第3話・第7節・タイトル未定
まゆみ先生:さっき、執政官代理の使いの人が届けてくれました〜。まず、リーダーのゆうすけくん。
ゆうすけ :俺?
G M:まゆみ先生は、1人ひとりの名前を呼びながら、5人に『リトルグラフ』を渡して回ります。
さて、この時代に生きる少年の常識として、5人とも、大体の機能は知っています。
とはいえ、今までは誰も実物を持っていませんでした。
漢字の知識が無いと細かい機能が使いこなせないので、
幼稚園児に与えられるということ自体、なかなかないことなのです。
ゆうすけは、渡される前のそれ自体が『リトルグラフ』で表示された投影画像かとも一瞬思いましたが、
考え直します。というのも、幻覚発生機能といえども、古い映画のスクリーンと似たような原理です。
何も無い空中にしか投影できませんので、受け取れた時点で幻覚ではありませんし、
それを持っていたまゆみ先生も幻覚ではありません。
また、基本的に真上にしか投影できないため、歩きながら『リトルグラフ』を配ってたまゆみ先生は、
そもそも幻覚ではありえません。幻覚を歩かせたければ、『リトルグラフ』そのものを、
(大人用のものは『リトグラフ』ですが)床の上で滑らかに動かす必要があるのです。
もっとも、床中に『リトグラフ』を敷き詰めるという手がなくもないですが、
莫大な費用がかかる上に、触られるとすり抜けるので結局ばれます。
踏んで歩くようにはできていませんので、大人に踏まれると危ないでしょうし。
さらに、通常の『リトグラフ』は、投影画像を本物に見せる機能がロックされていて、
薄く透けたような投影画像になってしまいます。
結局のところ、ロックを解除しない限り、子供のイタズラくらいにしか使えないということです。
そして、誰も騙せないのですぐに飽きられてしまうという機能です。
はるひ :さっそくプレゼントなんて、気がききますのね。 ←えっへん。
ゆうすけ :でも、園児にこれは変じゃないか?
G M:確かに、ゆうすけの持つ常識的に考えて、妙な状況ではあります。
でも、先程の執政官代理が執政官代理であることに疑いはありません。
そんなことよりも、彼が執政官代理なのは間違いないとして、
どうもやってることが妙だなと、そういう感想です。
そもそも、執政官とか執政官代理とかいうもの自体、信用なりませんし。
さて、ゆうすけが色々と考えている間に、まゆみ先生が口を開きます。
まゆみ先生:みなさ〜ん、『リトルグラフ』は知ってますよね?
はるひ :知ってますわよ。でんしゃについてますのね!
アキラ :……。 ←目を閉じて、無言でうなずく
ゆうすけ :(くそっ。間違ってるのはわかるけど、ツッコミがわからない!)
まゆみ先生:リーダーのゆうすけくんの『リトルグラフ』は、なんと、特別製で〜す!
ゆうすけ :特別製!?
ケン :さすがアニキっす!
ふう :……。
G M:特別製というのは、政府が何らかのカスタムを施しているということでしょう。
そのくらいなら、普通にありえる話です。
まゆみ先生:さあ、ゆうすけくん。スイッチをつけてみてくださ〜い!
ケン :アニキ、待ってくだせぇ、心の準備が!
はるひ :ゆうさま、2人ではじめてのきょうどうさぎょうですわよ♪
アキラ :……。
ふう :……ゆうちゃん、とっととつけて……。
G M:スイッチをつける方法も常識です。普通に横側のスイッチをスライドさせるだけ。
起動後は、自動的にスイッチにロックがかかり、うっかりでは消せないようになります。
ゆうすけ :……つけるぞ。
G M:ゆうすけが、地面と水平に持った『リトルグラフ』のスイッチをスライドさせると、
ゆうすけの頭の前、ディスプレイの真上に、ラッパを持ったひよこが出現しました。
通常の『リトルグラフ』による薄青い投影ではなく、かなりリアルな立体映像です。
空中に浮いているのと、普通のひよこが小型とはいえラッパを持てるわけはないのと、
アニメチックにデフォルメされているので実物ではないとわかりますが、
まるで本物の物体のような映像密度。
準幹部クラス以上の公務員などに与えられるという、ロック解除バージョンの立体映像のようです。
ゆうすけ :うわっ!!?
G M:呆気に取られる園児たちの前で、ラッパを持ったひよこが口を開きました。
ラッパを持ったひよこ:はじめまして。ボク、皆さんのナビゲーションペットです。
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