七人の冒険者








G   M:前回の冒険から2週間が経過しました。生活費を減らしておいてください。

フィーエル:あう。店で、ずっと、勉強してる。

ディース :金がもったいないから、たまには家に帰るかー。

レイディア:放蕩息子ね。

ディース :へっ。 ←自慢げ

レイディア:ほめてねーよ。

オルフ  :わたくしは神殿に泊めてもらいます。

トゥエリ :言われる前から、レイディアさんの課題を代わりにやってますヨ。

レイディア:いい心がけね。特待生の実力を見せてやるのよ!

トゥエリ :わかりましたヨ。

フアナ  :……。

マリア  :エルフの娘は、ここのところ静かじゃのう。

フアナ  :……そろそろ……復活できそう……。

レイディア:もしかして、あの夜のことが忘れられないの〜?

フアナ  :………………。 ←無表情のまま、怒りのボルテージが上がっていく!

G   M:フアナは、何が起こったか話してますか?

フアナ  :……話せるわけない……バレてるだろうけど……。

レイディア:(まあ、ルコがいたから、*られてはないだろうけどね。)

ディース :おもしろそうじゃん。で、何の話?

フアナ  :………………。 ←無表情のまま、怒りのボルテージが上がっていく!

トゥエリ :レイディアさん、まずいデスよ!

オルフ  :心なしか、気温が下がったような気が……。

マリア  :ふむ。じゃが、レイディアに危害を加えることは我が許さぬ。

レイディア:いいわ。今のは私が悪くないこともないし。でも、お互い様よ。

フアナ  :……次は……勝つから……。

マリア  :うむ。場合によっては、ぬしとの共闘も考えようぞ。

フィーエル:あうー。共闘ー。

フアナ  :……勝手連的に……。

トゥエリ :

フアナ  :……えいえい……おー……。

トゥエリ :いや、そんなこと堂々と宣言されても、対策が立てやすくなるんデスが。

レイディア:あんた、どっちの味方なのよ!?

トゥエリ :もちろんレイディアさんデスが。

レイディア:当然よ。……マリアのこと、信じてるからね。

マリア  :うむ。ならば、我はその信に応えようぞ。

フィーエル:あうー。僕も、入れてー。

レイディア:いいわ。ふん、これで過半数ね。

オルフ  :いやはや、面白いパワーバランスですね。

ディース :へっ。俺のパワーとフアナの頭が合わさったら、超無敵だぜ!

フアナ  :……ディースじゃ、マリアに勝てない……。

ディース :ああ、確実にな……って、そんなこと言わすなよ!

トゥエリ :今、ノリツッコミしましたヨ。

オルフ  :好きなんですね、ノリツッコミ。

フィーエル:あう。ノリツッコミー。

ディース :だから、頭使ったゲームにするに決まってんだろ。

レイディア:ふん。知力ボーナスは同じなんだけど?

フアナ  :……あと……数に負けないゲーム……。

レイディア:そんな都合のいいもんがあったら苦労しないわよ。

ディース :待ってろよ。凄いの考えてやるから。

レイディア:ふん。せいぜいがんばりなさいよ。

G   M:さて、メンバーからの相談は無料で請け負うんですね?

レイディア:相談だけならね。あと、店の相談室使うときは当然別だけど。

G   M:では、商家の息子のマッコイが、冒険者の店のレイディアに相談に来ます。

フアナ  :……いらっしゃーい……。

マッコイ :実は、うちの親が、皆さんに相談したいことがあるそうなんですけど……。

オルフ  :学友からの相談とは、レイディア君の奇策が早速当たりましたね。

レイディア:まあね。(正直、そこまでは狙ってなかったんだけど。)

マッコイ :昼食はお召し上がりになって、今日の午後1時頃に家にいらしてください。

レイディア:(営業スマイルで)わかったわ。よろしくね。

ディース :店を通さずに相談ってか。案外せこいのな。

G   M:マッコイは最初から店に仲介を依頼してないので、問題はないです。
      学院で元から知り合いだった人の仕事請けたのに、仲介も何もせずに
      マージンよこせとか、そこまで無茶な業界ではありません。
      専属選任契約も結んでないですし、店への滞在費は冒険者の自腹ですから。
      堂々と度々やってるとさすがにちょっと角が立つかな、くらいの感じです。

レイディア:道案内は?

マッコイ :これはうちの地図なんですけど……。

G   M:住んでいる街の地図なので、簡単にわかりますね。
      高級住宅街の一角、そこそこの値段のところに居を構えているようです。
      ディースの親と比べても、ステータス的にかなり上回る位置ですね。

ディース :おっ、結構いいとこ住んでるなー。

レイディア:案内は、してくれないわけ?

マッコイ :すみません。その件で僕もちょっと忙しくなっちゃいまして。

レイディア:いいわ。気にしないで。

マッコイ :すみません。事情は全て後でお話しますので。お願いしますね。では!

