第3話・第15節・タイトル未定





G   M:ゆうすけとふうは、ひまわり幼稚園の建物内1階にある、警備員室へとやってきました。
      2050年の幼稚園では、園内に警備員が常駐しているのが通常です。
      1人がほぼ住み込み状態の園や、2交代制・3交代制の園もありますが、
      部屋の半分ほどが簡易的な生活スペースになっているのはほぼ共通しています。
      このひまわり幼稚園も例外ではありません。もっとも、今では警備員も疎開してしまい、
      布団を敷けそうな畳部屋のスペースが残っているだけですが。
      なお、不測の事態に備えて、ここから園内放送をすることもできます。
      執政官代理が来ることを伝えた臨時放送も、ここからなされたのかもしれません。
      さて、ふうは掛け布団のみですが、ゆうすけの布団の上で座って話をしようというところで……。

ふう   :……ゆうちゃんを、後ろから、布団で包む込む……。

ゆうすけ :!?

G   M:逃げようと思えば逃げられた筈なのに、ゆうすけは逃げませんでした。
      座ったまま、ゆうすけはふうの布団に抱え込まれます。
      そして、ふうはゆうすけの背中に体を重ねました。
      ゆうすけは、ふうの布団に染み付いたふうのにおいを強く感じます。

ふう   :……選んでくれて、嬉しかった……。

ゆうすけ :い、いや、ふう、選んだのはそうじゃなくて……。

ふう   :……あの3人、最初は敵だったんだよ? ……やっぱり、うちの組を率いる資質があるよ……。

ゆうすけ :いや、その、こういうのは……。

ふう   :……いや?

ゆうすけ :嫌じゃないけど、男の子と女の子が同じ布団っていうのは……。

ふう   :……ゆうちゃんの、敷き布団しかないよ? こうするつもりだったんじゃないの?

ゆうすけ :(あの野郎、楽しようとしやがったな!?)いや、これはケンが……。

ふう   :……ゆうちゃんの背中……あったかい……。

ゆうすけ :ていうか、夏にくっついたら余計汗かくだろ!

ふう   :……大丈夫、布団が吸ってくれるから……。

ゆうすけ :ちょい待て! この布団、確かおねしょの……。

ふう   :……私の汗とか……いや?

ゆうすけ :嫌じゃないけど。むしろ、なんか落ち着く匂い……って、何言ってるんだ俺はっ!?

ふう   :……明日勝ったら……もっと仲良くなろ?

ゆうすけ :(そうか、もし負けたら……ていうか、これ以上何をする気だ!?)

ふう   :……だから……守ってね?

ゆうすけ :……ああ。

ふう   :……ゆうちゃんのお父さんとお母さんって、どんな人?

ゆうすけ :(急に何を言い出すんだ?)……は? 何で親が出てくるんだ?

ふう   :……ゆうちゃんにとっては、当たり前のことじゃないんだね……。

ゆうすけ :そんなことより、明日の戦いのアドバイスを教えてくれ。俺には、ふうの力が必要だ。

ふう   :……うん。……なんとなくだけど……あやめ幼稚園って、なんか嫌な感じがする……。

ゆうすけ :嫌な感じ?

ふう   :……ゆうちゃんは、みんなのために、コンビニを取ろうとしてくれてるよね?

ゆうすけ :ああ。そうだけど……。

ふう   :……もし、逆の立場だったらどう?

ゆうすけ :逆?

ふう   :……コンビニ持ってて、取られそうになったら……。

ゆうすけ :話し合いがダメそうなら、守りを固めるしかないな。

ふう   :……でもね……もし、好戦的な人がリーダーだったら、向こうから攻めてくると思う。

ゆうすけ :!?

ふう   :……こっちが攻めてるってわかってるんだから、その前に潰しに行くんじゃないかな?

ゆうすけ :でも、相手が攻めて来たら、こっちが有利になるんじゃないのか!?

ふう   :……例えばの話だよ? こっちが攻撃するなら、防御側以上の人数がいるよね?

ゆうすけ :そうだな。防御側が指定した人数同士で戦わないといけないから。

ふう   :……例えば、向こうの精鋭が5人いたとするよね?

ゆうすけ :ああ。うちと同じだな。

ふう   :……向こうが開始前に2人の精鋭をこっそり送り込んできて……こっちだけ1人減ったら?

ゆうすけ :!!? ……4対5で勝たなきゃいけなくなるのか!

ふう   :……その2人が2対1でこっちを1人ずつ減らしていったら……最悪だね……。

ゆうすけ :3人以下対5人だと、まともにやっても勝てるわけがないな……。

ふう   :……向こうの2人が帰って来なくても、こっちはコンビニが欲しくて攻めなきゃいけないから……。

ゆうすけ :こっちが攻めて行っても、向こうは3人対3人で指定してくるわけか……。

ふう   :……奇襲は、戦いの基本だから……組織化して、見張りで対抗しないと……。

ゆうすけ :助かった! ナイスだ、ふう!

ふう   :……あやめ幼稚園がそうするかは知らないけど……これからも忘れないでね?

ゆうすけ :ああ。ありがとう。ふうを呼んでよかった……。

ふう   :言葉だけじゃなくて、お礼、ちょうだい?

ゆうすけ :!?

G   M:ふうは、ゆうすけをやさしく押し倒しました。2人がくるまっていた布団ごと……。


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