涙の間に間に








レイディア:お祭の最中です。司祭様はお引き取りください。

ベス   :不正な手段で催し物を妨害しようとした者は、断罪されねばなりません。

キャンディ:何の法に触れるの?

ベス   :ファリスの法です。彼女のしたことを、壇上で明らかにします。

レイディア:イリューは魔神に利用されただけよ!

アルフィア:……え? ……まさか、あれがイリューの仕業だっていうの!?

ウルク  :はんっ。あの根暗にそんな根性ねえっての。

オーマ  :

レイディア:今回は目をつぶってもらえませんか?

ベス   :なりません。

キャンディ:わたしに勝てるの?

ベス   :正義は必ず勝ちます!

レイディア:ソーサラースタッフの私が麻痺させたら勝てるけど、
      ファリスの司祭にそんなことしたら、絶対つまみ出されるし……。

キャンディ:杖を構えるよ。イリューの邪魔はさせないもん。

ベス   :これ以上の敵対行動があれば、邪悪と判断します。

G   M:控え室では、レイディア+キャンディVSベスのにらみ合いです。
      なお、他のメンバーはほとんど一般人なので、
      ガチで一触即発の状況だと気付いてすらいません。
      その間に、ゆっくりと階段を上っていたイリューが舞台に立ちます。

イリュー :イリューです。この舞台に立ちたいって、ずっと願ってました。
      そして、……笑わないでくださいね。もしできるなら、優勝したいって。
      そして、今年初めてここに立てることになって、
      その気持ちがもっと強くなりました。

キャンディ:いい演説だね。

イリュー :でも、わたしって、そんなにかわいくないですよね。
      だから、他の子が出られなくなればいいって……。

レイディア:ちょっと、やめなさい!!

G   M:既に下からの声が聞こえる位置ではないですが。

イリュー :予選の後、他の子が出られなくなるように、おまじないをしました。
      そしたら、指輪から怪物が出てきて、お前の望みを叶えてやろうって。
      怪物に言われたとおり、他の子が出場しませんようにって、
      何回も何回も、いっぱい書きました。

ウルク  :……マジかよ?

アルフィア:そんな……。

G   M:会場にざわめきが広がります。審査員たちも同じです。

イリュー :後で、怪物がその紙をみんなに渡してるって知りました。
      それで、みんな怖がって出たくないって。
      怪物は退治されたけど、わたしのせいで今日出られなくなった人もいます!

G   M:会場には、そういえばエッシャーが出てないとか、
      ありゃ腹痛だろとか、騒然となります。

イリュー :みんな、本当にごめんなさい!!

G   M:そこでイリューが泣き出しました。
      やがて、係員に連れられて、泣きながら控え室に帰ってきます。

ベス   :……ファリスは自らを戒める者に寛容です。以後、気をつけるように。

G   M:ベスはきびすを返して、帰っていきました。
      そして、観客席が騒然としているので、
      次のキャンディが早く舞台に上がるよう、係員にせかされます。

キャンディ:キャンディ?

レイディア:お前だよ。

G   M:キャンディは舞台に上がります。その間の控え室ですが。

レイディア:泣いてるイリューを励ますわ。

G   M:そこに、アルフィアとウルクが来ますね。ウルクは怒ってます。

ウルク  :一人だけカッコつけてんじゃねえよ!

G   M:謝り続けるイリューに顔を上げさせ、ウルクの平手が炸裂します。
      敏捷度に差がありすぎるので、かばえません。

レイディア:ちょっと、やめなさいよ!

アルフィア:もう。あとでもう1回上がるのに、なんてことするのよ。

イリュー :ごめんなさい。ごめんなさい……。

ウルク  :……ボクだって、アルフィアの声枯れやがれとか思ってたんだよ。

アルフィア:ほんとは私も、ウルクがお腹痛くなりますようにってお祈りしてた。

イリュー :……え?

アルフィア:そんなのみんな考えることなんだから、気にしなくていいのよ。

ウルク  :タダの気取った根暗かと思ったら、結構やるんだな。

アルフィア:私の喉が悪くなるように念じてる人も充分根暗だと思うけど。

ウルク  :黙れよ。食らわすぞ。イリューは今の一発で許してやるけどな。

アルフィア:私も実力が発揮できたし♪

イリュー :……許して、くれるの?

ウルク  :当たり前だ。ボクら、今日から友達だし。

イリュー :ありがとう。ありがとう。でも、エッシャーはわたしのせいで……。

ウルク  :はあ?

アルフィア:あの子、毎年プレッシャーで体調崩してるけど。(笑)

ウルク  :予選の成績は毎回凄いらしいけど、本選出場ゼロだもんな。(笑)

アルフィア:でも、エッシャーが出たら反則でしょ。(苦笑)

ウルク  :そりゃそうだ。(笑) で、イリューは毎年見てなかったわけ?

イリュー :いつも予選で落ちてたから、本選は見たくなくて……。

ウルク  :傾向と対策くらい練れよぉ。後でボクがみっちり教えてやるから。

イリュー :うん。

アルフィア:でもね、イリューはさ、どうして出場したかったの?

イリュー :優勝したら、みんなが話しかけてくれて、友達ができると思って。

アルフィア:勇気を出せば、そんなの簡単よ。

ウルク  :難儀な奴だなぁ。ボクみたいに自分から話せよ。

アルフィア:ウルクは節操ないからね。あれは真似しないでいいよ。

ウルク  :言い過ぎ。後で腹パンチな。

アルフィア:やめてよね。あんた、イリューの頬どうする気?

ウルク  :悪い。でも、さっきよりいい顔だぜ?

イリュー :うん!





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