G   M:マッコイは一礼すると、あわただしく去っていきます。

トゥエリ :でも、無料でいいんデスかね?

フアナ  :……本当に無料だなんて……誰も思ってない。

フィーエル:あう。タダ、違うの?

マリア  :我にはわかるぞ。餌、であろう?

レイディア:当たり。相談だけで済ませるような人は、最初から私らに相談しないわ。

ディース :タダに見せかけてタダじゃないってことか?

レイディア:少し違うわね。タダって言ってる部分は本当にタダ。信頼にも関わるし。

フアナ  :……話が持ち込まれた時点で……何らかの手助けが必要な状態……。

フィーエル:あう、わかった。なるほど。

ディース :ああ、本体0円とかいう、そういう商売か。

トゥエリ :……ホンタイ……エン?

フアナ  :……うまみがなかったら……こっちから断れるし。

ディース :なんか、きたねー商売みてーだな。

オルフ  :それで助かる人も大勢いますし、世の中持ちつ持たれつですよ。

G   M:という話ですが、行きますか?

レイディア:行く。(即答) 異議はないわね。

フアナ  :……この段階で異議を唱える意義はない……違約金も、ロハ……。

ディース :なるほど。狡いな。

オルフ  :生きていくためには、多少のせこさも必要ですよ。

レイディア:異議ないわね。じゃあ、行くわよ。






一行は、約束の時間の少し前に、マッコイの屋敷に到着します。






執事   :レイディア・レインフィールド様ご一行ですね。こちらへどうぞ。

ディース :なんか、俺らが「愉快な仲間たち」みたいだな。

フィーエル:あう。ゆかいー♪

マリア  :その笑顔はやめろ。我でもどきっとする。

フィーエル:あう?

レイディア:美形だもんね。私らはもう慣れたけど、マリアは日が浅いから。

フィーエル:やめる?

レイディア:やめないでいいわ。マリアに男の良さをわからせてあげなさい。

マリア  :ふん。自分は男のことなど何も知らんくせに。

レイディア:(赤面)こ、こんな所で何言ってんだー!?

ディース :そうなのか、リーダー?

レイディア:お前も真顔で聞くな! プライバシーの侵害だろ!

トゥエリ :あのー、もう依頼人になるかもしれない方のお屋敷ですし……。

レイディア:(気を取り直して)……じゃあ、静かに行きましょうか。

G   M:不安顔の執事が退出して、マッコイの父が到着します。
      ロマンスグレーの男性ですね。息子よりだいぶ有能そうです。
      体格や体の至るところにある傷から察するに、元戦士なのではないだろうか、
      といった印象を受けます。そして、それに不似合いな、穏やかな物腰。
      冒険者として一山当てたか、商売で儲けたか、本人に尋ねてみないと
      どっちかわからないタイプの人ですね。

マッコイ父:マッコイの父です。いつも愚息がお世話になっております。

レイディア:とんでもない。息子さんのように将来性のある方と共に勉強できるのは、
      特待生をさせて頂いております私にとっても、大変大きな刺激になります。

トゥエリ :(また心にもないことを。)

マッコイ父:聞けば、学生の身で魔術の研究組織を立ち上げられた英才だとか。

レイディア:学院の同期の頂点に立つ私にとっては、大したことではありません。

トゥエリ :(ほらがまたエスカレートしてますね。)

マッコイ父:そのような優秀な方が無料で相談に応じてくださるとは、助かります。

レイディア:はい、無料相談です。して、本日はどのようなご用件でしょう。

マッコイ父:実は、喫茶店を経営している友人が、最近困っているようなのです。

マリア  :キッサテン? 何じゃ、それは?

マッコイ父:そうですね……簡単な食事とお茶だけを出す食堂のようなものです。

レイディア:すみません。この子、貴族の娘ですので。

マッコイ父:存ぜぬこととはいえ、失礼しました。どちらのお家のお嬢様ですか?

マリア  :ハルシュタットじゃ。

マッコイ父:(しばらく考えて)存じ上げません。浅学で申し訳ない限りです。

レイディア:オーファン王国の貴族ではないので、どうぞお気になさらないで下さい。

マッコイ父:(笑顔で)なるほど。とすると、外国の貴族ですかな?

レイディア:外国とも言えますね。ただ、お忍びですので、これ以上はご遠慮下さい。

マッコイ父:いや、それは申し訳ないです。

マリア  :気にするでない。

ディース :(まあ、嘘は言ってねーよな。)

オルフ  :我々に相談を持ちかけたということは、経営難の類ではない、と。

マッコイ父:ご高察の通りでございます。店はどう見ても繁盛しているのですが。

ディース :店以外に困ってる原因がありそうってこと?

