くらいみらい








G   M:馬車の荷台で、御者と少年が話しています。

御者   :すげぇやなあ。こんなちっちゃいのに学院の特待生かぁ。

クロヴィス:やめてよ、まだ受かってないから。それに、そんなに小さくないよ。

御者   :いやいや、お送りを仰せつかるくれぇだから、見込みあるってことだぁ。

クロヴィス:それは、親が先生と知り合いだから。

御者   :ますますすげぇや。大きくなったら導師様じゃねぇか!

クロヴィス:僕はだめだよ。いつも肝心なとこで緊張しちゃうから……。

御者   :そんなことねぇ。話してたらわかるや。坊ちゃん頭いいからよ。

クロヴィス:そんなに凄くないよ……。

御者   :試験受かったら、寮入んだろ?

クロヴィス:うん。お父さんもお母さんも、街は嫌いみたいだから……。

御者   :ならビシッとしとけ。俺みたいのにおどおどしてっちゃ、なめられんぞぉ?

クロヴィス:……うん……よく、言われる……。

御者   :その顔は、お前さんのアレかぁ?

クロヴィス:やめてよ。ただの幼馴染だよ。

御者   :そか。しばらく会えねぇから、お別れの前に色々やっとけよぉ?

クロヴィス:何もやらないよぉっ!

御者   :はははっ。

G   M:馬車は村の近くまで来ます。
      そして、今まで晴れていた空が曇りはじめました。

クロヴィス:雨、降るのかな? うちで雨宿りしてく?

御者   :ありがてぇが、俺ぁ急いで帰るわ。まぁだ仕事あるしよ。

クロヴィス:僕ここでいいよ。ありがとう。

御者   :いやぁ、最後まできちっと仕事しねぇと親方に怒られっからよ。

クロヴィス:お祝いの用意してくれてるから、引き止められるよ。急ぐんでしょ?

御者   :坊ちゃんはそれのがいいんかい?

クロヴィス:うん。

御者   :しゃあねぇなぁ。

G   M:馬車が止まり、少年は馬車の荷台から降ります。

クロヴィス:ありがとう。気をつけてね。

御者   :あぁ、坊ちゃんも達者でなぁ!

G   M:馬車は向きを変えると、心持ちスピードを上げて遠ざかっていきました。

クロヴィス:みんな元気にしてたかな?

G   M:歩いて町に近づいていると、かすかな違和感を感じます

クロヴィス:

G   M:お昼前にもかかわらず、煮炊きの煙が上がってません。

クロヴィス:今日はお祝い用のメニューなのかな?

G   M:いつもの話し声も聞こえません。それこそ、人が全くいないかのように。

クロヴィス:みんな外にいるのかな? そんなはず無いんだけど……。

G   M:不安に耐えかねて、少年は走り出しました。





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