第23話・楽器!?





……そして、時間は現在へと戻る。




「と、とにかく、入部してくれるってことでいいんだよね?」

「はい!」




「ライブのみなさんの演奏聞いて感動しました!
 これからよろしくお願いします!」


「演奏というか、口笛だけどな」




「1年2組の中野梓といいます。パートはギターを少し…」

「とりあえず何か弾いてみせて」

「まだ初心者なので下手ですけど…」



梓は、背負っていたギターケースからギターを取り出し、弾き始めた。
そして、梓の淀みない演奏が終わる。



唯&澪
(うまい! うますぎる!)

(つ、ついに、軽音部に楽器が!?)

(唯ちゃん×梓ちゃんか、梓ちゃん×澪ちゃんか……ハァハァ……
 唯ちゃん→梓ちゃん→澪ちゃん←律さんというのも……)



梓は、場の微妙な雰囲気を感じ取った。




(どうしよう、何だか変な雰囲気に…やっぱり私の演奏が下手だったから…)



そこに、さわ子が話しかける。



さわ子
「顧問の山中さわ子です。よろしくね」

「よ、よろしくお願いします」
さわ子
(ネコミミとか似合いそうね)

「さわちゃん、いたのかよ!!」

「先生もギター弾けるんですよね! ちょっと弾いてみてくださいっ!」



さわ子は、梓のギターを受け取った。



さわ子
「………しゃーねーなー…」
一同
(目つき変わったーー!?)



さわ子は、慣れないはずの梓のギターで、超絶技巧を披露する。
速弾き!! タッピング!! 歯ギター!!
そして……。




「今、何か変な音しなかった?」

「おい! 弦が切れてるぞ!」
さわ子
「切れてないっすよ。弦を切れさせたらたいしたもんっすよ」

「どう見ても切れてるだろ」
さわ子
「いやー、歯ギターやりすぎちゃった☆(てへっ)」

「弦の交換をしないといけないわね」

「え? 弦って交換するもんなの?」

「……」

「楽器屋がなくても、予備の弦、持ってるだろう?」

「……」

「まさか、切らして……」

「……」

「さ…さわちゃんのアホーッ!!」

「……」

「ごめんね。あの先生、ちょっと変なの」

「こんなんじゃダメですーっ!!」

「うわーっ!! キレた!!」
さわ子
「切れてないっすよ」

「どう見ても切れてるだろ」

「まぁ、とにかく落ちついて…」

「これが落ち着いていられますかーっ!!」

「素数を数えて落ち着くんだ!」

「1、3、5、7、9……」

「それは奇数だ」
さわ子
「今のうちに、梓ちゃんにネコミミを付けて……」

「わーっ、すごく似合ってるよ! 軽音部へようこそ!!」

「ここで!?」

「ん〜〜、梓ちゃんかわいい〜〜☆」(すりすり)

(梓ちゃんはネコ……ハァハァ……)

「ニャーッって言ってみて、ニャーッって」

「ふかーーっ!!」

「あだ名はあずにゃんで決定だね!!」






かくして、新入部員の加入により、軽音部は廃部の危機を免れた。



彼女たちは、軽音部である。
楽器は……まだない。



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