決戦場の邪神








G   M:その少し前。
      ロベールの指示通り、4人の騎士が人形の設置に向かいました。
      レイディアたちは、人形の設置終了まで作戦会議。
      ロベールの探知能力は発動中なので、
      既に人形に囲まれた部分のレーダーは常に作動しています。
      そして、砦の両翼から設置に向かっていた騎士たちが
      揃って砦のラインを超え、砦内部の様子が探知されます。
      砦内部には、ダークエルフが2人。レベルは1と10。
      暗黒神官は体が動かなくても意識と口さえあればウーンズが使えますので、
      探知されたようです。

ロベール :……どういうことだ?

レイディア:どうしたの?

ロベール :砦の中の生存者が、ダークエルフ2匹なんだが……?

レイディア:え!!?

カトレア :まさかっ!!!

ロベール :今、ダークエルフ1匹になった。10レベルだ。

G   M:その言葉をきっかけに、空がみるみるうちに暗くなってゆきます。
      そして、完全に暗くなるでもなく、雲一つない灰色の空で固定されました。

レイディア:ねえ、それ探知できなくなったら死んだってこと!? 答えなさいよ!!!

ロベール :……わからん……なぜダークエルフが増えたんだ……?

トゥエリ :最初は1人だったんデスね?

G   M:そんなやりとりをしている間に、ロベールは異変を感じます。
      先ほどダークエルフの反応が消えた場所に、1体分の反応が。分類はその他。
      通常は起こらないことですが、探知されるレベルが
      どんどん上昇していきます。1→2→3→4→5→6→……

ロベール :何かが出現した。レベルがどんどん上がっている……。

レイディア:何レベル?

G   M:……7→8→9→10→11→12→13→……

ロベール :……い、今、じゅうさんに……。

トゥエリ :13!?

フアナ  :……13……きつい……。

G   M:……14→15→16→17→18→19→20。20でストップです。

ロベール :…………レベル……20だ……。

フィーエル:あ、あうー。

マリア  :……カストゥールが滅びかねん規模じゃのう。

レイディア:これ、もし完全な降臨だったら、世界ごと滅ぶよね?

トゥエリ :前代未聞デスね……。

ロベール :ぜ、全軍退却ぅーっ!!!

レイディア:はいはい。私たちが戻らなかったら、伝令頼むからね。

ベス   :なりません!! 逃げてはなりません!!

G   M:車輪騎士団は騎乗し、退却の準備に入ります。
      馬の無い者も、手持ちの武器などを捨てて走る準備を整えます。
      ベスはこの場に留まる気のようですが。

ベス   :危難のときこそ、至高神ファリスの威光を!!

G   M:そして、カトレアにだけ、ミゴリの声が聞こえます。

ミゴリ  :なんじのやくめはおわった。

カトレア :終わったも何も、世界ごと終わりそうなんですが……ねぇ?

ディース :ちっ。この期に及んで独り言かよ。

G   M:なお、その何者かが20レベルになってから、既に1分が経過しました。
      空は依然として灰色のままです。

ディース :……やばくね?

レイディア:命乞いしてもいいけど、そこのエルフ差し出せとか言われそうよね。

フアナ  :……。

ベス   :邪悪に命乞いなどもってのほかです!!

トゥエリ :相手はダークエルフデスからね。

フアナ  :(短剣を抜きながら)……降伏したいなら……勝手にすればいい……。

レイディア:まあ、ダークエルフに降伏してもろくなことなさそうだけど……。

ベス   :邪悪は討たねばなりません!!

レイディア:司祭様、いざというときは、巨悪の存在を本山に伝えていただかねば。

ベス   :正しき信徒であれば、そのようなことをせずとも啓示が下ります!

フィーエル:あ、あうー。

レイディア:なら、私ら危なくなったらレスキューで逃げるんで、そこんとこよろしく。

ベス   :そ、そのような高等な奇跡を……?

カトレア :司祭様はどうされますかー?

G   M:そのとき、何者かの刺すような視線を感じます。視線の主はわかりません。
      感覚としては、全方向からみつめられているような感じです。
      気配に耐えられなくなったのか、フィーエルの足元にいたエートが、
      一目散に森へと駆け出しました。

フィーエル:あ、あうー!??

レイディア:……所詮は獣ってわけね。

マリア  :来るぞ!!

ディース :かっこよく剣を抜くぜ! 不意打ち対策にもなるしな。

G   M:鞘から抜かれたディースの剣はカタカタと音を立てて振動します。
      やがて、振動が激しく小刻みになり、最後には、
      ガラスのような乾いた音を立てて、刀身が粉々に砕け散ります。
      破片の一つがディースの頬をかすめて血が出ますが、ダメージはありません。
      なお、他のマジックアイテムに異常はありません。

ディース :…………ぇ?

レイディア:魔剣が……割れた……!?

