第4話・第6節・タイトル未定





G   M:一方その頃、あやめ幼稚園の運動場では、はるひ・ヒビキ・ケンの3人による短距離走が
      行われていました。ルールは、すばやさ基準の成功判定を行い、
      一番先に成功値の合計が30に達した者の勝ちという単純なものです。
      コースは直線で短距離。仮にコース取りの要素が絡むと賢いケンにも多少の勝ち目が出てきますが、
      コース取りの上手さは関係ないので、単純にヒビキが有利ですね。
      なお、すばやさは、ケンが7、はるひが8、ヒビキが9です。

はるひ  :おーっほっほっ。元ひまわり幼稚園一のスプリンクラーの力を見せてあげますわ!

G   M:『よーい・どん!』の合図でスタートです。

ライム  :……ドン、の部分の音消したら起こられるよね?

ヒビキ  :むぅ。それだと、スタートがわからないでござるよ。

ケン   :へっへっ。オレだって、たまには本気出すんすよ?

はるひ  :とっととはじめますわよ! ライムくん、合図をおねがいしますわ!

アキラ  :……。

G   M:スタートラインに並んだ3人のうち、1人がモロに忍者服なのが異様な光景ですが、
      とにかく、準備は整いました。

ライム  :よーい……

アキラ  :ドン!!!

他一同  :!?

G   M:半ばやけくそ気味のアキラの合図によって、スタートしました!
      かしこさの逆順に、はるひ・ヒビキ・ケンの順番でどうぞ!
      なお、同じターンに到着した場合は、引き分け扱いとなります。
      ゴールテープがないので、細かい違いがわかりませんからね。

はるひ  :(ころころ)2ですわね……。

ヒビキ  :(ころころ)6でござる! (ころころ)6でござる! (ころころ)今度は2でござるな。

ケン   :(ころころ)へっ。3っすね。

G   M:進んだ距離は、はるひが10、スタートダッシュに成功したヒビキが23、ケンが10です。
      忍者らしい(?)抜群のスタートダッシュで、ヒビキが他の2人を突き放します。
      2ターン目どうぞ。

はるひ  :(ころころ)1で……へぶちゅっ! ←こけた

ヒビキ  :(ころころ)4でござるな。

ケン   :えーと、隣ではるひさんこけたのわかるっすよね?

G   M:はい。他の2人よりかしこさが高いので、可能です。

ケン   :なら、スタート地点にいるアキラさんより先に、はるひさんに手を差し伸べるっす。(ニヤリ)

G   M:ヒビキは余裕でゴールし、そのスタートダッシュに慌てたはるひは
      中間地点に差し掛かる以前に見事に転びます。
      そして、その隣にいたケンは走るのをやめ、はるひに手を差し伸べました。

ケン   :はるひさーん、大丈夫っすかー?

G   M:他の3人も駆け寄ります。

アキラ  :はるひちゃん!

ライム  :大丈夫?

はるひ  :……だ、だいじょうぶですわ……自分で立てますわ!

G   M:園児は大人に比べて身長に占める頭の大きさの割合が高く、重心が上にあるのでよく転びます。
      反面、体重は軽いので、転んでも大きな怪我を負うことは少ないんですね。
      今回も、服が土で汚れたものの、怪我はしていません。

ライム  :……。 ←土煙を恐れて、フーセンガムはふくらませない

ケン   :いやー、さすがはヒビキのアニキっすねー。はるひさん、ひまわりで一番速かったんすよ?

はるひ  :わたしが足で負けるなんて、しんじられませんわ……。

ヒビキ  :でも、さすがは美しい姫君でござるな。せっしゃもひさしぶりに本気を出したでござるよ。

はるひ  :……くやしいですけど、あなた、よくわかってますのね。

アキラ  :……。

G   M:現在のあやめ幼稚園は、すばやさの最低が4、最高が9と、全員がその辺の園児より足が速いんですよね。
      特に、7、8、9が1人ずついるので、短距離走に関しては無敵でしょう。
      しかも、ヒビキは中距離でもとても速いですし、長距離ならケンが得意分野です。
      反面、ちからは7と5が1人ずついる他は、残りが1〜4と全体的に非力。
      かしこさが2〜6、しゅうちゅうが1〜6と、低くはないもののエキスパートがいない状態。
      かなりの体育会系なメンバー構成になっています。
      はるひは決して足が遅いわけではなく、むしろ異常なほどの俊足なのですが、
      今回は相手が悪かったですね。

はるひ  :わたしに勝ったごほうびに、アメをあげますわ。

アキラ  :はるひちゃん!?

