第147話・



みつばは、独房へと入れられた。



兵士
「明日からは地獄の仲間入りだ。せいぜい、今のうちに休んでおけ!」



なお、装備は外されているだけで、取り上げられてはいない。
この時点で装備しなおせるが、みつばには意味の無いことだ。

戦歴画面を開くと、サンディの姿がない。
あいつ、マジで逃げやがったな……。

牢屋の中でウロウロしていると、隣の独房にいたごつい男が話しかけてきた。




「おい、ドタバタうるせえぞ! ちったぁ、静かにしやがれ。
 ……どうやら、新入りみたいだな。
 こんなとこに連れて来られて不安な気持ちはわかるが、まあ、落ち着けよ。
 ここは、ムダな体力使ってるヤツからおっ死んじまう場所だからな。
 今日のところは、もう、寝とけ。明日の朝は早いぜ。」



そして、翌日。
指定された作業場に行こうとすると、昨日のごつい男が道をふさいでいた。



アギロ
「よう、遅かったな、新入り! オレの名はアギロ。お前の隣の牢の住人だ。
 お前さん、名前は? ……ほう、みつばってのか。
 しかし……こいつは驚いたな。……いや、なんでもねぇんだ。よろしくな、みつば!
 こう見えても、オレは、囚人たちのまとめ役みたいなことをやっててな。
 で、新入りに、このカデスの牢獄の案内やら、ルールを教えてやんのも、オレの仕事ってわけだ。
 とりあえず、好きに歩き回ってみろ。オレが後からついていって、いろいろと説明してやるからよ。」



アギロが仲間に加わった。

アギロに案内されつつ、情報を集めるみつば。
このカデスの牢獄は、帝国に逆らった者たちが強制労働させられる牢獄で、
生きて出られた者は今まで1人もいないという。

囚人が通れないという結界があったが、アギロの目の前で、みつばは結界をすり抜けて見せた。



アギロ
「しかし、どういうことだ? あの結界をすり抜けちまうなんて?
 うん!? なんだ、それ? なんか光ってるぞ。
 ……これは? 帝国が使ってる紋章が彫り込んであるな。
 光ってるってことは、お前が結界を越えられたのは、こいつのおかげってことか?
 おい、こんなモノ、いったいどこで手に入れたんだよ?
 ……グレイナルだって? なるほどねぇ、あの老ドラゴンからもらったってわけか……。
 なあ、みつば。このことはオレの胸にしまっておくから、お前も誰にも言うんじゃないぞ。
 もし、帝国の連中に知れたら、タダ事じゃ済まなくなるからな。」



その後、アギロと別れて、1人で牢獄を回る。
消耗品を5倍の値段で売ってくれるやつもいるが、どのみち買えない。
記録させてくれる神父もいた。地獄で仏とはこのことだ。



神父
「神はいつもあなたがたを見守っていてくださいます。またおいでください。」



1人しかいないんだが……こいつも、相当参っているのか?

その後、仕事の時間。
みつばはその日一日、クタクタになるまで働いた。その夜……。



アギロ
「みつば……みつば。オレだ。アギロだ。
 今日はご苦労だったな。初めてのことばかりで、疲れたろ?
 ……実は、お前に話があってな。ちょいと長くなるんだが、まあ、ガマンして聞いてくれ。
 今日一日働いて、この牢獄が酷いとこだってのはわかっただろ?
 このままじゃいけねえってんで、以前から、オレたちの間じゃ、脱出計画が練られていたんだ。
 話ってのはさ、お前さんにも、この計画に協力してほしいってことなんだよ。
 計画といっても、単純なもんでな。不意打ちで連中の武器を奪って、蹴散らすって寸法さ。
 雑な作戦だが、元々、頭数ではこっちのほうがずっと上なんだ。成功の目はあると思ってる。
 だが、問題なのは例の結界だ。あれがある限り、オレたちはこの牢獄から出ることができない。
 ところが、結界を通り抜けられるお前さんがいるとなると、話は変わってくるんだよ。
 どうだい、オレたちの計画に協力しちゃくれないか?」
みつば
「いいえ」
アギロ
「……そうか。まあ、いきなりこんな話されて、戸惑うのもムリはねえな。
 だが、今日明日すぐに決起ってわけじゃねえんだ。今の話、考えといてくれよ。」


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