第4話・第0節





『落武者』



落武者とは、戦に破れ、敗走した武士です。
自軍が壊滅状態の場合などは、徴兵された農民などと違い、
自らの領地に戻ったところで何もできません。
それどころか、途中で落武者狩りに殺されるのがオチです。
基本的に、落武者は追っ手に捕まった時点で死あるのみです。
中世以降のヨーロッパと違って、身代金と引き換えに解放される文化は一般的ではありませんでしたからね。
ヨーロッパの場合だと、酷いときには国王が捕虜になって、後に解放されたりということすらあるんですが……。

さて、かつて猛者たちを率いた将といえど、敗走を決意するような状況では、手駒もわずかでしょう。
勝者側の武士に追いつかれれば、命はありません。
さらに、戦いのプロとはいえ、敗走する最中まで戦闘態勢を維持できません。
敵軍から逃げおおせたところで、地の利を生かして物陰から襲い掛かってくる
農民に敗れるケースすらあるのです。
実際、敗走する最中に落武者狩りの農民に命を奪われた有名な武将もいます。

とはいえ、腐っても元々は武士。
うまく落ち延びて戦闘態勢を整えれば、再び戦えるようになります。
それが敗走しても許してもらえない理由の1つでもあるわけですが……。

なお、彼らが落ち延びて村を作ったという言い伝えも日本各地に見られます。
戦場で敗れたとはいえ、元々はプロの戦闘集団。
なおかつ、勢いに乗った相手から逃げおおせる程度の才覚は持ち合わせています。

そして、戦場に戻るつもりが無ければ、そこが彼らの安住の地となります。
せっかく手に入れた平穏が脅かされそうになれば、手段を選ばず全力で反撃することでしょう。
元々は敗者には違いありませんが、甘く見ていると痛い目に遭うでしょうね。

黒点領。
彼らさえいなければ、もう少し幸せな夢を見られたでしょうに。


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