レベル10ジャイアントっす








結局、部族の集落は1日で行ける距離ではないことを知り、
レイディアとマリアもタングを使って話を進めます。
ちなみに、フアナはここから1日の距離に巨人の生息地
(その他、自分達の存在が脅かされるほどの強敵)がないと確信してたわけですが。
なお、機密保持のため、冒険者の店の相談室をトゥエリが借り切りました。






G   M:ちなみに、他に居場所もないので、2人の子供も同席しています。
      椅子に座り、クゥバスが話し始めました。

クゥバス :部族の領域を巨人が荒らしている。奴らは協定を破った。

トゥエリ :念のために聞きます。差し迫った危機は?

クゥバス :ないが、これ以上領域を荒らされるとこちらも手を打たざるをえない。

フアナ  :……族長は……情報通……。

クゥバス :そうだ。よくわかったな。

フアナ  :……トゥエリを頼るのは……そういうこと……。

レイディア:トゥエリの現在地も知ってたふしがあるしね。

ディース :(下位古代語で)ま、このレベルの戦士が主力なら、巨人は無理だよなー。

クゥバス :今、我らを馬鹿にしたか?

G   M:しゃべってるところを見てれば、悪口はなんとなく分かるみたいですね。

フアナ  :……違う……。

ディース :(共通語で)つーかさ、この人、何言ってんの?

レイディア:(下位古代語で)なんとなくわかるときもあるから、黙っときなさい。

フィーエル:あう。ディースさん、悪い。

ディース :今のは不可抗力だって。

レイディア:(下位古代語で)奴隷、次やったらちょん切るからね。

ディース :ひぃぃぃぃぃっ!!?

レイディア:で、報酬は?

クゥバス :ここにある。族長の宝だ。

G   M:クゥバスは、宝石を取り出します。魔法的効果はないようですが、
      かなりの逸品ですね。1万ガメルにはなります。

レイディア:まあ、適正報酬ね。

トゥエリ :それは、族長のではなく、部族の宝デスね。受け取れないデスよ。

レイディア:なら、仕方ないわね。ただ働きか〜。

トゥエリ :レイディアさん……。

レイディア:あと何年か丁稚継続ね。それで許してあげるわ。

トゥエリ :丁稚、だったんデスか……。

ディース :丁稚、だったのか。

マリア  :しもべかと思うておったが……。

G   M:そのとき、トゥエリに集中した視線にいたたまれなくなったのか、
      リノが部屋の隅に走り出しますね。

男の子  :リノー!

女の子  :リノ!

カトレア :レイディアさん。領域侵犯には領域侵犯をもって応えないと……。

レイディア:却下。では、今回はただ働きです。ついてくる人?

マリア  :我はレイディアについて行くぞ。

フアナ  :……行く……。

フィーエル:あう。みんなを、助けないと。

ディース :仕方ねーな。いつもぱしらせてるし。

カトレア :うーん……集落で布教させてくださいよ?

トゥエリ :皆さん、ありがとうございます。






かくして、片道3日の位置にある、トゥエリの集落に向かうことになりました。
もちろん、クゥバスたちも連れています。一行は、3日目の昼には集落に到着します。






G   M:典型的な蛮族の集落です。ただ、思ったよりは文明化されていますね。
      特に族長の家になると、小さな村の村長宅といったレベルです。
      比較的排他的でない部族であることが見て取れます。

クゥバス :(部族語で)ここが族長の家だ。

G   M:応接室に通されます。族長は、筋骨隆々とした老人で、
      褐色の肌に銀髪ですね。眼光が鷹のように鋭いです。

族長   :(共通語で)トゥエリ、よく帰った。(部族語で)クゥバス、ご苦労。下がれ。

トゥエリ :(共通語で)お恥ずかしい話デスが……ただいま帰りました。

フアナ  :……恥ずかしながら……帰って参りました……。

レイディア:まあ、そうやって共通語で話してくれると助かるわ。

族長   :ワシ以外に話せる者がいなかった。
      クゥバスを行かせたのは、血気盛んなあの者をここに置いておくと、
      一人で巨人の領域に突っ込みかねんからじゃ。

