第3話・第21節・タイトル未定





ゆうすけ :(まさか、音を消された……?)

G   M:2050年といえども、空中での音声の伝達を完全に妨害する技術はありません。
      一度発生した音声の伝達を妨げるには、受ける側が耳栓をするか、
      別の音をさせて相対的に聞こえなくさせるかしかありません。
      完全防音室もそのパターンの1つですが、普通の幼稚園にはそんな仕掛けがあるはずもありません。
      プールできゃっきゃ騒いでたのは確かですが、同じ園の敷地内な上に、プールは園の建物のすぐ側。
      例えばとても激しい戦闘音だとか、少なくとも悲鳴を上げられれば気付くはずです。
      他には、催眠術で声が出ないと暗示をかけたり、聞こえないと暗示をかけたり。
      ただ、それなら最初から眠らせればいいだけなので、状況に合致しません。

ゆうすけ :(あとは、リトルグラフで姿を消したとすれば……?)

G   M:しかし、立体投影装置を使って透明人間になることはできません。
      もちろん、壁や柱などを投影して、投影物の後ろに隠れることはできます。
      しかし、空中に投影する装置なので、現実の物体に被せて投影することはできません。
      そして、何も無い空間の上に何も無い空間を投影したところで、その後ろにあるものは丸見えです。
      早い話が、現実の物体の上に幻覚を被せて隠すことはできないのです。
      ですから、空中から誰かが突如現れたとしたら、そちらが幻覚であることを疑わなければいけません。
      とはいえ、その幻覚に殴られて物理的な衝撃を受ければ、それは幻覚ではありえませんので……。

ゆうすけ :(姿と音声を消せる未知の科学技術があるとすれば……?)

G   M:そんなもの、聞いたことすらありません。潜水艦はレーダーで探知されますし、
      最先端のステルス機すら目視はされます。むしろ、何かに化けて人の目を欺くだけなら、
      昆虫の擬態のような、原始的な迷彩技術の方が上でしょうね。
      立体投影だと、柱を1本作って中に隠れるのに、4つの投影装置が必要ですし。

ゆうすけ :(待てよ。幼稚園の門の壁を少し手前に投影すれば、その間に隠れられるぞ!
       そこからダッシュで壁を抜けたら、急に空中から現れたように見えるかもしれない!)

G   M:確かに、それで説明はつきますね。      
      見張りを倒してしまった後で持ち去れば、証拠隠滅も完了です。
      壁が1箇所だけせり出してるとバレバレなので、横一線に並べないといけません。
      そういう風にリトルグラフを大量に用意する資金があれば、の話ですが。

ゆうすけ :(執政官代理がからめば可能だろう。後は、音のトリックか……。)

一般園児 :……こえがでないから……たたかおうとしたけど……にんじゃじゃないほうにまけちゃって……。

ふう   :……そう。よくがんばったね。ゆっくり休んでて……カタキは取るから……。

アキラ  :……はるひちゃんをさらったやつは、ないてもゆるさない!

ケン   :(ひぃぃぃっ!)

一般園児 :……はるひさん……さらわれちゃったんですか?

ゆうすけ :……ああ。すまない。

一般園児 :……ぼくらはいいから、はやくたすけてください!

ゆうすけ :(あいつの取り巻きだったやつか? いや、ほぼ全員似たようなもんか……。)……ああ、必ず。

アキラ  :……ゆうすけ、行くぞ!

ゆうすけ :待て、今はこっちのが人数が少ないんだ。見張り以外の年中組、手当てを頼む。

一般園児 :はい!

ゆうすけ :(問題はこれからだ。人数の差を、どうやって埋めるか……。)

G   M:現在の時刻は、午前9時30分。午後1時から4時までの間に開始された正規の戦闘でなければ、
      ルールにこだわる必要はありません。
      まあ、卑怯な戦法で勝っても、相手に認めてもらえない場合もあるでしょうけど。
      問題は、敵の奇襲でこちらの人数が主力が1人、一般園児が3人減ってしまっていることです。
      (そして、ゆうすけは敵の名のある園児が元々4人しかいないなんて、夢にも思ってません。)
      しかも、現在のひまわり幼稚園で最も攻守に優れた1人が人質。
      人質を盾にめちゃくちゃな要求をされるかもしれない上、仮にそうでなくとも、
      正規戦にせよ乱闘にせよ戦力的に劣る(とゆうすけは思っている)状況なわけです。
      そして、敵の内情を探ろうにも、ひまわり幼稚園には潜入捜査に長けたメンバーはいません。
      (今はいませんが)はるひはかしこさが低すぎて探索能力が問題外、
      ケンはみりょくが低すぎるので見つかったときに危険ですし、交渉能力が低すぎ。
      一番マシなのが全能力が中の上のリーダーのゆうすけといった始末です。
      まあ、戦力がどうあったところで、人質を盾にされたらどうにもならないのは確かです。
      これほど周到な相手が、人質を主力から離れたところに置いておく可能性も低いですし。
      もちろん、敵は逆に人質を取られることに対しても警戒しているでしょうから、
      不用意な単独行動もまずないでしょう。
      つまり、首根っこを完全に押さえられてる状態なわけですね。
      人質に危害が加えられても構わず、午後1時になる前に全軍突撃という選択肢もありますが……。

ゆうすけ :(できるわけないだろ! はるひは絶対に助ける!)

G   M:あるいは、無条件降伏して、相手の温情に頼るという手も……。

ゆうすけ :(俺1人が飯抜きで済むんならいいが、人質を取るような連中だから……。)

G   M:2人の捕虜は、高確率で気絶したところを連れて行かれたと思われます。
      連れ去るのに時間はかかりますが、拠点に戻ってすぐに危害を加えられる可能性を考えると、
      そろそろ次の行動を決断しないといけません。

ゆうすけ :(……決断するしかないのか……。)……みんな、聞いてくれ!!


第3話・第20節 へ
第3話・第22節 へ

トップページへ