トールフォード家−2



実はヘタレ気質とはいえ、あのアリエルだって、元は相当な努力家です。
(ほとんど強制でしたけどね。)
そして、その先に待っているのは意に沿わぬ結婚。
いくら万能の天才とはいえ若い女の子ですから、
せめてモラトリアムを求めるのは当然の成り行きだったのでしょう。
(某ラムリアース出身の侍祭ではないですが)
あまり抑えつけすぎて万が一家出されてもいけませんし、
彼女が女の子がいっぱいいる寮に入りたいと言えば、そのご機嫌を取る必要がありました。
幸い、遠縁にあたる導師のトールフォードの属する派閥が管轄している個室の見習い寮で、
正騎士クラスの強さを持つ専属警備員がついている上、貴族用フロアすらあります。
万が一何かあろうと、貴族のコネと金で蘇生できますし。
魔術師ギルドの中では、導師のトールフォードはアリエルの遥か上の存在。
ですが、遠縁のトールフォードにとっては、アリエルは本家のお姫様。
見習い魔術師が見方によっては導師より上の立場という、
逆転現象が生じちゃってるんですよね。
(余談ですが、レイディアの過去の恋愛話にちょこっとだけ出てきたフォードも、
 トールフォード家のさらに遠縁にあたるのかもしれませんね。
 『アドベンチャー』でアルバスとアルバスノットが遠縁だったように。)
で、導師のトールフォードの立場なら、多少の悪事はもみ消せます。
女同士なら好きにさせておけという本家の意向もありますし。
かくして、寮内に女帝アリエルの国が誕生したわけです。
(なお、アリエル(厳密には導師のトールフォード)が本気になれば、
 有能な奴とそこそこの後ろ盾がある奴だけギルドの建物に移した後、
 1階と2階なんて簡単に潰せました。
 弱い外敵は、あえて残した方が内部をまとめるのに都合がいいわけです。
 そういう意味では、ある意味マッチポンプなわけですね。)
しかし、トールフォード家のもくろみは、思わぬ形で終焉を迎えます。
さすがに、彼女と懇意になる見習い魔術師の少女の中に、
敵国のスパイが紛れ込んでるなんて想像のしようもありませんから。

さて、その寮を覆い尽くすアリエルの権力の正体は、
彼女が道具扱いしている導師のトールフォードの力、
もっと言えば、かつてトールフォード家の掴んだ情報に基づく予想通りに
最大派閥の地位を不動にしたフォルテス派の権力であるわけです。
しかし、最高導師に就任後にフォルテスが失脚し、
”偉大なる”カーウェスが多少快復した現在となっては、
もはや寮の存在そのものが汚点であるわけです。
フォルテスが失脚しちゃうと、一気にボロが出るんですよね。
小説版では、あの寮、全く話にも上らないくらいですし。
(当たり前ですが。(笑))

トールフォード家−1 へ

トップページへ