レイディア:迷惑な話ね。

トゥエリ :報酬は必要ありません。部族の宝を頂くなど、滅相もないデスよ……。

族長   :所詮はモノだ。村の平穏に比べるべくもない。
      ……ならば、お前が連れている方々の報酬はどのようにすればいいのだ。

トゥエリ :皆、無償でよいと。
      あと、フェネスの神官が1名、村での布教を希望しています。

カトレア :(軽い笑顔で)よろしくお願いしま〜す。

族長   :(……こやつ、布教が目的ではないな。)……良い仲間を持ったな。

ディース :仲間っていうか、パシリ?

トゥエリ :(下位古代語で)黙っててくださいヨ!

族長   :パシ……? ともかく、トゥエリの武勇はワシの耳にも入っている。

フアナ  :……武勇伝……武勇伝……。

族長   :レインフィールド奇術団と呼ばれる冒険者グループに、
      褐色の肌の勇敢な戦士がいると。

ディース :なんかさ、バイアスかかってね?

族長   :バイ……?

トゥエリ :(下位古代語で)だから、黙っててくださいって!

マリア  :(下位古代語で)レイディアが酔って「踏んでほしいの?」って言ったとき、
      しばらく考えてからおもむろに頷いた戦士ならおるがのう。

レイディア:(下位古代語で)うわー。M男がいる。

フアナ  :(下位古代語で)きんもー☆

トゥエリ :(下位古代語でしゃべりながら、鬼の形相で)お願いですから、
      不名誉な事実は黙ってて下さい! 後で言うこと聞きますから!

ディース :(下位古代語で)仕方ねーなー。

マリア  :(下位古代語で)異存はないぞ。

レイディア:(下位古代語で)なら、とっとと話を進めなさいよ。

族長   :……そろそろよいかな?

トゥエリ :はい。すみません。

族長   :我が部族は、領域を巨人のそれと接しておる。

レイディア:境界標のようなものはあるんですか?

族長   :境界上に植えられたリスダの木がそれにあたるが。
      ……最近、頻繁に境界が踏み越えられているようなのだ。

トゥエリ :境界の裁定は、遠い昔、巨人の指導者との間でなされたんデスよね。

族長   :いかにも。

ディース :つーか、話が通じるってことは、ヒル・ジャイアント?

族長   :フォレスト・ジャイアントだ。

フアナ  :……10レベル……。

ディース :よくそんな凶暴なのと話が通じたな。

族長   :森巨人とはいえ、知恵のある固体や、性格が穏やかな固体もおる。

フアナ  :……なら、おじいちゃん……ジャイアント語、話せるね。

族長   :いかにも。だが、言語の問題だけではない。
      話し合いが通じた背景には、我が部族の勇猛さがある。
      強力な巨人とはいえ、戦士たちが罠を用い、
      集団で囲めば、倒せない相手でもない。

ディース :じゃあ、何で俺らに?

レイディア:愚問ね。たとえ騎士クラスが囲んでも、10人は死ぬ相手よ。

族長   :お察しの通りだが、要因は複数ある。
      第一に、領域侵犯者が複数である可能性があること。
      第二に、領域侵犯が巨人の長の意思に基づく可能性があること。
      第三に、巨人の長にそれらを直接確認する必要があること。以上だ。

フアナ  :……つまり、巨人と全面戦争の可能性も……。

フィーエル:あうー。戦争、よくない。

レイディア:要するに、まず交渉しろってわけね。

カトレア :ふむふむ。それと、族長の身の保全が必要なわけですね。

族長   :そうだな。我が身を惜しむ必要がなければ、単独で巨人の集落に行っておる。

トゥエリ :我が部族は、個々は強いものの、戦慣れはしていませんからネ。

フアナ  :……指揮官に事故があったら……全軍突撃と退却の二択に……。

ディース :マスコンバットかよ!?

レイディア:結局のところ、族長は交渉に出られますか?