マリア  :……あ……ありえぬ……。

G   M:瞬間移動したのか、いつの間にか、
      砦の前にダークエルフの少年が立っています。
      側には大人のダークエルフの姿も。距離は、現在50メートルほどです。
      姿形こそピニーズですが、雰囲気が全く違います。
      ダークエルフの少年は、微笑みを浮かべながらゆっくりと歩いてきます。
      セージ技能で判定を。(ころころ)レイディア18、フアナ17、
      トゥエリ11、カトレア13、ディース16、フィーエル11、
      マリア12。あと、ベスは8。
      レイディア、フアナ、ディースにはわかります。敵は肉体を得た神。
      古代語魔法と暗黒魔法を少なくとも15レベルで使用するほか、
      およそ何でもできます。
      それに加えて、レイディアには、神を倒す方法がわかります。
      器である肉体を破壊するか、ディスペル・マジックでコール・ゴッドの
      魔力を消すか、こちらもコール・ゴッドで神を降臨させて対抗するかです。
      ディスペル・マジックは、6ゾロならば達成値にかかわらず
      相手の魔法を解除できます。あとは、どこかで、封印されていた邪神の
      復活直後に人間の手で再び封印したという噂を思い出します。
      復活直後は完全な力を振るえないようですね。
      なお、生贄の魂は砕け散ってしまい、もはや救済は不可能です。

フアナ  :……神……。

ディース :神降臨キター……って、シャレになってねーよな、これ。

レイディア:15メートルまで引きつけて、ディスペルしかないわね。

トゥエリ :魔剣を壊すということは、確実に邪神が降臨してますよネ?

フアナ  :……あのダークエルフ……自分の子供を生贄に……。

カトレア :でも、30メートルで人数分のクリップルが飛んできますよねー。

レイディア:ディスペルは距離3倍拡大でも35メートルだから、その辺が限度ね。

フアナ  :……視界内に、テレポートされる……。

レイディア:ああ、そうだ……。

トゥエリ :ディスペルを察知した時点で、逃げられるわけデスね。

レイディア:……攻略法思いついた。レスキューで逃げるわよ。

カトレア :なら、レスキューを。一応司祭様にも。(ころころ)成功です。

G   M:まず、ベスは同意しないので、目標から除外されます。
      そして、カトレアの魔法により、一行はオーファンへ移動……
      したかったのですが、何も起こりません。
      カトレアは精神力を5点消費し、残り3点です。

レイディア:……カトレア、失敗した?

カトレア :成功したはずなんですけどねー。おっかしいなー?

少年   :われはかみ。いのりをきかぬこともできる。

G   M:ゆっくりと歩きながら、少年は口を開きます。
      カトレア、フアナ、マリアにはわかります。口調がミゴリですね。

カトレア :……ま、まさか……ミゴリ……!!!?

レイディア:ファラリスじゃなくてミゴリなの!!?

G   M:ミゴリの名を聞いたベスは(ころころ)出目4で、何もわかりません。

ベス   :答えなさい! ミゴリとは何者ですかっ!?

マリア  :マイナーな邪神じゃ。

ベス   :……!!?

フアナ  :……ダークエルフって……ファラリス信者なんじゃ!?

ミゴリ  :にんげんにしいたげられただーくえるふがふくしゅうをねがったとて、
      ふしぎはあるまい。

フアナ  :……ダークエルフが、悪い……。

ミゴリ  :そして、だーくえるふにしいたげられたにんげんがふくしゅうをねがった。

レイディア:……そ、そんな…………。

マリア  :筋書き通りであったとはのう。我も一杯食わされたわ。

ミゴリ  :ふくしゅうのれんさ。すばらしいとおもわぬか?

カトレア :…………。

G   M:そうこうしているうちに、ミゴリが40メートルの位置まで近付きます。

レイディア:何とかしてテレポートを封じないと……。

マリア  :我の精神点5点と、レイディアの3点で、全員にカンタマじゃ。

レイディア:司祭様、正義のため、敵の魔法を効きにくくします。抵抗しないでください。

ベス   :……わかりました。

マリア  :(ころころ)×8。かかったぞ。

フアナ  :……自分に……ヘイスト……。(ころころ)14。

G   M:フアナの敏捷度が2倍の40になり、ミゴリより速くなりました。
      これで、行動を読まれても先に行動できます。
      しかし、フアナの精神力は残り少ないですが。

レイディア:世界が滅ぶよりマシよ。フアナの口にキスするから。

フアナ  :……避けない……。

マリア  :見とうもないが……指輪を外してフアナに投げるぞ。

フアナ  :……キャッチ……指輪をはめる……。

マリア  :生き残ったら、存分に愛し合おうぞ。

レイディア:考えとくわ。

フアナ  :(……ううっ……初めてが女とか、ありえないんだよ……。)

G   M:レイディアとフアナは、互いの精神力を自由に使えるようになりました。
      そして、ミゴリが35メートルの位置まで近付きます。
      ここから本格的な戦闘ラウンドに入ります。1ラウンド目の行動宣言を。
      なお、神は常に相手の宣言を聞いてから行動できます。

フアナ  :……ディスペル・マジック……距離3倍……。

レイディア:捨て身で攻撃されたら面倒だから、私もディスペル3倍で。
      虎の子の3点魔晶石を1個使うわ。

トゥエリ :槍を構えて前に出ますヨ。

ディース :しゃーないから、その辺に落ちてる武器拾うわ。

G   M:民兵が捨てていった武器がありますので、大丈夫です。

フィーエル:あう。杖を、振る。

マリア  :我は神とやらの精神力を削っておくかのう。本を向けるぞ。

トゥエリ :弱点がわかるかもしれませんしネ。

カトレア :…………。

G   M:ダークエルフは様子見。ミゴリは歩いて前進します。





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