おたくに☆まっしぐら








G   M:少しして、厨房に入っていたらしき店長が出てきますね。
      30代の髭を生やした小太りの男性ですが、
      確かに目に見えて元気がないです。無精ひげもかなり目立ちますね。
      あと、明らかに一般人じゃない人たちが手紙を持ってきたというのに、
      反応もいまひとつ薄いですし。

フレイ  :……待たせて悪かったな。手紙というのは?

レイディア:まずはこれをお読み下さい。

フレイ  :……どれどれ。

G   M:フレイは手紙を読み、署名などを確認します。

フレイ  :……まさか、奴にそこまで心配をかけていたなんて……。

レイディア:我々もお力になりたいですので、話していただけませんか。

フレイ  :…………。……なら、ひとまずこっちに。

G   M:酒場だった店を改装して使っていたようで、営業スペースから
      後付けの扉で仕切られた奥に個室があり、そこに案内されます。

フレイ  :自分は覚悟しているが、話して奴を巻き込むことにならんか、それが心配だ。

レイディア:私ら荒事には慣れてますから。彼の盾と顔の傷を見てください。

ディース :(背負っていた盾をかざしつつ)へっ。

フレイ  :この盾の傷、おそらく、人間の付けた傷ではないな。

フアナ  :……カタギにしては……鋭い。

フレイ  :若い頃は奴と一緒に学院で学んだからな。

トゥエリ :それで納得デスね。

オルフ  :(つまり、先程の方は、ドロップアウトして戦士になったのでしょうか?)

レイディア:私は学院の特待生です。一般生も含めて、学生の中で上位20番に入ります。

トゥエリ :(誇張がだんだんエスカレートしてますね……。)

フレイ  :ほう……特待生か……奴の息子ですら敵わんという連中か。

フアナ  :……書状を託されたのは……信頼の証。

フレイ  :では、奴に迷惑をかけんようにすると誓ってくれるか。

レイディア:安請け合いはできませんが、あなたの状況を話していただければ、きっと。

フレイ  :うーん……。

レイディア:危機を承知で我々に依頼したご本人のお気持ちを、どうかお察し下さい。

フレイ  :……わかった。では問おう。うちの商売は奇抜かな?

オルフ  :わたくしは素敵だと思いますよ。

ディース :おうよ、男の浪漫だぜ!!

マリア  :………………。

フアナ  :(冷たく)……奇抜……。

レイディア:お前が言うなよ。

フレイ  :なぜ奇抜なのかな?

フアナ  :……そこに、鍵がある……。

フレイ  :まあ、そういうことになるか。

レイディア:ほかの店と競合しないようにしたから。

フィーエル:メイドだから?

フレイ  :考えついても、普通の神経ならこんな奇抜な商売やらんだろ?

フアナ  :……つまり……当時は普通の神経じゃなかった。

フレイ  :そういうことになる。では、なぜだ?

フアナ  :……発狂、精神錯乱、自暴自棄、商才の欠如、常識の欠如……。

レイディア:こら、フアナ!

オルフ  :繁盛しているなら、見通しが悪くなった段階で店をたためば傷は軽いですね。

ディース :それができねーってことは、根本原因は別? いや、同じか?

フレイ  :そちらのエルフの女性の言う中に正解がある。

レイディア:端的に言うと、どのような原因ですか?

フアナ  :……今が正気だとすると、一番確率が高いのは……自暴自棄……。

フレイ  :……奴が見込んだのもわかるな。それで合っている。

オルフ  :なんと! こんなにも素晴らしい商売だというのに!

ディース :だよなー。

フアナ  :……1年前顕在化した脅威が、その後潜在化。そして、また顕在化。

レイディア:つまり、どういうこと?

フアナ  :……多分、時限式の怪物か、封印の類……多分、もうすぐ来る……。

フレイ  :そこまで言い当てられては仕方がない。

レイディア:話していただけますね?

フレイ  :うちの一家は、亡霊騎士に死を宣告されたんだ……。

G   M:では、亡霊騎士についてセージチェックを。

レイディア:(ころころ)11しかないわ。

フアナ  :(ころころ)……8……。

トゥエリ :(ころころ)12デスよ。

オルフ  :(ころころ)14ですね。

ディース :(ころころ)12だ。

フィーエル:(ころころ)あうー。7……。

マリア  :(ころころ)11じゃ。

G   M:では、オルフだけわかります。亡霊騎士はデュラハンです。
      7レベルのアンデッドで、戦車と2匹の亡霊の馬を引き連れています。

レイディア:オルフがわかれば上等ね。インスピレーションもあるし。

オルフ  :敵はデュラハンのようです。7レベルのアンデッドですね。

レイディア:でも、7レベルなら、幻影の怪物より弱くないっすか?

オルフ  :あの時は助っ人がいましたしね。

マリア  :今は我がおるぞ。

オルフ  :そうですね。ですが、こいつは戦車を引き連れて現れます。

レイディア:そういえば、そんなのを教科書で読んだことがあるような気が……。

オルフ  :敵は強いですが、7レベルのマリア君の力があれば、互角に戦えるでしょう。

フアナ  :……戦車の能力は?