族長   :出る。代理だのなんだのが通用する相手ではないからな。

レイディア:つまり、護衛→交渉決裂→最悪の場合は全面戦争って流れっすね。

トゥエリ :護衛→交渉成立→和解って可能性もありますヨ!

フアナ  :……護衛→交渉の余地無し→撲殺……。

フィーエル:あ、あうー。

レイディア:縁起でもないこと言わないでよ! ……集落の巨人の数は?

族長   :10以内だ。これ以上の増加が望めんレベルだな。

フアナ  :……衰退は……絶対的……。

カトレア :なるほど。だから国も放置してるわけですね。

ディース :未開の地の怪物まで掃討してたら、きりがないっつーの。

レイディア:お前、たまには空気読めよ。

トゥエリ :ディースさん……。

族長   :構わない。本当のことだ。

レイディア:とにかく、話はまとまったわね。出発はいつにしますか?

族長   :死を恐れんのか? 無事で済む相手でないことはわかっている筈だが。

レイディア:私はいつもそのためにお酒を飲んでるわ。
      いつ死んでもいいように。今日が幸せでありますようにって。

族長   :よくわからんが、わかった。留守の支度をするので、しばし待ってくれ。
      心配の種は今から取り払おうではないか。

レイディア:私は、全学生の中でも一番の魔法の使い手です。
      私たちが手を貸したからには、問題をいい方向に転がしてみせます。

トゥエリ :転がすんデスかっ!?






族長の支度を待ち、一行は森の中へ出発します。






G   M:森を進み、数メートルおきに並んでいるリスダの木の境界を越えます。

ディース :俺ら、まともなレンジャーいねーよな?

トゥエリ :今は族長がいますからいいですけどネ。

G   M:しばらく進んだところで、不意打ち判定を行います。
      (ころころ)族長の出目が低くて、最高がマリアの17。敵が16。
      双方不意打ちなしですね。
      木陰から、1体のフォレスト・ジャイアントが出てきます。
      既に戦闘態勢ですね。

マリア  :来たぞ!

レイディア:いきなり!?

族長   :(ジャイアント語で)そちらの族長に用があって来た!

G   M:巨人は聞く耳を持たず襲い掛かってきます。

族長   :巨人側のテリトリーだ。傷つけないようにお願いする。

レイディア:難しい注文ね。前列はディース、フィーエル、トゥエリで。
      念のため、族長は下がってください。マリアも下がって魔法よ。

族長   :わかった。

マリア  :仕方ないのう。

レイディア:手は一つか。前衛は防御専念、後衛はパラライズよ。

フアナ  :パラライズ! (ころころ)効かない。

マリア  :我のパラライズで! (ころころ)ぬう。1足りぬか。

レイディア:パラライズ! (ころころ)目が腐ってるわね。

G   M:巨人の反撃は(ころころ)ディースへ。

ディース :(ころころ)1ゾロ! ま、素通しでも死なねーけどな。
      (ころころ)3か。13点食らったぜ。ちょっと痛ぇかな?

カトレア :敵の攻撃は読んでいたので、敏捷度0で治しましょう。
      (ころころ)12点治りました。

ディース :サンキュな。

トゥエリ :あれは、私が狙われたらまずいんじゃ……?

フアナ  :……パラライズ! (ころころ)効かない。

マリア  :パラライズ! (ころころ)ダメじゃ。

レイディア:パラライズ! (ころころ)うーん。

G   M:巨人の攻撃は(ころころ)トゥエリ。

レイディア:かわしなさい!

トゥエリ :(ころころ)当たりデス。8点止めて、11点食らいましたヨ。

フアナ  :……あと1点で……アウトだった……。

カトレア :(ころころ)14点治りました。全快ですねー。

フアナ  :パラライズ! (ころころ)1ゾロ!

マリア  :パラライズ! (ころころ)ダメじゃのう。

レイディア:パラライズ! (ころころ)惜しい、あと1!

