この命がついえる瞬間に








G   M:ミゴリの落とした雷により、森は炎に包まれます。
      再生能力を失ったミゴリは、万が一にも傷を負うリスクを恐れ、
      空へと飛び立ちました。
      森の中で意識を失っているレイディアも、程なく焼死することでしょう。
      さて、ミゴリに胴体を引き裂かれて意識を失ったマリアですが、
      非常用の動力源に切り替わり、意識を取り戻します。
      ただ、胴体のメイン動力が破壊されたので、10分と持たないでしょう。
      自己修復機構が破壊されたので、回復も絶望的。
      この後、身体機能が完全に停止された時点で、縛り付けられていた
      ホムンクルスの魂が解放され、魂は天に召されることになります。
      この魂の解放こそが、ハルシュタットの残した『ご褒美』であり、
      マリアもそのことを伝えられています。
      さて、上半身だけになってしまいましたが、
      動力が上半身にあるので、辛うじて動くことはできます。

マリア  :這って、レイディアを助けにゆくぞ。

G   M:上半身だけでも、近寄ろうとすることはできます。
      エネルギーを消耗するので、途中で止まるかもしれませんが。

マリア  :構わぬ。あのまま火に包まれては、レイディアが死んでしまう!

G   M:仮に近寄れたところで、上半身だけではレイディアを運べませんし、
      応急手当の時間が足りないので、意識が戻ることもないでしょう。

マリア  :(這い進みながら)……我に、どうしろと……いうのじゃ……。

???  :運命を、受け入れますか?

G   M:這い進むマリアに、いつもの声が聞こえます。

マリア  :受け入れられるわけがなかろうっ!!!

???  :念のため、声を落としてください。ミゴリの干渉は経っていますが。

マリア  :……今日の幻聴は、えらく具体的じゃのう?

???  :私はヴェーナー。歴史と運命、そして、芸術の神です。

マリア  :…………ぬしも神であったか……我の妄想の産物かと思っておったぞ。
      ……この声も、そういった妄想なのかもしれぬがな。

ヴェーナー:妄想などではありません。私が肉体を得れば、あなたの仲間を助けられます。

マリア  :……コール・ゴッドか。我は神聖魔法など使えぬが……。

ヴェーナー:信仰を自覚し、その身に私を降臨させなさい。

マリア  :それだけでよいのか?

ヴェーナー:引き換えに、あなたの魂は砕け散り、二度と復活できません。

マリア  :……どのみち、我はこの姿では生き返れまい?

ヴェーナー:はい。ですが、魂の破滅は真の破滅です。

マリア  :あのような醜い姿を晒すくらいであれば……。

ヴェーナー:彼らは、あなたがどのような姿であっても、受け入れることでしょう。
      ですが、魂が破滅すれば、それも叶いません。
      それでも、降臨を望みますか?

マリア  :……。

ヴェーナー:それがあなたの生き方であれば、私に否定することはできません。

マリア  :……。

ヴェーナー:自分を恥じることはありません。
      コール・ゴッドを行わずに一生を終えた最高司祭も、大勢います。

マリア  :レイディアはどうなる?

ヴェーナー:今ここでレイディアが死ねば、ゴーストとなってミゴリに魂を囚われ、
      復活は困難です。

マリア  :…………ぬしは、我にどちらを望む?

ヴェーナー:あなたの運命は、あなた自身が決めることです。

マリア  :……………………。

ヴェーナー:あと5分足らずであなたの魂が解放されます。それまでに決めなさい。

マリア  :……我に降臨せよ。全て無に……帰そうとも、後悔など…ない。

ヴェーナー:それがあなたの生き方であれば、私に否定することはできません。

マリア  :500年生きた我の魂、安うないぞ。

ヴェーナー:500年を耐えたあなたであればこそ。

マリア  :レイディアのこと、頼んだぞ。

ヴェーナー:はい。最後に、伝えたい言葉はありますか?

マリア  :……我のことを知れば、レイディアは泣くであろうな…………。
      いっそ、我の存在ごと忘れさせてしまえ。神ならば可能であろう?

ヴェーナー:わかりました。それでよいのですね?

マリア  :…………さらばじゃ……。





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