商人と魔術師








G   M:数年前。オランのとある商会の一室で。

フィーエル:だから、あの急成長の陰には、絶対何かある筈なんだよ。

コーウェル:そういうことでしたら、今日にでも調べさせましょう。

フィーエル:頼もしいねぇ。いつものことながら、助かるよ。

コーウェル:フィーエル様には、大恩がありますので。

フィーエル:情報と資金を練り合わせりゃ、大金になるんだよねぇ。不思議不思議。

コーウェル:資金があったところで、我々にはできませんよ。

フィーエル:古参の貴族の情報網こそ、アタシらには無理な話さ。

コーウェル:ご存じの通り、主要な街全てを拠点に、情報を収集するだけのことです。

フィーエル:簡単に言ってくれる。さすがは情報通のトールフォードだねぇ。

コーウェル:いえ、私など末端にすぎません。今や、本家のお嬢様のお守りですよ。

フィーエル:例の公女アリエルかい。女として、気持ちはわからないでもないがねぇ。

コーウェル:こちらとしても、イェーガー様に及ばない限り、黙認する方針です。

フィーエル:子供ってのは、ままならんもんだねぇ。どいつもこいつもさ。

コーウェル:……ですが、シェルマ様以外は……おっと、すみません。

フィーエル:本当のことだからいいんだよ。あの子は、まだ手がかからない方さ。

コーウェル:……?

フィーエル:優秀すぎるのも困ったもんだよ、まったく……。

コーウェル:……はぁ……それで、例の件なのですが。

フィーエル:これでいいかい?

コーウェル:……こんなに……!?

フィーエル:持ちつ持たれつだからねぇ。分け方はいつも通りだよ。

コーウェル:助かります。

フィーエル:お互い様さ。金だけじゃどうにもならないことは意外と多いしねぇ。

コーウェル:しかし……あそこの規模なら、フィーエル様の敵ではないかと……。

フィーエル:金動かせる方がそりゃ強いさ。弱いなりに上手すぎるのが気になるんだよ。

コーウェル:……引き抜き……ですか?

フィーエル:いんや、あんまり優秀すぎても息子の敵になるからねぇ。難しいとこだよ。

コーウェル:難しい話ですね。

フィーエル:アタシより有能な商人は多い。だから、早めに握っとかないとねぇ。

コーウェル:いえ、そんな……はぁ……とにかく、わかりました。

フィーエル:馬鹿息子のこと、頼んだよ。

コーウェル:わかりました。





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