G   M:(ころころ)またトゥエリが狙われます。

トゥエリ :(ころころ)当てられて、9点通りましたヨ。

カトレア :1ゾロ以外は全快ですねー。(ころころ)治りました。

レイディア:確率的にはそろそろ効いてないとおかしいんだけどね……。

フアナ  :……ギルティアの精神力で……パラライズ! (ころころ)効いたっ!

G   M:はい。それで巨人は動きを止めます。ちょうど不安定な体勢だったので、
      巨人は倒れ、大地を揺るがすような大きな音を立てます。

フアナ  :……動くとまずいから……集中……。

ディース :縄で縛れる大きさじゃねーな。どうする?

レイディア:かといって、パーティーを分断するのも得策じゃないわね。

カトレア :敵の能力はわかってますからねー。触れる距離まで行きましょう。

レイディア:ちょっと、何する気?

カトレア :こっそりポイズンを唱えます。(ころころ)効きません。
      (ころころ)効きません。(ころころ)効きません。
      仕方ないのでフアナさんの魔晶石を失敬しましょうか。

フアナ  :……人が、動けないからって……。

カトレア :(ころころ)6ゾロでかかりました。もう魔法解いていいですよ。

フアナ  :……無言でカトレアに……往復ビンタ……びびびび。

カトレア :痛いですって。精神力が切れたから仕方ないですよ。

G   M:フアナが集中を解いたのに、巨人は動けません。
      なにやら苦しそうにぴくぴくしてますが。

レイディア:カトレア、あれ何? 症状から考えて、神経毒?

カトレア :悪しきものに戒めを与える、フェネスの特殊神聖魔法です。

レイディア:命に別状はないわけね?

カトレア :はい。大丈夫です。

マリア  :いい子にしておれば、我が教えてやるぞ?

レイディア:それは事典に載ってるわけ? 面白そうだから今度貸してよ。

マリア  :いい子にしておればのう。

レイディア:マリアのケチ……カトレア、麻痺の持続時間は?

カトレア :んー。12時間ですかねー。

レイディア:これが境界侵犯の犯人かはわからないけど、
      こいつらのテリトリーなら放置して大丈夫でしょ。先に進むわよ。

トゥエリ :しかし、魔法使いと神官の精神力が軒並み削られましたネ。

フアナ  :……巨人の集落……本当に大丈夫なの……?

族長   :心配ない。巨人の族長だけは話がわかる奴だ。

ディース :だけなのかよっ!?

レイディア:次遭遇したらまずいわ。巨人の集落までの距離は?

族長   :まだかなりあるな。1時間はかからんが……。

ディース :どうする、リーダー?

レイディア:とりあえず、麻痺させたこいつがネックね。

トゥエリ :正当防衛という言い訳が通じるかどうか……。

フアナ  :……集落が、二分されてたりとか……。

レイディア:ありえない話じゃないわね。全部敵だったら、さすがに手に負えないし。

マリア  :我はまだサーバントが出せるぞ。

トゥエリ :しかし、拉致して撤退はまずいデスからね。

フアナ  :……放って撤退すると……もう1回戦うことになるかも……。

フィーエル:あう。サーバントで、引っ張って進むのは……。

レイディア:問題外よ。

フィーエル:あうー。

レイディア:放って進むのに反対の人は?

カトレア :現段階で消耗が激しすぎるような気がするんですけど、大丈夫ですかー?

レイディア:危なくなったら1人で逃げていいわ。

カトレア :了解しました。

ディース :俺は逃げねーけどなっ。

レイディア:頼もしいわね。

フアナ  :……回復の確保を……。

レイディア:そうね。相手は単体攻撃だから、クズ魔晶石をカトレアに何個か渡しとくわ。

カトレア :助かります。

レイディア:念のために聞くけど、さっきの麻痺はあと何発打てる?

カトレア :んー。ゼロですねー。

レイディア:やっぱりね。仕方ないわ。

フアナ  :……接触しないと使えないっぽいし……。

カトレア :あははー。そうですねー。

族長   :次の戦いはワシが出るぞ。

レイディア:大丈夫っすよ。……じゃあ、行くわよ。





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