都市封鎖
G M:そうこうしているうちに、前回の仕事から1週間が経過しました。
レイディア:生活費はともかく、酒代がきついわね。
ディース :なら、やめろよ。
レイディア:口の利き方には気をつけることね。
ディース :や、やめてくださいっす。
トゥエリ :ディースさんは、敬語に慣れてないデスね。
オルフ :慣れておいて損はないと思うのですが。
マリア :酒などなくとも、我が酔わせてやるというに。
レイディア:マリアは黙ってなさい。……まあ、ご飯代は浮くしね。
ディース :はい。おごらせていただくっす。
フアナ :……メッシー……。
G M:さて、普段全員が冒険者の店にいますか?
レイディア:フィーエルは呼んどくわ。後で呼びに行くの面倒だから。
フィーエル:あう。仕方ないから、店で勉強する。
レイディア:うちの奴隷の部屋使っていいわよ。
ディース :……ま、そんくらい別にいいけどよ。
レイディア:……え?
ディース :ご自由にお使いくださいっすよ!
フィーエル:あうー。かわいそう……。
レイディア:好きでやってるのよね?
ディース :んなわけ……はい、大好きっすよ。
フィーエル:あ、あうー。
オルフ :もう4レベルですし、昼間はお勤めがあります。夕方以降は店にいますが。
G M:では、夜。
ディース :お、依頼か?
G M:フードをつけた怪しい男が店に入り、店のおばちゃんと話しています。
レイディア:(小声で)あからさまに怪しいわね。
G M:しばらくすると、おばちゃんがテーブルに来ますね。
おばちゃん:オルフさんご一行に依頼の相談だよ。相談室に行っておくれ。
レイディア:?
オルフ :レイディアさん一行でなく、わたくし一行ですか? はて?
レイディア:まあ、とりあえず行ってから考えましょう。
フアナ :……単に……オルフの知り合いという可能性も、あるしね。
オルフ :はい。(いえ、それがまずいかもしれないんですが……。)
G M:相談室に行きますか?
オルフ :行くほかないでしょうね。
G M:では、相談室に行きました。フードの男がいます。
レイディア:(営業スマイルで)こんばんはー。
G M:男がフードを取りますね。中肉中背で優男風。オルフは知っている顔です。
オルフ :……やはり……。名前と身元はわかりますか?
G M:オルフの昔所属していた魔術師ギルドの、当時第17席、カイルです。
昔は、オルフの父親の派閥に属する魔術師見習いでしたが。
フアナ :ハンサム?
G M:はい。育ちが良すぎていまひとつ頼りない感のある風貌ですが。
顔偏差値はフィーエルやフアナには遠く及ばず。
だいたいレイディア級でしょうね。
フアナ :(まあまあだね。)
レイディア:(ふん。フアナがいるから私の美しさが目立たないのよ!)
オルフ :…………カイル君でしたか……。
カイル :アーレン師、助けて下さい。……アデットは壊滅状態です!
オルフ :ええ!!!?
カイルの言葉によると、昔オルフがいた街が、壊滅状態だというのです。
オルフ :なんという……。
フアナ :……まずは経緯を……お願い……。なんとなくわかるけど。
レイディア:言いたくないことは言わないでいいわ。
ディース :あなたには弁護人を呼ぶ権利があります、だっけ?
フィーエル:あうー。ちょっと、違う。
レイディア:あんたらは黙ってて。
オルフ :……昔、わたくしは素行不良な魔術師で。酒場でファイア・ボールを唱えて、
一般人に多数の重傷者を出して学院を追われました。魔法を封じられて。
マリア :ほう……ぬしもギアスをのぅ。くくく。
トゥエリ :嘘デスよ……そんな……。
オルフ :残念ながら、本当です。
レイディア:魔術師だろうってところまではわかってたけど、まさかそこまで……。
ディース :ただの若気の至りだよな。な?
フアナ :……それは、うちでも……追放で済むかどうか……。
カイル :一般人とは言っても、学院外の者という意味で、犯罪者ですよ。
フアナ :……愚連隊……。
トゥエリ :?
カイル :実は、その時は酒場で働いている娘が人質に取られていたんです。
一度に全員を行動不能にするか、罪もない少女を巻き込む覚悟で
魔法を唱えるか、アーレン師が殺されるかしか道がありませんでした。
アーレン師は、少女を助けるため、ご自分を巻き込んでファイア・ボールを
唱えられたのです。
レイディア:そうか……焦げた杖はその時の……。
フアナ :……くわばら……くわばら……。
ディース :そんな怖い真似は俺でも嫌だな。下手したら死ぬぞ。ん? アーレン?
オルフ :私の名前は、アーレン・ウォルフォードです。オルフは昔のあだ名です。
名前については、別に仲間を欺く気はなかったのですが……。
レイディア:うーん。それは気にしないわ。
ディース :いいんじゃね?
フィーエル:あう。
フアナ :……名前なんて……響きが良くて、個人を識別できればいい……。
オルフ :そういう考え方もありますかね。助かります。
フアナ :……それより……距離と魔力拡大の、スリープ・クラウドって選択肢は?
カイル :当ギルドの見解としましては、第一選択はスリープ・クラウドであった
という考えは今も変わりません。
しかしながら、1人でも起きていると全員を起こされてしまいますので、
距離と魔力を拡大してのスリープ・クラウドでも一定の限界があっただろう
という立場が支配的です。
ディース :どっちみち大事(おおごと)だよな〜。
レイディア:死人は?
