第1話・第2節





臨時放送 :今から、執政官代理がおいでになります。執政官代理の指示に従ってください。

G   M:音声は、なおも続きます。

臨時放送 :執政官代理をお迎えするため、あなたたちは、彼のことをよく知らなければなりません。

G   M:以下、執政官代理の経歴に始まって、外見や人となりなどがアナウンスされます。
      話を聞いてみると、執政官代理とはいえ、園児のようですね。
      小学生がなるケースもあるとは聞いたことがありますが、園児というのは初耳です。
      そして、執政官代理は真面目な人物なのでふざけたりしないように告げ、臨時放送が終わります。
      なお、皆さんは2050年代の基礎知識として、
      執政官代理というのが物凄く偉い人だというのは知っています。そして、
      執政官代理にに暴力なんか振るった日には、普通の公務執行妨害どころじゃない重罪に処せられます。

まゆみ先生:……ということみたいです〜。

ケン   :な、なんでこんなとこにそんな凄いのが!?

はるひ  :……たいへんなことになりましたわね……。

アキラ  :……。

ふう   :……。

ゆうすけ :それにしても、一体なんのために……?

ケン   :つっても、せいぜい同い年だろ? 来るなら来てみろってんだ!

G   M:そのとき、計ったようなタイミングで、皆さんのいた部屋の扉が開きます。
      そして、扉の前には、話に聞いていた通りの園児の姿が。

ケン   :ひぃぃぃっ!!!

執政官代理:初めまして。法務執政官代理の田崎です。

G   M:園児は、とても園児とは思えないような慇懃無礼な口調で語り始めました。
      そして、ケンは、こそこそと部屋の隅に移動します。

執政官代理:中央で法改正がなされましたが、現在、官報を閲覧し難い状況にあります。
      したがって、法律に従い、官報に代わって、直接口頭で法改正の内容をお伝えします。

ふう   :……。

執政官代理:……端的に言えば、園児同士の戦いは、全て合法化されました。

はるひ  :どういうことですの!?

執政官代理:宇奈月先生、これを。

G   M:田崎と名乗る執政官代理は、まゆみ先生に1冊のノートと、1枚のカードを渡します。
      左手で、無造作に。
      まゆみ先生は、恐る恐るといった感じで、ノートを読みます。

まゆみ先生:……ど、どういうことですか?

執政官代理:端的に言えば、ルールブックです。
      なお、エリアの境界は、昨日12時の時点で確定しました。
      ですので、その本の内容に従い、他の幼稚園と戦ってください。

はるひ  :な、なんでそんことしなきゃいけませんの!?

アキラ  :はるひちゃん!

G   M:激昂したはるひを止めるように、同時にかばうように、アキラがその前に出ます。
      2人は、なんとなくですが、誰かに憐れむような目で見られているような気がしました。

執政官代理:現時点では、中央の意向としかお伝えできません。
      ですが、あなた方が生き残る唯一の手段であることも確かです。

ふう   :……。

まゆみ先生:……そうですか……食料は、もう……。

執政官代理:生き残るために、カードと支配権を賭けて、他の幼稚園と戦ってください。
      それらは、国会の立法によって許された合法行為です。
      繰り返します。それらは、国会の立法によって許された合法行為です。

G   M:やりたい放題の楽園での無秩序な生活は、
      彼のその発言によって事実上の終止符を打たれます。
      呆然とするひまわり幼稚園のメンバーをよそに、
      田崎執政官代理は、そのまま、歩いて幼稚園の外へと出て行きました。
      そして、ふうは、小声でゆうすけに話しかけます。
      
ふう   :……ゆうちゃん、どう思う?

ゆうすけ :何が?

ふう   :……執政官代理って、凄く偉い人なんだよ? 1人で歩いて来るって、変だよね?

ゆうすけ :……そうだな。変わった奴も多いって聞くけど、確かに変だ。

ふう   :……後、つけるよ。

G   M:ゆうすけの返事も待たず、ふうは、ふとんを背負ったまま歩き始めました。

ゆうすけ :追いかける! そのふとんかぶって尾行とか無理だろ! 脱げよ!

G   M:ふうは、構わず歩いていきます。

ゆうすけ :このまま付き合うしかないか……。

G   M:ひまわり幼稚園を出たふうとゆうすけは、田崎執政官代理が歩き去った方向へと進みます。
      しかし、少し進んで角を曲がったところに、他の幼稚園と思われる1人の園児が待ち構えていました!

園児   :きたか。しねっ!

G   M:園児は、ゆうすけに襲い掛かってきます。
      かくして、最初の戦いが幕を開けました。


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