったら
   これいじょうすすまないことだ』


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