G   M:別のモンスターなので、各自セージチェックを。
      レイディア16、フアナ15、トゥエリ13、オルフ11、
      ディース15(6ゾロ)、フィーエル7、マリア10ですね。
      知名度14なので、レイディア、フアナ、ディースは知っています。
      戦車はチャリオット・オブ・デュラハンですね。4レベルですが、
      チャリオットに乗っているデュラハンを攻撃する場合、ペナルティーがかかります。
      チャリオットの攻撃能力はとても高いですね。轢かれると危ないです。

ディース :デュラハンは知らねーのに、その戦車を知ってる俺らって一体……。

トゥエリ :ルール上、仕方ないデスよ。

レイディア:ミもフタもない奴ね。

フアナ  :……そういう酔狂も……たまにはいいかも……。

レイディア:まずは戦車を倒してからっすね。

G   M:あと、デュラハンか戦車を知ってる人は、戦車を引く馬のチェックを。
      レイディア16、フアナ11、オルフ12、ディース12ですね。
      知名度14なので、レイディアのみ知っています。
      いわゆるヘッドレス・ホースですね。4レベルです。2頭出現します。

レイディア:とりあえず、パーティー内でデータの情報交換よ。

G   M:では、モンスターデータの全てがパーティーに行き渡ります。

マリア  :7レベル同士であれば、我の拳が効くのう。

フレイ  :こいつは素手では傷つかんよ。

レイディア:この子は放っておいてください。で、怪物の習性はご存じなんすね?

マリア  :ぬぅ……我をのけものにするでない!

フィーエル:マリア、こっちで、しりとり、しよう。「り」から。……リザードマン。

マリア  :…………。 ←言葉にできない

トゥエリ :さすがの賢い猫も、しりとりまでは解しませんカ……。

フレイ  :……ああ、予言の日まで、おそらくあと数日だ。明日かもしれん。

オルフ  :我々の強さであれば、返り討ちにできますよ。

フレイ  :本当か!? 雇った護衛も、敵の強さを知ると逃げ出してしまったのに。

オルフ  :ええ、過去にこれより強い怪物を葬ったことがあります。

フレイ  :な、なんと!!?

オルフ  :こちらに死者が出る可能性もありますので、費用は相談、ですが。

フレイ  :奴より高い値段で雇え、ということか。

フアナ  :……山吹色の……お菓子……。

オルフ  :依頼時に想定外だった強さの敵ですから、相応の報酬をお願いしたいです。

フレイ  :金で命が買えるなら安い……と言いたいところだが、いくらだ?

オルフ  :いくらほどが妥当だとお考えで?

フレイ  :……全員で6000なら用意できるが、安いか?

ディース :ひゅー。もうかってんねー。

オルフ  :1人1000ではいかがでしょう。うち前金が200で。

フレイ  :……亡霊騎士の強さはわかるんだが……本当にあれに勝てるのか?

マリア  :それは我らも同じじゃ。勝てぬと判断すれば、とうに逃げておるわ。

フレイ  :全員で6000に対して1人1000を提示ということは、この子供もか?

マリア  :我は子供ではない! 我を侮辱するか!

レイディア:まあまあ抑えて抑えて。この子、この中で一番強いっすよ。

フレイ  :そんな馬鹿な話があるか!!

オルフ  :ラーダに誓って、真実です。

フアナ  :……つくんなら……もっとマシな嘘つく……。

フィーエル:ほんとだよ。

フレイ  :……ラーダの神官様が言うなら仕方ないか。

オルフ  :ありがとうございます。

レイディア:では、交渉成立ということでよろしいですか。

フレイ  :合計7000ということで手を打とう。うち1400が前金だ。

マリア  :素直に1人1000と言わぬかーっ! 我は貴族の娘であるぞ!

フレイ  :ふん。古代王国人の真似をする貴族など、聞いたことがない。

レイディア:マリア、抑えて。お願い。

マリア  :ぬぅ……。

レイディア:了解しました。よろしくお願いします。……まずは前金を。

フレイ  :これで頼む。

G   M:フレイは、袋から出した金貨で、前金を支払います。

ディース :すぐ出せるって、景気いいじゃん。

フレイ  :もうすぐ死ぬのに、景気も何もあるか!!

レイディア:いいかげんに空気読めよ、馬鹿2号。

ディース :誰が馬鹿2号だ!

フィーエル:あう。でも、1号、誰?

レイディア:お前だよ。

フィーエル:あうー。

レイディア:家族構成は?

フレイ  :……妻と息子が1人。

オルフ  :指さされたのが誰かはわかっていますか?

フレイ  :居間で3人一緒にいたから、わからん。

レイディア:じゃあ、まず全員を集める必要がありますね。

オルフ  :敵は昼間には出ませんからね。念のため、全員で護衛しながら行きましょう。

フアナ  :……これ……戦車の打撃点が、デュラハンより高い……。

トゥエリ :4レベルというのが嘘のような数値デスね。

フアナ  :……突進食らったら不利だから……こっちも対抗して……。

トゥエリ :戦車以前に軍馬が見つかりませんヨ。

フアナ  :……そうじゃなくて……馬車で併走しながら、魔法で撃つ……。

レイディア:なるほど。移動手段として使うわけね。でも、7人は並べないわ。

フアナ  :……2台に分乗する。1台にフレイさんと、家族を乗せて……。

レイディア:そこでわざと戦力分散とは、凄い奇策ね。

フアナ  :……仮に、屋外で待ち構えてると……どうなる?

レイディア:うん……後衛も含めて突進食らうけど……。

トゥエリ :そうなると、回避能力のないレイディアさんは悲惨デスね。

レイディア:……普通に死ぬわね。はね飛ばされて。

ディース :金色の野に降り立ったらなんとかなるんじゃね?

フィーエル:名案、かも。

フアナ  :……いっぺん……死んでみる……?

レイディア:死にたくないわよ!

オルフ  :フレイさん、馬車のチャーターをお願いします。大きめのを2台ほど。

フレイ  :2台なら、食材運搬用のを用意できるが、1台は幌がついているぞ。

オルフ  :では、それでお願いします。

レイディア:では、ご家族を連れて、夜は馬車で生活するわよ。

フアナ  :……馬車を離れるときは、最低3人、護衛を……。





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