G   M:悲鳴のような声を上げたアキラでしたが、はるひがヒビキに差し出したアメは、
      懐ではなくポケットから出されたものでした。

アキラ  :(よかった……。)

はるひ  :パパに買ってもらった、輸入物のトロピカルキャンディですわ。
      ……と、とくべつな人にしかあげませんのよ?

ヒビキ  :せっしゃ、ありがたくちょうだいするでござる。 ←片膝をついて両手を捧げる

はるひ  :おーっほっほっほっ! あなた、よくわかってますわね!! ←その掌にアメを落とす

ケン   :つーか、そのアメも能力ってやつなんすよね?

はるひ  :そ、そうみたいですわね。

G   M:はるひの能力は、かつてリナが指摘した、無意識発現というやつのようです。
      能力の中には、無意識に発現しているものもあるそうで、はるひもそのパターンのようですね。
      はるひがポケットの中でアメを探れば、手の中にアメが見つかるわけです。
      明らかにおかしな現象ではありますが、本人が疑問に思わなければ、
      周りはどっかから補充してきてるんじゃないかって思いますからね。常識的に考えて。

ケン   :そういや、戦ってるときとか、ありえない量ポケットから出てましたもんね。

はるひ  :べ、べつに、何も考えてないわけじゃありませんのよ!

ケン   :いやー、はるひさんらしい能力っすよ!

ライム  :もっともだね。

G   M:常識に囚われている限りは、召喚などという非常識な能力は持ちえません。
      とはいえ、はるひの能力は、その気になれば自力調達が可能な物の召喚なので、
      召喚能力の中では最低のレベル5に属するわけですが。
      さて、あやめ幼稚園メンバーの、能力レベルとイコールの関係にあるひじょうしきステータスを見ますと、
      最大が6と、中位能力者までしかいません。
      能力は、ヒビキが透明化、ライムが音消し、リョウが基地隠し、そして、アキラが雷使いの戦闘系能力。
      アキラの能力は戦闘ではかなり強力なものの、それでもレベル4の低位能力です。
      あやめ生え抜きの3人の能力者は全員が中位で、使いようによってはとても強力ですが、
      戦闘時の攻撃に直接使える能力ではありません。
      そして、戦闘系は、武器に雷をまとわせる能力ですら低位能力。
      逆に、よその中位能力者の中に戦闘系能力者がいる可能性を考えると、凄い脅威ですね。

ケン   :そのアメ、もっと一気に出せたりしないんすか?

はるひ  :できたらやってますわ!

ケン   :いちいち投げなくても、空中に出して落とすとかどうっすか? アメだけに。

ライム  :もっともだね。

はるひ  :そんなの、できるわけありませんわ!

ライム  :もっともだね。

アキラ  :……。 ←ケンをにらむ

ケン   :アニキ、能力って奥が深いっすねー。 ←気付いてない

ヒビキ  :うむ。そうでござるな。

女の子の声:一つ、いいことを教えましょう。

G   M:その時、女の子のよく通る声が、あやめ幼稚園の表門の方から聞こます。声の主を探ると、
      眼鏡をかけた黒い園児服の女の子が1人、ゆっくりとこちらに歩いてきます。

ヒビキ  :むぅ。前に立って、姫君をお守りするでござる。

アキラ  :おれもだ!

G   M:女の子は、見た目は完全に園児ながら、社長秘書を思わせるような落ち着いた物腰ですね。
      そして、どこか冷たい印象を受けます。
      黒い髪に黒い園児服。真夏にしては暑そうな格好ですが
      なんとなく大人っぽさを感じさせる色でもあります。
      1人しかいない上、武器を持っているようには見受けられませんね。
      それなのに、相手の幼稚園の領土で5人を前にしているとは思えない落ち着きです。
      どこかに仲間が潜んでいるのか、とんでもない能力を持つ高位能力者なのか、
      あるいは、とてつもなく大きな後ろ盾があるのか……。

はるひ  :あなた、何の用ですの? 5たい1でぼこぼこにされる前に、名のってもいいですわよ!

女の子  :はじめまして。私は、みやながあずさと申します。


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