第4話・第10節・タイトル未定





G   M:特にスケジュールもなかった火曜日が終わり、8月10日の水曜日。
      例の競技の当日です。園児の朝は早く、朝食は午前8時頃から。
      あやめ幼稚園は、まだ商品の搬入が途絶えていない近くのコンビニから
      食糧調達係が思い思いの食べ物を取ってきて、たまり場の喫茶店で食べるスタイルです。
      ちなみに、あやめ幼稚園の領内にあるコンビニは、ファミリーミャート。
      コンビニ弁当やサンドウィッチなどの定番商品を完備しつつ、
      なぜかペットフードが多いラインナップという謎のコンビニです。
      というわけで、皆さんは喫茶店で、会話しながら食事中です。

ゆうすけ :結局は、通知待ちだな。なにせ、詳しい時間や場所を聞いてないからな。

リナ   :そうね。

ゆうすけ :まさか丸々ガセじゃないだろうけど、そうだとしても、色々と妙なことはあるんだ。

リナ   :何かしら?

ゆうすけ :仮にリトルグラフに情報が届くとしたら、今度は、
      そもそも直接来た意味がわからなくなる。

ケン   :そういや、普通にメール機能とかあるっすからねー。

ライム  :……もっともだね。

ゆうすけ :人手が足りないってのもおかしい。本当に足りないとしても、
      なおさら、わざわざ自分で出向く意味がわからない。

ヒビキ  :奥が深いでござるな。

G   M:いつの間にか、男がゆうすけと話すのはだんだん黙認されてきているようです。
      さて、そうこうしている間に、リナが机の上に置いていた『リトルグラフ』から着信音が!
      メールの受信を伝える封筒のマークが空中に投影されます。

リナ   :オープン!

G   M:リナの発声に呼応して、メールの内容が空中に投影されます。
      まずは、添付動画です。
      妙な模様のカードが投影され、それがひとりでに裏返ると、金色に光るキラカードですね。
      主に男の子の園児から、キラカードを見たことによるどよめきが起きます。
      さて、そのカードには、支配権を賭けた戦いで使うカードと同様、
      白黒2色の簡素なデザインが描かれています。ボウリングのピンとボールですね。
      なお、ひまわり幼稚園が持っていたカードはスイカ、
      あやめ幼稚園が持っていたカードはカブトムシのデザインでした。
      続いて、競技の概要案内らしき文字が、空中に浮かび上がります。



『じかん:ごご1じ』
『ばしょ:じぶんのようちえん』
『フィールド:シティ』
『にんずう:3にん』



『きょうぎにさんかしますか? Y/N』



リナ   :イエスよ!



『そうしんちゅうです……』



G   M:音声操作はもちろん、Y/N(イエスorノー)機能を用いることによって、
      即座に相手に回答が送信されるシステム(通称『Y/Nシステム』)も、
      現代では一般的なものです。



『かいとうがそろうのを まっています』



G   M:なお、Y/Nシステムで集めた回答は、公開することも非公開にすることもできます。
      『まっています』ということは、今回は公開バージョンのようですね。
      集計はすぐにできるはずなのですが、
      すぐに答えなかった幼稚園があったのか、少しの間待たされます。



『かいとうが そろいました』



みどりようちえん:さんか

あやめようちえん:さんか

さくらようちえん:さんか

あじさいようちえん・ふじようちえんれんごう:さんか

れいめいようちえん:ふさんか

こくてんりょう:ふさんか



G   M:回答が揃ったというメッセージの後に、回答一覧が投影されました。
      画面に動きが無いところをみると、これで終了のようです。
      この結果を見た一般園児も含め、全員が周囲に思い思いのことをしゃべり始め、
      ざわざわします。

リナ   :皆、静かに! 食べながらでいいから聞いてちょうだい!

G   M:ボスの合図に、喫茶店が静まります。

リナ   :これから、競技での能力の使用について命令するわ。

はるひ  :おーっほっほっほっ。わたしののうりょくなら、らくしょうですわ!

リナ   :(無視して)能力の使用は、原則禁止よ。

はるひ  :なっ、なんでですの!?

リナ   :手の内がバレたら、本番で不利になるわ。
      ただし、『リトルグラフ』の通信機能で私に許可を取ったら、使っていいわ。

アキラ  :……なかまがあぶないときもか?

リナ   :その場合は能力の使用を認めるけど、後で許可を取ってもらうわ。
      許可が下りなければ降格。最悪の場合は警備員室行きよ。

ケン   :ちょ、きつくないっすか?

ライム  :……。

リナ   :うちは、何かを隠ぺいする能力者が多いわ。あとは、能力が未知なのも結構多い。
      戦闘系はたった1人。戦闘系が2人以上いるところに、それがバレたらどうする?

ヒビキ  :ねらわれそうでござるな。

リナ   :競技で負けてもカードは減らないわ。逆に本番で負けたら、最悪、ドレイにされるわよ。

はるひ  :……。

リナ   :以上よ。何かある?

ケン   :んなもんあるわけないじゃないっすかー。

ゆうすけ :大丈夫だ。(お前はさっき文句言ってただろ。)

リョウ  :ボスに従うネ。

ライム  :もっともだね。

ヒビキ  :当然でござる。

はるひ  :わかりましたわ。よく考えたら、バスの言うとおりですわね。

アキラ  :……。 ←無言でうなずく

ゆうすけ :(バスがしゃべってたまるか! ……こいつ、だんだんアホになってないか?)


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