フアナ  :……即断はできないけど……じゃあ……本人に、直接聞かない理由は……。

マッコイ父:聞いても答えてもらえないのですよ。困っているのは確実なんですが。

フアナ  :……ゆすり、たかりの類……?

マッコイ父:金銭で困っている様子はないですが、はっきりとは……。

レイディア:他に何か変わった点とかは。

マッコイ父:それが、妙な制服で固定客を集めている喫茶店なのですよ。

トゥエリ :

オルフ  :妙な制服、ですか?

ディース :萌え系? 萌え系? ←食いついている

マッコイ父:その萌え系というのはよくわかりませんが、メイドの制服に近いですね。

マリア  :………………。

ディース :メイド喫茶キタ―――(・∀・)―――ッ!

トゥエリ :……メイド専門の喫茶の経営……いや、違いますネ? とすると……。

レイディア:店の従業員がそのような制服を着ている、と?

フアナ  :……そんな、バナナ……。

マッコイ父:1年程前、開業記念祝賀会に呼ばれたときに見ました。あれはメイドでした。

ディース :1年でそんな売れたのかよ。

レイディア:その制服は、何が狙いなんですか?

ディース :メイドは男の浪漫だろ!

マリア  :………………。

マッコイ父:王侯貴族や大商人の気分を、店で味わえるというのが売りだそうです。

レイディア:正直、理解に苦しむっすね。

フアナ  :……同じく……。

マッコイ父:私も同じです。

ディース :俺はわかるけどな。

マッコイ父:それが、最近になって、友人が目に見えて落ち込んできて……。

レイディア:最近、何かがあったんでしょうね。

フアナ  :……そら、そうよ……。

マッコイ父:ええ。ですが、私を含め、知人には理由を全く話さないそうで。

レイディア:言えない理由があるのかもしれませんね。

オルフ  :そこで我々のような冒険者に相談という流れになったわけですね。

マッコイ父:正面から行っても無駄なのは学習しましたから。

レイディア:わかりました。あの、申し上げにくいのですが……。

マッコイ父:なんでしょうか?

レイディア:相談は無料で承りましたが、行動を起こすとなると別途お金が……。

マッコイ父:承知しております。ひとまず、原因調査だけで、お1人200ガメルを。

レイディア:原因調査で1人200ですね。

マッコイ父:彼の悩みが円満に取り除かれれば、お1人450ガメルをお支払いします。

レイディア:450ガメルは200ガメルと別ですね?

マッコイ父:はい。ただ、その450ガメルについては、もし彼からより高い値段で
      問題解決を依頼された場合は、なしということでお願いします。

フアナ  :……高い方から、取れと……。

マッコイ父:はい、そうなります。その場合でも200ガメルはお支払いします。

ディース :あっちから依頼があるかもってことは、直接聞いてもいいんだよな。

レイディア:文脈上そうなるわね。

マッコイ父:はい。200ガメルは、前渡し金としてお渡ししておきます。

フアナ  :万一……原因がわからなかった場合は……。

マッコイ父:その場合でも、返還の請求は一切致しません。

レイディア:かなり信用のある扱いっすね。

マッコイ父:商売柄「牛殺し」の噂は聞きますし、何より息子がお世話になっていますので。

フアナ  :あと……何らかの理由で、急いでいる……。

マッコイ父:素晴らしい! ご賢察の通りです。最近、落ち込みが激しいようなのですよ!

フアナ  :……様子は……誰かに探らせている……。

マッコイ父:さすがですね。その通りです。うちの店の者を客として。なぜそこまで?

フアナ  :……店の様子に詳しいのに……制服を見たのは1年前……。

マッコイ父:なるほど……。素晴らしい。やはり、本職は違いますね。

レイディア:(瞬時にそこまで見抜くとは、さすがは軍師様ね。)

フアナ  :……いきなり潜むと時間がかかるから、まずは正面から……。

マッコイ父:なるほど、そうですね。連絡しておきましょうか。

レイディア:直接行きますから、書状をお願いします。

フィーエル:あう。賞状ー。

オルフ  :賞状ではなく書状ですよ。

フアナ  :……お願い……。

マッコイ父:わかりました。用意しましょう。

フアナ  :……自宅の中ずっとは、密偵じゃないと無理……。
      職場と自宅が同じか……職場だけを見張らせてる……。

マッコイ父:はい。別の心配を抱かせるとまずいので、職場だけを観察させています。

フアナ  :……なら、職場に行ったら……。

マッコイ父:はい。私の書状があれば、職場を訪ねてもなんとかなるかと。

レイディア:じゃあ、この依頼をお受けすることに異議はないわね。

マリア  :レイディアと同じじゃ。

フアナ  :……ラジャー……。

トゥエリ :異議ないデスよ。

フィーエル:大丈夫。

ディース :異議はねーなー。

オルフ  :異議ありません。

マッコイ父:それでは、奴に久々に手紙を書くとしますかね。





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