カイル :出ていません。ですから、降格で収まりました。
ならず者たちについては、全員投獄されました。
オルフ :降格ではなく追放ですが。そんなことより街の様子を!
カイル :お待ち下さい。次席の命により、先にアーレン師のお話をさせて頂きます。
フアナ :……うーんと……次席は、知り合い?
カイル :次席導師は、アーレン師のお父上です。 ←ちょっと自慢げ
ディース :げっ! ボンボンじゃねーか!
レイディア:お前が言うなよ。
カイル :次席はアーレン師の行動の責任を取り、
ご自身の導師からの降格を嘆願なさいました。
しかしながら、小さな街であり導師級の使い手があまりいなかったことと、
次席の派閥であり下位の導師である第三席、第四席が
昇進を固辞されたことから、次席導師の位にとどまっておられるのです。
オルフ :父には申し訳ないですが、追放されたわたくしには位の話は関係ありません。
カイル :アーレン師に下された最終処分は、追放ではなく、最下位の魔術師への
降格です。ギアスは全く別件扱いであり、降格がなくなれば取り除かれます。
オルフ :……そうだったのですね。
レイディア:つまり、親はあくまで復権を狙ってたってことね。
オルフ :とにかく、先にわたくしの位の話をせよ、ということですね。
カイル :はい。アーレン師のご一行により街の問題が解決されれば、
アーレン師の復権がなされるよう、水面下での調整が進められています。
オルフ :一度捨てたものに興味はないですが、街は見捨てるわけにもいけませんね。
カイル :問題が解決されれば、復権を受け入れるとの誓約をお願いします。
オルフ :……しなければ話を聞けないのですね。わかりました。神に誓いましょう。
カイル :ありがとうございます。
次席はアーレン師のご動向をお気になさっていて、
アーレン師がラーダの神官になられたことも、
デュラハンを退治されたこともご存じです。
オルフ :いつの世にも……子離れできない親というのはいるものですね……。
カイル :それが……街が壊滅状態にあるのは、奇病のせいなのです。
オルフ :奇病?
カイル :高位の神官でいらっしゃるアーレン師であらば、癒せるのではないかと。
オルフ :どのような病気なのでしょう?
カイル :高熱を発し、寝込み、起き上がったかと思うと人を襲います。
オルフ :精神に作用する病気ですかね。
カイル :それが、暴れだした患者を取り押さえると、もう死んでいるんです。
G M:全員、セージチェックを。
レイディア:(ころころ)13ね。
フアナ :(ころころ)……16。(にやり)
トゥエリ :(ころころ)9しかないデスね。いつも肝心な部分で出目が悪いデスよ。
オルフ :(ころころ)11ですね。失敗なら即座にインスピレーションを使います。
ディース :(ころころ)7だなー。素人並みだ。
フィーエル:(ころころ)あう。9……。
マリア :(ころころ)出目5であるから……合計9かのう?
G M:全員わかりません。
フアナ :……なんで……出目10で……!?
オルフ :無論、特殊神聖魔法のインスピレーションを発動させますが。
G M:では、ロールに成功した扱いになります。そんな病気は存在しません。
オルフ :そんな馬鹿な……。……神の力が……。
G M:少なくとも、現在知られていない病気ですね。そのような毒もありません。
オルフ :心当たりがありませんね。学院の知識を総動員してもわからないのですか?
カイル :それが、わからないようです。そこで次席が、アーレン師に依頼せよ、と。
オルフ :どうやら、父はわたくしを復権させたくて仕方がないようですね。
カイル :この病気は、最高深度の凶暴化に達するまで、
比較的時間がかかる病気のようです。熱を出した患者はかなり多いですけど。
……そして、疫病の噂が立ち、街道は封鎖。
街の冒険者たちも、ほとんどが早々に宿を引き払っています。
フアナ :……そりゃ……出られるうちに逃げるよね……。
トゥエリ :本当なら、完全に封鎖しないといけないんデスけどね。
レイディア:で、あなたは通行証のようなものを持ってるんですね。
カイル :はい。魔術師ギルドと神殿の連名の、
病気にかかっていないことを証明する書面に、
特使として通行証の役割が付加されたものです。
レイディア:つまり、あなたに着いていれば入れるんですね。
カイル :ええ。出るのは簡単ではないですが。
オルフ :わたくしの役割はどういったものでしょうか?
カイル :第一次的には、最終深度の患者の病を癒し、不可能であれば捕縛すること。
捕縛した者に快復の見込みがなければ、こちらで隔離します。
第二次的には、原因の究明及び疫病の排除です。
オルフ :しかし、これは未知の病ですよ。
フアナ :……第一目的と第二目的の間に……差がありすぎ。
カイル :当面は第一目的だけで構いません。
当ギルドを総動員しても、正体がつかめない病気ですから。
オルフ :そうですね。まずは、できることをやりましょう。
カイル :報酬に関しては、次席の財布からいくらかご用意できるそうです。
レイディア:まあ、仲間の故郷の危機とあっちゃ、どのみち行かなきゃいけないしね。
トゥエリ :そうデスね。
ディース :おうよ!
フィーエル:うん。
フアナ :……いつも、守ってもらってるし……。
マリア :我にとってはただの説教臭い坊主であるが、たまには助けてやるかのう。
オルフ :皆さん……ありがとうございます……。
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